「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • パパママの会話で子どもが傷つく"間接的な言葉"に注意する(写真:マイナビニュース)

    パパママの会話で子どもが傷つく"間接的な言葉"に注意する

「うちの子、話ベタなんです」「娘は私の言うことを聞かないマイペースな子なんです」「甘えん坊で、ぜんぜんダメです」。こういった言葉をお母さんお父さんからよく聞きますよね。本音や謙遜の場合もあると思いますが、こうしたネガティブな言葉を子ども本人が聞くとどのような影響があるのでしょうか。

今回は「子どものことをあまり悪く言いたくないけど、どうやって周りに話せばいいのかわからない。それを聞いて自発的に直してくれたらいいに……」というお母さんからのご相談です。ママ友だちや先生、お姑さんなどに話をするときに、何に気をつけたらいいのか、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

褒める子育て、認めることの大切さは、お母さんお父さんに広く知られるようになりましたが、それを他の人に言うことにはまだ抵抗があるようです。でもこれは、欧米の人からすると「日本の子どもはかわいそう」とびっくりされる文化です。子どもを悪く言ってしまうことの影響を具体的に考えてみましょう。

「間接的な言葉」は影響が大きい

先日、あるお母さんから「公園やスーパーで息子がぐずって大泣きして、どれほど大変だったかを帰宅した夫に毎日話しているのですが、よくないでしょうか」という質問がありました。

「1日のことをパパに聞いてもらうのは、いいことだと思いますよ」と答えると、 「子どものいる前で、いかに息子が私を困らせる子なのか、だだばかりこねて私の言うことを聞かない子なのか、事実を夫に話します。パパに言いつけることで、少しでも直していい子になってくれることを願っているのですが……しかし、よくないことでしょうか」そう話すお母さんの顔は泣きそうです。

お母さんは毎日いかに息子がダメな子なのかをパパに伝えていたそうです。しかし、それを毎日聞いていたお子さんの気持ちを考えると胸が張り裂けそうですね。もちろん、ママもとっても大変でパパにわかって欲しい気持ちでいっぱいだったのだと思います。

直接叱るときでも言葉は選ぶのが基本です。また、油断しがちな他の人に話すときの言葉こそ注意すべきなのです。

他の人のいる前で叱ったり、他の人に告げ口したりするのは避けましょう。直接言われる言葉よりも、間接的に聞く言葉の方がより心に響くからです。

人に言わず直接叱る

自分のことに置き換えて考えてみましょう。「ここが間違っていたから、ミスしないように」と直接上司から言われたことは、次から注意しようと反省できますが、「あなたがまた間違えてミスした、って部長が困ってたよ」と間接的に聞かされたら、どこが間違っていたかもわからずショックは大きいのではないでしょうか。第3者から聞く言葉は、本音として重く受け取られます。悪口に思えてしまうのですね。

お子さんも同じです。ママがパパに伝える"ダメな子"は、それを聞いている子どもをどんどんダメな子にしてしまいます。「僕はダメな子だから、明日から直そう」なんて思う子どもはいません。それだけでなく、それを聞いたパパも我が子の悪口を毎日聞かされてうんざりし、本当にダメな子だと思い込んでしまいます。子どもの前でパパや第3者に言う言葉には細心の注意を払いましょう。

ただ、子どものいないところで、どれほど大変だったのかを話して、ストレスを溜めないようにすることは悪いことではありません。しかし、発する言葉で、ママ自身の気持ちが変わる可能性もあるのです。

悪い面だけを見るべきでない理由

悪い面だけを見ず視点を変えてみれば「今日も元気にお外に出かけて、公園で思いっきり遊んだし、帰りたくないほど夢中になってボール遊びしたよ」や、「ママに付き合ってくれてスーパーに一緒に買い物に行ったのよ」といったネガティブな言葉を使わずに、伝えられることはたくさんあります。もちろん、ウソを言ってほめることはNGです。

さて、ご相談をいただいたお母さんは納得し、それから1週間パパに否定的な言葉は使わず話をするようにしたら、びっくりするほど息子さんが変わったそうです。

「あんなに変わらなかった息子が、たった1週間で見違えるほど変わりました。しかも、パパと息子の仲もすごくよくなりました。ことばって大切なんですね」と嬉しそうに報告してくれました。

褒める時こそ間接的にほめる

第3者に話す時こそ、子どもを伸ばすチャンスです。ここぞとほめたいところは、パパ(ママ)やおじいちゃんおばあちゃんに話をしましょう。子どもは耳をダンボにして聞いています。そして、直接ほめられた言葉よりも影響を受けて育っていきます。

お友達のママ(パパ)に話す言葉こそ、子どもはとても敏感です。"おかあさんが自分のことをどう見ていて、どんな風に話すのかを客観的に知るチャンス"だからです。

「話ベタ」と誰かに話しているのを聞けば、話ベタになりますし、「いうことを聞かない」と聞けば、いうことを聞かない子になっていきます。反対に、「運動会のために、走る努力をしたのよ」と言えば、もっと努力します。

子どもに直接言う言葉以上に、誰かに話す言葉に気をつけて、子どもの成長を応援できるといいですね。言葉が人に力を与え、人を育てていくからです。