大阪・本町から東にある谷町四丁目までに広がる成熟したビジネスエリアは、出張で訪れる諸兄も多いはず。そんなエリアに、あまり馴染みのない“豚軟骨”なるものをメインにした呑み屋が、2021年1月にオープンしたと聞きつけやってきたのがこちら、「ニューベイブ」だ。

  • 名店がそろう「ダイアパレスビル本町」

店があるのは「ダイアパレスビル本町」。オフィスビルながら、地下1階と1階がグルメタウンになっていて、喫茶店から立ち呑み、食堂、ラーメン、ラウンジまでがそろい、界隈のビジネスマンの胃袋を満たしている。そんなビルの1階に「ニューベイブ」はあるらしい。

  • 年季を感じる重厚な扉が目印だ

豚軟骨の旨さを世に広めるためにオープン

19席というこじんまりとした店内にはカウンターとテーブル席があり、商談終わりで疲れた体と心を癒しに一人でくるのもよし、反省会として同僚と飲みにきてもOKだ。10名以上で貸切も可能だという。

店主の呉屋良介さんに、豚軟骨となはなんぞやと聞くと、「南九州では一般的に知られていて、ひと言で言えばソーキそばのソーキです」とのこと。実は呉屋さん、大正という大阪の「リトル沖縄」と呼ばれる場所で、もう1店舗たこ焼きやどて煮を中心とした居酒屋を経営している。そちらで提供していた豚軟骨のどて煮が、「おいしいのにあまり世の中に知れ渡ってないのがもったいない。このおいしさをもっと広めたい!」との思いで、この店をオープンさせたそう。

  • “飛べない豚はただの豚だ”と今にも言い出しそうな、店主の呉屋さん

手ごろな豚軟骨コースは3種類。もちろん単品注文もOK

メニューを拝見すると、国産の豚軟骨を軸にしたおすすめコースが980円、1,480円、1,980円(全て税別)の3種あり、高くなるほど品数が増えるようだ。筆者はお酒を飲む際にあまり食べないことを伝えると、「ひと皿2切れぐらいなので、アテのように食べられますよ」と嬉しい返事が。それならばと、最もおすすめの五種1,480円をオーダー。

  • こちらはフードメニュー。初めてきたらまずはおすすめコースを

  • 生ビール税別420円は、フルーティなサントリー薫エール

ビールを片手に料理を待っていると、まずは前菜が提供される。「ガアナ」(単品税別580円)という料理で、煮穴子とガリを和えたものだという。食べてみると、柔らか〜く煮込まれた穴子の濃厚な旨味と甘味を、さっぱりとしたガリが見事に調和。キュウリの食感も楽しく、まるで本格寿司店のような前菜の到着で、次の刺身がさらに楽しみに。

  • ガアナは、コースの最後までとっておいて口直しに使いたい味わい

次は刺身。この日は寒ブリ(単品税別680円)で、ほどよく乗った脂が舌の上でとろけて旨味が押し寄せてくる。トロッととろけるようでいながら、コリコリとした食感もよく、鮮度の良さが伝わってくる。それもそのはず、魚や野菜は呉屋さん自ら大阪市中央卸売市場へ出向き、確かな目利きでその時期のいいものを仕入れてくるという。

次の野菜を楽しみに待っていると、「すいません! 野菜が売切れでもう一品刺身で堪忍してください!」と呉屋さん。ちょっとショックだったが、このノリの良さと、野菜の代わりに提供してくれたヨコワ(単品税別680円)の質の高さに、許さざるを得ない。ヨコワとはクロマグロの若魚の呼び名で、寒い時期は脂が乗っていると言うが、上品な脂の甘味が柔らかく弾けるような食感と合間って絶品。

  • 寒ブリは脂で醤油を弾いてしまうほどメタボリック

  • 野菜の代わりのヨコワ。筋っぽさがなく、とても食べやすい

4品目は主役となる両翼の一方を担う、煮た豚軟骨「葱ぶた」(単品税別580円)。味噌ベースのタレで骨まで柔らかく煮込まれた豚なんこつは、お箸で容易に崩せるくらいトロトロで、もはや歯がいらないほど。シャキシャキとしたネギとも実に相性が良く、日本酒が欲しくなる濃い目の味に仕上がっている。コラーゲンもたっぷりなので、次の日のお肌もプルプルに!

  • 葱ぶたの、驚くような柔らかさにトリコに!

  • 日本酒税別500円〜。銘柄は入荷により異なる

ラストは焼いた豚軟骨「焼きぶた」(単品税別580円)。焼き台で香ばしく仕上げられた豚軟骨は、閉じ込められた旨味が口の中で爆発! 赤ワインをベースにしたタレをつけながら焼き上げるとあって味の深みも素晴らしく、プリプリっとした軟骨の弾ける食感もたまらない。

  • じっくり時間をかけて焼かれる焼きぶたは、忘れられない味

実は現在「紅のぶた」なる、どこからかクレームがつきそうなスパイス系の揚げた豚軟骨も考案中だそう。完成した暁には葱ぶた、焼きぶた、紅のぶたから2種選べるようになるそうなので、楽しみだ。

ランチのとんかつもこだわり満載!

筆者はおすすめ五種をオーダーしたが、隣のお客さんは七種をオーダーしていて、最後にミニとんかつ(単品税別780円)が付いていた。実は「ニューベイブ」は、オープンから売り切れるまでランチでとんかつを提供していて、夜も人気を呼んでいる。「豚とつながりのあるランチを考えたら、とんかつかなって。やってみるとなかなか難しくって苦労しました」と呉屋さん。

夜のついでで始めたように聞こえるが、侮るなかれ。柔らかさ、香り、脂の軽さ、甘味が際立った千葉県産 林SPFポーク、ピュアな味わいの大麦仕立て三元豚、クセのない脂と深い味わいを兼ね備える鹿児島県産 茶美豚に加え、不定期で入れ替わる希少な豚肉からチョイス可能。素材だけでなく、高温の油で衣ができるまでサッと揚げ、その後低温でじっくりとあげるなど、そのこだわりには恐れ入るばかり。

  • ランチのとんかつは税別980円〜。付け合わせは呉屋さんが好きという理由でレタス

個性豊かな食器も「近くの飲食店と被らないように」と、全て東京で買い付けたという。随所に店主のこだわりを感じられる「ニューベイブ」。おなかがすいた時、しっぽりと飲みたい時、豚が食べたくなった時、どこに行こうか迷ったらぜひ訪れてみて。

●Information
「ニューベイブ」
大阪府大阪市中央区内本町2-3-8 ダイアパレス104
11~23時
不定休