東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「短距離走(400m)・マイルリレー」! 競技解説は、短距離(400m)を中心に現在まで23年陸上競技を続けている、トレーナーの横谷政一さんです。

  • 短距離走(400m)・マイルリレーの魅力とは?

短距離走(400m)・マイルリレーの特徴

陸上競技の短距離種目では一番長い距離が400mであり、別名ロングスプリントとも言われ、距離の長さからか中距離に間違われることもあります。

【400m】
400mは瞬発力だけでなく、スピードを落とさず維持して走りきるための筋持久力や、レーンの内側はきついカーブ、外側は緩やかなカーブをうまく曲がって走るコーナー技術なども重要になってきます。「究極の無酸素運動」と言われるほど過酷な種目で、人間の身体が最大出力での無酸素運動を維持できるのは40秒ほどと言われているため、ゴール後の選手は体調不良や呼吸困難になることもあり、その場で倒れることもあります。400mを専門にしている選手でも400mを嫌になることは珍しくありません(笑)。

【マイルリレー】
マイルリレーとは1600mリレーのことで、1600m=1マイルであることからその名で呼ばれており、4人で400mずつリレーしながら走ります。大会の最終種目として定着しており、走順や戦術によって大きく順位が変わってくることもあり、最も盛り上がる種目の一つです。特に走順は重要で、以下の特徴があります。

<1走>唯一、全部自分のレーンを走ります。マイルリレーにあまり慣れていない、内側に入って走るオープンを得意としない選手を起用することが多いですが、最近ではチームのエースをもってくることもあります。

<2走>最初のカーブ100mは自分のレーン、100m以降は内側に入って走るため位置取りが重要になってきます。スピードがあり、200mを得意とする選手を起用することが多いです。

<3走>オールマイティな選手またはエースを起用することがあります。1~2走に不安があり、最初出遅れることがあっても、ここでエースを起用すれば挽回することができます。また、逆に、選手本人が400mに対して不安があったり、ロングスプリントの能力があまり優れていないといった場合でも、3走であれば安心して起用することができます。

<4走>アンカーということもあり、チームのエースはもちろんのこと精神的にも強く責任感のある選手や、最後の直線で勝敗が決まるためラストに強い選手を起用することもあります。

そのほか、バトンゾーンの使い方によって各走者の走る距離が変わったり、接触によってバトンを落とすのを防ぐため、2走以降の選手はバトンを左手で持って走るというのも特徴的です。

短距離走(400m)・マイルリレーを観戦するときのポイント

【400m】
スタートはカーブからとなり、レーンでスタート場所が違います。レース展開は選手よってパターンが異なります。前半型は最初からスピードを上げ、200mあたりで最高スピードに達し、それをどれだけ維持できるかがポイントになります。それに対し、後半型は前半を8~9割ほどで走り、200m過ぎたあたりからスパートをかけていきます。選手がどのようなペースで、どこでスピードが上がっているのか、また、走り・動きに無駄なく、「省エネ」で走れているのかといったところが、観戦時のポイントです。

【マイルリレー】
前述のように走順・戦術がポイントです。チームによって、予選でエースを温存したり、予選・決勝で走順がまったく違ったりすることもあります。個人種目で入賞した選手をどこで使うか、レース中の位置取り、ハプニング(バトンミス・接触)といったところも見所になります。また、世界大会で既に実施され、五輪では東京2020に初採用となる男女混合リレーは、走順は自由なため、各チームの男女がどこを走るかにも注目です。

東京2020でのチームジャパンの展望

男子400mは前回大会にも出場した日本歴代4位(45秒13)の記録を持つウォルシュ ジュリアン選手、そのほかにも46秒台前半の選手が数名おり、個人・リレーともに43~44秒台で走る海外選手にどこまで近づけるかが注目です。

女子400mはここ数年53秒台が上位の記録となっていますが、若い選手も多く、千葉(旧姓:丹野)麻美選手が持つ日本記録(51秒75)に迫るところまで伸ばせれば、48~50秒で走る海外選手に近づくことができ、また、女子マイルリレー出場も期待できると思います。

400m・マイルリレーで男女ともに日本の選手が活躍するのを楽しみにしています!!

遠山健太からの運動子育てアドバイス

私は高校2~3年生のときに陸上競技部に入っていて短距離を専門にしていました。入部して間もないころ、400mのタイムトライアルを強制的にやらされて、意外といけるのでは? という思いとは裏腹に、走ったあと倒れて動けなかった苦い思い出があります。400mは短距離種目ではあるものの、競技特性上まったく違う種目だと認識した瞬間でした。次年度にマイルリレーのメンバーに選ばれましたが、それは400m走特有のトレーニングを積まないと力はついてきません。小学生で400mを走ることもあるようですが、高いスピードを保ったまま走り続けるのには限界があるかと思います。全身の持久力も重要になってくるので、小さいころはスピード持久力を鍛えるという考えは持たず、長い時間運動し続けるマラソンの能力を養ったほうがよいでしょう。将来400m走を選択しなかったとしてもどのスポーツでも役に立つと思います。この機会に、ぜひ親子で長い距離をジョギングすることから始めてみませんか。

競技解説:横谷政一(よこや まさひと)

中学生から陸上競技を始め、短距離(400m)を中心に現在まで23年競技を続けている。保有資格はJATI-ATI、NSCA-CPT、陸上競技コーチ、健康運動実践指導者など。フリーランスで北海道札幌市を拠点として、パーソナルトレーニング、陸上コーチ、運動指導、スポーツ・体育指導、講演・教室の講師など行っており、幼児~高齢者、アスリートなど幅広い世代へ指導やサポートなどを行っている。2020年度より、石狩市りんくる健康運動増進施設の責任者も務めている。

ナビゲーター:遠山 健太

リトルアスリートクラブ代表。トップアスリートのトレーニングに携わる一方で、ジュニアアスリートの発掘・育成や、子どもの運動教室「リトルアスリートクラブ」のプログラム開発・運営など、子どもの運動能力を育むことに熱心に取り組む。自身、2児の父であり、子どもとともにめぐった公園での運動や子育て経験を生かし、パークマイスター(公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナー)としても活動している。著書は『スポーツ子育て論』(アスキー新書)、『運動できる子、できない子は6歳までに決まる!』(PHP研究所)、『ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本』(学研プラス)など多数