「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • コロナ禍で子どものコミュ力も落ちている……?


生活の変化で子どものコミュ力に影響が

ソーシャルディスタンスを保ち、マスクをつける。感染防止のためにとても大切なことですが、これだけ長い期間ですと、子どもにとってもストレスが溜まっていると思います。本来、子どもは触れ合って(じゃれあって)安定した情緒が育ちますし、顔を近づけ目を見て会話をすることで、自分の考えや思いを育んでいくからです。

そこで今回は、「コロナの感染拡大で息子はお友達や先生と話す機会も減り、給食も黙って食べています。大声で発言することもできず、とても受け身な生活になっているような気がするのですが、いまコミュ力を育むために、親にできることはありますか」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

こうしたご相談を受けることが最近とても多くなっています。大人はこうした事態だから仕方ないと受け止めることができても、子どもにとっては貴重な成長期でありそうはいきません。

コロナの弊害として、運動不足や学習不足に続いて、「コミュニケーション能力」(以下、コミュ力)の低下が心配されています。

コミュ力の育む3つの聴き方とは

コミュ力はすべての基礎だと思います。これから先、スポーツ・勉強・芸術などに邁進する上でも、自分の考えを相手に伝え、相手の教えを受け止めて課題を明確にし、伸ばして行くために必要な力と言えるでしょう。

子どものコミュ力を伸ばさなければと焦る気持ちはわかりますが、この時期はいつも以上に「子どもの思いを受け止める」ことに注力できるといいですね。

静かに学んだり、黙って教えられたりすることの方が多い今だからこそ、家庭ではおしゃべりできる機会を大切にしたいと思います。

「さあ、あなたの考えを言ってごらん!」「今から、コミュ力を育む時間よ」などと特別な時間をとる必要はありません。毎日の生活の中で、聴き方を少し変えてみましょう。

次の聴き方のステップ3つを順にトライしてみてください。

1.子どもがしていることを言葉にする

コミュ力のベースはやはり「語彙力」です。読書から増やすことも大切ですが、まずは親が使う言葉も意識して増やしてみましょう。

新しい言葉を習得するのに効果的なのは、子どもが夢中になっていることや見ているもの、感じているであろうことを親が言葉に置き換えることです。

例えば、子どもがアリに夢中になっている時に消防車が通りかかったら、つい「消防車よ! 大きいポンプ車ね」「はしご車は珍しいのよ。ビルで火災があった時に人命救助や消火活動をするのよ」など、親の視点から教えたくなりますが、子どもが今見ている「アリ」を一緒に見て言葉にするほうが効果的です。

「アリさん、忙しそうに歩いてるね。きれいに一列に並んでエサを穴に運んでいるのかなあ。列の先頭まで見に行ってみようか」などと、子どもが知りたいことを一緒に言葉にできるといいですね。

2.頷きながら聴く

子どもは自分が夢中になっていることを、親が興味を示してくれれば自ら話し始めます。逆にいうと、子どもが興味のないことを親がいろいろ聞くから話さないのです。「うちの子、話さないなあ」と感じたら、子どもの興味のあることは何かを、よーく見てみてくださいね。

子どもが話し始めたら、ひたすら聴きましょう。間違ってるなと思っても、「うんうん」と受け止めます。話がまどろっこしくてじれったくても、先に親が結論を言わずに、お子さんのお話を最後まで聴くようにしましょう。

3.子どもが話したことを繰り返す

親はつい子どもの話をまとめたくなったり、正解を教えたくなったりしますが、子ども自身が自分で正解にたどり着いたり、まとめられるように考えなければ意味がありません。そのためには、お子さんの言葉をそのまま繰り返しましょう。

例えば、お子さんがお友達の悪口を言ったとします。親はいい子だと思っていた我が子がそんなことを言うなんてとびっくりし、正論を言いがちです。

子「Aちゃんは意地悪だからもう口きかない!」
親「そんなことしちゃダメよ」
子「なんでよ! 悪いのはAちゃんなのに。もうママには話さない」

正論を言われた子どもは、こんな風に否定的に受け止めてしまいがちです。 そのため、親は肯定も否定もせずに、そのまま繰り返しましょう。

子「Aちゃんは意地悪だからもう口きかない!」
親「そう、Aちゃんは意地悪なんだ。もう口きかないんだね」
子「うん、だってさ……Bちゃんに、○○したんだよ! ひどいでしょ」
親「Bちゃんに○○したんだ、ひどいね」
子「ママもそう思うよね! でも、Bちゃんも悪いんだよね、実は……」

このように、子どもは自分で自分の考えを言葉にしながら整理していきます。そしてたどり着いた答えが、自分の考えとなっていきます。また、「いつもママは私の話を聞いてくれる。ママにはなんでも話せる」と、子どもが思い成長していくことは、何かあった時のためにも大切です。

子どもが自分で気づく会話をしよう

子どものコミュ力を育むためには、親が子どもの考えをゆっくり自分で導き出せるように、話を聴くことが大切です。

少し考えが足りないなとか、語彙力が足りないなと感じたら、繰り返す言葉の中に、ママの考えを入れてみたり、別の視点を提案してみたりしながら、会話を続けてください。

親の考えを押し付けるのではなく、あくまで子ども自身がたどり着けるように会話を重ねることが大切です。