ライフスタイルが多様化している昨今、結婚して子どもを持つ人もいれば、生涯独身で過ごす人も珍しくありません。そんな「おひとりさま」は、誰にも気兼ねすることなくプライベートを謳歌できるなど、自分らしく生きるための選択肢の一つとして定着しつつあります。

一方で、人一倍考えておきたいのはお金のことでしょう。たとえば、老後資金。今や誰もが避けては通れないテーマですが、おひとりさまはとくにしっかり考えておくべき重要事項です。では一生独身なら、老後資金はいくら必要で、どのように貯めればいいのでしょうか。

  • 一生独身なら老後資金はいくら必要?(画像はイメージです)

意外とお金がかかるおひとりさまの老後

一般的に、おひとりさまは、既婚・子育て世帯と比べ、自分のために使えるお金が多くなります。そのおもな要因は、何といっても子どもにかかるお金がないことでしょう。子ども1人を大学まで卒業させるには、少なくとも1,000万円以上は必要とされています。子どもが2人、3人といれば、当然費用は2倍、3倍となります。

おひとりさまにはこの支出がないことを考えると、自由に使えるお金が非常に大きいことがわかります。だからこそ、「少しの贅沢」が可能になり、その積み重ねで、生活コストが高めになっている人は多いのです。

しかし、老後はどうでしょうか。「今日から年金生活」と思っても、贅沢しがちな生活を送ってきた人にとって、生活水準をいきなり落とすのは意外と難しいものです。となると、貯金をハイスピードで切り崩す……なんてことにもなりかねません。また、配偶者や子どもがおらず、身内に介護を頼めなければ、他人に手を借りる必要もあるでしょう。となれば、介護費が多めに必要です。蓄えが潤沢にあればいいのですが、そうでなければ老後生活の途中で困窮することも考えられます。

さらにおひとりさまは、夫婦共働きだった世帯より、将来受け取る年金額が低くなる可能性があります。総務省の「家計調査年報(家計収支編)2019年」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の実収入は23万7,659円。一方、高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の実収入は12万4,710円でした。このデータにおける「高齢夫婦無職世帯」は、共働き世帯であるとは限りませんが、高齢単身無職世帯の実収入は、高齢夫婦無職世帯の約半分であることがわかります。

また、日本経済新聞の記事「年金、共働きで増やす 世帯で4割増の試算も」(2020年1月16日付)によると、夫婦共働きで、夫婦ともに平均的な年収(夫婦は同程度の収入)で40年間働いた時の年金収入月額の試算例は、夫と妻でそれぞれ約15万5,000円、合わせて約31万円となるそうです。妻の収入が夫より低いケースでも、月額約26万5,000円が受け取れる試算となっています。おひとりさまの生活費は夫婦2人と比べれば低くなりますが、それでも、多めに老後資金を貯めておく必要があるのです。

必要な老後資金はいくら?

では、おひとりさまの場合どのくらい老後資金が必要なのでしょうか。

一般的に老後の収入は、退職直前の7割程度が必要とされています。また、前出の「家計調査年報(家計収支編)2019年」によると、高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の1カ月の消費支出(生活を維持するための支出)は13万9,739円、非消費支出(直接税や社会保険料など)が1万2,061円で、合わせて15万1,800円でした。

ただし、これは基本的な衣食住を満たす生活を送る場合の金額と言えます。「そのような質素な老後生活でいい」という人もいれば、旅行や趣味を楽しむゆとりある生活を望む人もいるでしょう。その場合、当然ながらさらに生活費がかかることになります。

このように、希望する老後生活によって必要金額は異なりますし、保有資産や退職金、年金受取額なども人によって千差万別です。そこで、自分の場合はいくら老後資金を準備すればいいのか、以下の計算式にて算出してみましょう。

<老後までに自分で用意する資金の計算方法>

[1]60~64歳の無年金期間の生活費
毎月の生活費×12カ月×5年間

[2]65歳以降の生活費
公的年金だけでは足りない金額×12カ月×○年間
※「(自分で想定する)仮の寿命-65歳」を○に当てはめる

[3]もしもの病気やケガ、介護(200~300万円が目安)、家のリフォーム(マンション300万円、戸建て500万円が目安)等に備えるお金

[1]+[2]+[3]から退職金など老後のために使えるお金を引いた金額が、老後までに(公的年金以外に)自分で準備したい金額となります。

なお、おひとりさまの場合、目安は2,000万円程度。ただし、持ち家に住んで住居費が少ない場合を想定しており、また、基本的な衣食住を満たす生活を送る場合の金額となります。実際に老後どのくらいの金額がかかるのか詳細を判断するのは難しいですが、働き盛りのうちに真剣に準備をスタートさせたいものです。

老後資金はどうやって貯める?

老後のために必要なお金を計算してみたら、「その金額にビックリ」という人も多いのではないでしょうか。リタイアが近くなってから慌てることのないよう、ぜひ今から行動したいものです。

老後資金を貯めるにはいくつかの方法がありますが、おすすめは「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。iDeCoは私的年金のひとつで、自分で選んだ商品を運用し、その運用成績次第で将来受け取れる金額が変わるという特徴があります。運用するには、金融機関で口座を開き、掛金額は月5,000円からスタートできます(年1回金額の変更が可能)。

また、iDeCoは節税効果が高いというメリットがあります。まず、毎月の掛金が所得控除になることで所得税や住民税を減らすことができますし、運用期間中に利益が出た時も、運用益が非課税となります。さらに、年金を受け取る時にも税制優遇があるため、税負担を軽減することができるのです。

「老後なんてまだ先」と思わず、まずは少ない金額からでも、ぜひ積立を始めてみましょう。

老後のためにしっかり貯金を

若くて健康なうちは、高齢になった自分をなかなか想像しにくいものです。ですが、老後の生活をイメージし、実際いくらかかるのか概算してみると、「今すぐ行動しなくては! 」という気持ちになるのではないでしょうか。とくにおひとりさまは、早いうちから老後にしっかり向き合う必要があります。今自由に使えるお金を少し見直し、老後のために積み立ててみましょう。