「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第112回のテーマは「期待しすぎると怒ってしまう問題」です。

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  • 家事と育児と男と女

この夏の話です。家族でご近所さんと花火をしていたときに、息子が花火を振り回して燃えかすがサンダルに入ってしまいました。

私はすぐ駆け寄ったので、「結構な火傷だ……! 」とわかりました。するとパートナーがすぐ家の中になにかを取りに行ったので、「ああ、こういうときの処置をわかっているんだな」と心強く思っていたのです。

すると持ってきたのが氷だったので、「こんなんじゃ、足りない!!! 」と言ってしまいました。「どれくらい火傷したか、わかってないのに家の中に行ったの?! なにそれ? 」みたいな感じになってしまいました……。「火傷には流水だよーー! 」と言って、慌ててバスルームに連れて行ってもらいずっと流水で冷やしました。

しかもそれは週末の夜。救急に行くほどではないけど、絆創膏とかではどうにもならないほどの火傷です。病院に行くかどうか……というときに、「そうだ、こんなときこそファストドクターを呼ぼう! 」となりました。

ファストドクターというのは、現在関東1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)、関西1府1県(大阪・兵庫)の一部地域でサービス展開している、夜間の往診サービスです。我が家は対応エリア内だったので、このとき初めてファストドクターを利用することにしました。

火傷は流水で冷やしている間は痛みが和らぎますが、それをやめるとかなりの痛みがあります。なので、今すぐ夜間の病院に連れて行くのは息子にとって大変だろうな……と思い、こちらを選択しました。私は息子に付き添っていたので、パートナーに電話を頼むと「往診にちょっと時間がかかるって」とのこと。

パートナーに「病院のほうがいいんじゃない? 」と提案されたのですが、すでに夜の8時過ぎ……少しくらいなら待ったほうが移動の負担がないし、息子も処置してそのまま寝られるかもしれないとファストドクターを選びました。

で……この間ずっと、パートナーにイライラしちゃっていたんですよね。「え、なんですぐわかんないの」とか「え、往診待ったほうがいいじゃん? なんで病院行くの」とか思ってしまっていたのです。

よくよく考えると、別に怒る必要ないんですよね……。だけど、今までの経験で育児経験のあるパートナーは私よりもいろいろ知っていて、きちんと判断できる、と思いすぎていたのです。つまり、私にとってパートナーの「これくらいできるはず」という期待値が、ものすごく高く設定されちゃっていたんです。

そのときは私の期待通りの行動ではなかった。そうすると、私は勝手に「期待ハズレだ! 」と失望し、「もっとできるはずなのになんで? 」とイライラしてしまったのです。

ああ、これ本当によくないなと思いました。

パートナーは以前はキレやすかったのですが、それは「相手に期待するレベルの設定が高すぎる」せいでした。「なんでこれくらいできないんだ! 」といろいろなところに怒りを抱えていました。「そもそもその期待はあなたの基準で、それを周りが同じようには考えてないんだよ」と指摘して、他者への期待を修正するようにお願いしました。そしてパートナーは「自分の他者への期待の高さ」に気が付いてから、キレたり感情的になったりすることが減りました。

逆に私は、他者に期待するレベルがものすごく低いタイプでした。なので「相手から期待通りの反応が返ってこない! 」と怒りに変わることはほぼありません。でも、それはそれで問題なんですよね。

誰にも期待していないということは、誰にも心を許していないし、信頼して任せることもできないからです。私は私でそれを修正しなければいけないと、ちゃんと甘えるように心がけて、いろいろなタスクをパートナーに信頼して任せるようにしていました。

それによって、逆に「ここまではこの人はできるハズ」という設定ができちゃっていたんですね。今回は私のほうが、実際に相手が対応できるレベルよりも高く設定していたということだな~と思いました。

冷静に考えれば、子どもがアクシデントでケガなどをして泣いてる場合、親は慌てますよね。相手の判断が適切じゃないことだってある。それにイラついてもしょうがないのです。それに自分のほうの判断が正しいと思うなら、それをやればいい。でも自分もどこか「これであってるか不安」という気持ちがある。その不安を相手が肩代わりしてくれないからって、怒っちゃダメだよなぁと思いました。

自分でそれに気が付いたので、その後「ちょっと期待しすぎちゃってて、怒ってごめんね」と謝りました。パートナーには「さるころの判断が間違ってると思うならオレも言うけど、別に間違った判断とかしない。もっと自分の判断に自信持ってほしいし、過剰な期待をしてもらうとオレも困る」と言われました。

相手への信頼や甘え、期待などのバランスはちょっと気を抜くとすぐ偏ってしまうんだなと思いました。

その後ファストドクターがきてくれて、塗り薬と処置方法を教えてくれました。薬のおかげで痛みも和らぎ、息子は無事に寝ることができました。現在は順調に回復中です。

ちなみに夏の花火。サンダルでやると足に火傷するというのはわりと定番のアクシデントだそうです。なので、花火をするときはスニーカーでやるということを今回学びました。わりとうちの息子は慎重派でアクシデントが少なめだったので、油断してました……。皆様もお気を付けください!

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。