人生には予測のつかない事がいろいろ起きます。学業を終えたら、親と同居していても基本は一人前の人間として、自分自身を守るために先々のリスクに備えましょう。そのためにはしっかりした人生設計が大切です。ではどのようなリスクに備えれば良いでしょうか。

就職したら、親に頼らず先々のリスクに備えよう - 20歳になったら人生設計を

病気になったら

若いから怪我や病気にならないとは言えません。正社員として勤務していれば、ある程度は保障があるとは思いますが、勤続年数が短いと、そう長くは補償してはくれません。私は就職した年に引越し費用・敷金・礼金と冷蔵庫代のみを6カ月間で貯めて親から独立しました。会社が昼食代の一部や残業食を補助してくれていたのと、医療費の個人負担分は会社が負担してくれていて医療費は無料でしたが、それでも仕事が非常に忙しかったので、病気にならないか心配でした。長く病気になり、退職したら生活費や治療費がありません。そのために食事には細心の注意を払ってカロリー計算までしていました。もちろん親も都内に住んでいて、万一の時は頼れますが、成人した以上、まずは自分で自分を守る努力をするのが本筋でしょう。

まずは自分で自分を守る努力をするのが本筋でしょう

年金対策

会社に勤務していれば自動的に厚生年金に加入します。しかし退職したり自営業であったりしたら、国民年金に加入する必要があります。年金不信から「老後の資金は自分で」と考える風潮ですが、まず自助努力だけでは無理です。国民年金の半分は税金です。保険料を納付しなければ、せっかくの税金も取り戻せません。それよりも重要なことは年金には保障もある点です。万一所定の障害を負えば、その状態が継続する限り障害年金が支払われます。しかし保険料を滞納したりした期間があると、その資格を失うケースも発生します。保険料を支払う余裕がない場合は、保険料の免除の申請をする必要があります。学生の場合は「学生納付特例」がありますが、卒業後にそのままフリーターになった場合は、保険料を納付するか保険料の免除申請が必要です。免除申請が認められれば、万一の補償は受けられます。

失業したら

失業保険があっても勤続年数が短いと給付期間も短くなります。なるべく早く1年間は暮らしていけるだけの貯蓄を心がけしましょう。私はフリーランスで仕事をしていますが、少し前にパートタイムで週3~4日くらい働いていた時期があります。予定外の高額商品を購入したことがきっかけです。別に+αで働かなくても支障はないのですが、はっきり効果があるとわかっているわけでもなく、なければ困る絶対必要なものでもなかったので、短期間にその分の資金回収をすることにしました。

正業の仕事量を増やすと、先々まで大変ですので、気分的に負担の少ない方法を選びました。若い世代から70歳過ぎまでの人々が働いている職場で、週5日フルに働いて正業としているケースも多くありました。しかしフルタイムで働いても手取り10万円程度にしかなりません。それでも若い世代を見ていると、就業する前は国民年金の保険料も支払えず全額保険料免除の適用を受けていたにもかかわらず、携帯をスマホに換え、DVDプレーヤーを買い…と、散財していました。

正社員ではないので、いつ仕事がなくなるか分かりません。実際にその後一斉待機になったようです。私のように数カ月のみの+αの収入確保が目的ではなく、それが生活の基盤であれば、モノに散財する前にまずはその分は貯金すべきです。モノの購入を優先しているにもかかわらず、先々の日本の社会に不安を訴える若い世代には違和感を覚えます。

まずは自分の身を守るのは自分自身であるはずです。生まれて初めてのパートタイムの仕事でしたが、低い賃金で正業として働かなければならないケースをいろいろ見て、勉強になりました。大切なことは若い頃からの人生設計と将来のリスクに関する危機管理意識だと改めて痛感しました。

質素な欧米の女性とブランド品に走る日本人

日本は四季があり衣服の数は南国の国々と比較すれば確かに衣服の数は多くなるでしょう。多くの女性は浴衣や振袖を持っていると思います。少し前までは既婚者であれば冠婚葬祭用の和服も持っていたでしょう。単に着物だけでなく、帯や和装下着から付属品、バックや草履まで一式必要です。お正月にも着物を着るなら防寒着も一式必要です。ある程度衣類の種類が増えるのはやむを得ません。

しかし四季があるのはヨーロッパの女性も変わりません。質の良いモノを長く使い、少ないアイテムを組み合わせの妙で幾通りにもアレンジして着こなす文化に比較して、日本人はあまりにもモノに対して安易に考えすぎるように思います。

若い女性の購買力の高さに応じて商品を開発するのが定番のようですが、まだまだ安定しない立場で、将来的にも必ずしも有利と言えない若い女性が、そのような対象になるのは本来問題だと思います。若い間は、洋服や化粧品・装飾類、レジャーにと消費したいのは、私も通ってきた過程なので分かりますが、それ以前にまずは自分がどのような人生を歩みたいかを考えているのが大切でしょう。

幸いにも、私は大学でも職場でも「建築を勉強したいなら、建築以外の分野を勉強せよ」といわれ、職場で建築の本を広げていれば、「建築のことは仕事を通じて充分勉強できる。別の本を読め!」と指摘され、広く他分野を見渡す訓練を大学・職場を通じて受けました。また上司からは「建築のデザインをしたいなら、まずは自分自身の人生のデザインをしろ!」と言われ、住宅メーカーでのセールスマン教育の際は「トップセールスマンは、必ず将来の自分のビジョンを持っている」と教育され、ファイナンシャルプランナーなど存在しない時代から、恵まれた環境だったと思います。ファイナンシャルプランナーの勉強会でも「米国のトップビジネスの創業者の50%は自宅の自室に、目標を紙に書いて張り出していた」と報告がありました。

親元居住ならアパート代+αの貯蓄を - 親元通勤時期こそ蓄財を

女性の平均結婚年齢は29歳だそうです。22歳から7年程度の独身の間、親元からの通勤であれば、相当の貯蓄ができるはずです。アパート代と光熱費を試算すると…7年間で約700万円もの貯蓄ができるはずです。月々の給与やボーナスなどからも余力分を合わせれば800万円以上の貯蓄も不可能ではありません。しかし、実態はそれらの余力分は、通信費やブランド衣類、化粧品、海外旅行などに消えていっているように思います。

(C)佐藤章子

7年間勤めれば銀行も住宅ローンを貸してくれるでしょう。市場性の確かな小さなマンションを購入して運用することも可能です。自分が住んでも良いでしょう。結婚したら貸すこともできます。若い間は利益を生む必要はありません。返済中心に考えれば、完済後は収入源の一つになります。その後の人生が専業主婦になろうと独身のままであろうと、多少なりとも収益を生む資産を一つ持っていれば、大きな転機の際にはリスクを小さくすることができます。

また貯蓄しておいて、子育てと両立するための自立資金にしたり、それこそ万一の場合の生活費などに何でも使えたりできます。「蟻とキリギリス」同様、最初に楽しい思いばかりしていたら、その後のリスクは大きくなります。独身時代こそ、女の蓄財の決め手の期間なのです。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。