「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 夫婦の間で感謝のことばを言えないのはなぜ?


自粛や先の見えない不安から、子どもも大人もストレスを抱えている状況が続く中、このようなご相談がありました。

「私は家族のために家事や子育てをこんなにやっているのに、夫は感謝のことばもなく腹が立ちます。ついに『そんな態度なら出て行け!』と怒鳴ってしまいました。感謝して欲しいわけではありませんが、少しくらい楽しい家族の時間を持ちたいと思っているだけです。子どもが、夫のようにありがとうも言えない大人に育ったらどうしようかと不安です」

今回は、この切実なご相談に親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

なぜ「ありがとう」が言えないのか

感染予防のために、家族で家にいる時間が多くなるのと同時に、お母さんへの負担も重くなっています。疲れ果てているお母さんにも何かご褒美があればいいのですが、ストレス発散できるような飲み会もカラオケも旅行もできない状況が続いていますね。せめて、家族からの優しい言葉があればいいのですが、家族もストレスを抱えていて、なかなかそうはいかないようです。この状況下、みなさんならどうしますか?

「そんなに大変なら、家事を手抜きすればいいじゃない」という声が聞こえてきますが、手抜きするほうがストレスになってしまう方も多いのも事実です。それに、家族にそう言われたら、きっと爆発してしまうので要注意です。なぜなら、している側は"手抜きできない家事や子育てをしていること"に誇りを持っているからです。

1番いいのは、夫(妻)と子どもが「ありがとう」を伝えることですが、言えない夫(妻)がとても多いようです。なぜでしょうか。

ひとつには、当たり前すぎて本当に気づかないケース。もしくは、やって当たり前と思っているのかもしれません。仕事は報酬や評価がありますが、家事は報酬もなく誰からも認められなければだんだん辛くなるものです。せめて、家族がねぎらうことは忘れないようにしましょう。

考えてみれば、私たちも子どもの頃お母さんがご飯を作ったり後片付けしたりするのを当たり前だと思っていたかもしれません。今からでも感謝の気持ちを伝えられるといいですね。まずは自分が変わりましょう。

そしてアンケートをとったところ、夫が感謝を言えない最も大きな理由は、「夫も妻から感謝されたことがない、お互い様」ということが浮かび上がってきました。「毎日こんなに仕事をしているのに、ありがとうと言われたことがない」と……思い当たる節がある方も多いのではないでしょうか。

さらには夫の意見として「少しくらい感謝してくれてもいいのに。せめて帰宅した自分ににっこり笑顔でおかえりといって欲しい」との回答もありました。余談ですが、「帰宅すると妻が子どもにガミガミ怒っていて途方にくれる」というご相談はとても多いです。

「いやいや、ちゃんと感謝しているよ」と思われた方も多いかもしれません。しかし、しっかり相手の目を見て言葉に出して伝えていますか? お互いがそうできればいいですね。

では、「私はちゃんと感謝の言葉を伝えているのに相手が言わないから腹が立つ」という方はどうしたらいいでしょうか。

そんな時は、人間は相手の立場にならないと理解できないものだと思って、「きょうは◯◯のために、△△できないから代わりにしてくれる?」など、自分ができない理由付きで、家事や育児などを任せることです。つまり、相手がやらざるを得ない状況を作ってみましょう。

もし、やってもらうと二度手間になりそうだから、それくらいなら自分でやったほうがいいという方は、自分がやりたくてやっていることに気付けたので、感謝の言葉はなくてもいいのだと割り切りましょう。

とはいえ今後自分が入院したり旅行に行ったりした時に、安心して家を空けられるように家族の家事訓練は大切です。少しずつ、やってもらうことも必要でしょう。

先日ある妻が、骨折をして1カ月入院した時、夫は80歳にして初めて洗濯をしたそうです。そして、「毎日こんなに大変な思いをして洗濯をしてくれていたんだね、ありがとう」と初めて言ってくれたそうです。もう少し早く気づけると良かったのですが、自分でやってみて人は初めて気づくことが多いということですね。

「ありがとう」と言ってくれないもうひとつの理由は、こちらがやってあげていることと相手がやって欲しいことがずれているケースです。

自分は手作りの料理をアツアツのうちに食べさせたいとこだわっていても、家族はコンビニのお惣菜やカップラーメンを食べたいと思っているかもしれませんね。イライラしながら、手作りにこだわった料理に感謝の言葉がないのは、そういうことかもしれません。

こっちが良かれと思ってしていることを、相手の立場でもう一度見直してみるようにしましょう。相手が本当に望むことをしてあげたら、きっとありがとうの気持ちを伝えてくれるはずです。

相手にも自分の立場になって考えて欲しいように、まずは自分が相手の立場に立って見直してみるとお互いがわかりあえて楽になれるかもしれません。そんな姿を見て、子どもは学びながら成長していくはずです。