「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 自分で時間を組み立てる子になるには?


子どもにとって、夏休み中に「自分で時間を組み立てる」という経験をすることはとても大切です。とはいえ、今年は夏休みも短く、今まで"当たり前"だったことを経験させるのは難しくなっています。

そこで今回は、「旅行などをして新しい体験をすることも難しい今年の夏休み、子どもに何をさせたらいいでしょうか。せめて自分からやる子になって欲しいのですが……」というご相談に親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

「やったらできた!」の体験をさせよう

子どもが自分から何かをするようになるためには「やったらできた!」という体験をさせることが大切です。そのために親ができる手順について考えてみましょう。

1.子どもの過ごし方に口出しをしない

大人は予定をびっちり入れて、それをこなせると充実感があるのですが、子どもにとっては何もない時間が必要で、その時間をどのように工夫して過ごすのか子ども自ら考えることは大切です。

親としては「ぼーっとしていてもったいない」「ゴロゴロしているだけで見ているとイライラする」と思うかもしれませんが、口出ししてはいけません。与えられたことをするのではなくどう過ごすのか考えるのは、子どもにとって自分の考えをまとめたり、好きなことは何かを考えたりする貴重な時間です。

こう書くと、真面目なお母さんは「自分でちゃんと考えなさいよ」とか「好きなことをする時間にしなさいね」など言いたくなるかと思います。しかし、それは与えられた時間であり逆効果です。

子どもが"ぼー"っとしていても、「そういう時間が成長させるのね」くらいに思っていてください。親から何も言われない時間こそが、子どもが自分から何かをするようになるうえで大切です。

2.子どもが始めたことを見逃さない

とはいえ、ほったらかしにするという意味ではありません。親は子どもが何かを始めたことを見逃さないようにしましょう。

例えば、お絵描きを始めたら、「お! 絵を描いてるのね」と伝えましょう。絶対に「絵なんて描いてないで宿題しなさい」と、否定から入らないでください。

子どもの行動を否定せずに、認めることが大切です。こういうと「褒めなければ」と意気込むお母さんが多いのですが、何を描いているのかわからない絵を見て、「すばらしい! 上手に絵をかいたのね」とは言えないですね。しかも子どもも見透かしてしまいます。とはいえ、「何を描いているのかわからないからもっと丁寧に描こうね」と言えば、子どものやる気を損ねてしまいます。

親は、子どもに対して"あなたの行動を見守っているよ"という気持ちを込めて、「絵を描いているのね!」と、にっこり笑顔で言えばいいのです。

3.結果だけで判断しない

重要なことは、描き終わった後に「上手にかけたね」と結果だけをほめるのではなく、描いているときに、どう言葉をかけるかです。

結果だけを褒められて育つと、褒められるために行動するようになり、うまく描けないなら描かない、という逆効果になりかねません。「やってできなかったら怖い。上手にできなかった僕をさらけだしたくない」という思考の始まりです。

そしてこれが、「やればできる子なんですけど……やらないんですよね。どうしたらいいのでしょうか」と、よく聞くお悩みにつながるのではないかと思っています。

一見「あなたはやればできる子よ」という言葉は寄り添っているように聞こえますが、「あなたはやっていないからできないのよ」と否定する言葉にも受けとれます。

大人なら言われたタイミングによっては救いや励ましの言葉ですが、成長期の子どもにとっては「やってもできなかったらどうしよう」と失敗を恐れることになりかねません。これが結果だけを評価される怖さです。

4.失敗しても応援し続ける

子どもは結果ではなく、自分がやっていること(親にとっては嫌なことも含めて)を応援してもらうことで挑戦する心が育っていきます。

お子さんが楽しく描いていれば隣でニコニコ見守りましょう。「羽はもっと大きく描いたら?」など正論を言わず、「そう描くのね。そんな風に表現するのね」と感じたことをそのまま言葉にするだけでいいのです。

親が思い描く"いい絵"を描かせたくなりますが、親より子どものほうがずっと"味のある絵"が描けます。

もし子どもが「もっと羽は大きく描いたほうがいいかな?」と聞いてきたら、「ママもよくわからないから、図鑑で調べてみようか」など、調べ方や比較の仕方などを一緒に学ぶ提案ができるといいですね。

よくわからなくても好きに描いていいんだという安心感も大切です。途中で子どもが飽きてしまったら、指示して描かせるより、親自身が「私も描いてみよう!」と楽しそうに描くこともアリだと思います。

決してうまく描けなかったとしても、描くことの楽しさを覚えたら、次にまたもっといい絵を描けるでしょう。なぜなら、努力することが面白くなるからです。

親にとっては「たかがお絵かき(それがゲーム、あるいは宿題)」だとしても、「やったら、できた!」という体験をすることは、課題などを自分からやれる子になっていく第一歩となるはずです。

今年の夏は、やらせてこなす宿題より、やったらできた自分を体験させてみてはいかがでしょうか。