キウイフルーツは、なぜここまで「健康的な果物」と言われるようになったのか。その背景には、科学的な研究だけでなく、健康を暮らしの中で自然に実践するニュージーランドという国の姿があった。
第1回から繰り返し紹介してきたように、キウイフルーツが「カラダにイイ」とされるのは単なるイメージではない。食物繊維やビタミンCをはじめとする豊富な栄養素に加え、その健康価値は数多くの研究によって裏付けられている。そして何より、甘さとほどよい酸味を兼ね備えたおいしさは、カラダだけでなくココロもうれしくしてくれる。
ニュージーランド現地を訪ねた連載の最終回では、キウイフルーツの健康価値を改めて見つめ直すとともに、その背景にあるニュージーランドという国の"豊かさ"にも目を向けたい。
多彩な栄養素を含むマジックフルーツの秘密
第1回でキウイフルーツが秘める健康価値についてごく簡単に触れた。まずキウイのイメージとして、以前から広く知られていたグリーンキウイは多くの食物繊維やアクチニジンというたんぱく質分解酵素を含む。このアクチニジンはキウイフルーツ特有の消化酵素だ(ちなみにキウイフルーツの学名は「Actinidia deliciosa」もしくは「Actinidia chinensis」で、アクチニジンの名はキウイフルーツの属名「Actinidia」に由来する)。
一方、ゼスプリのサンゴールドキウイとルビーレッドは、前者が1日1個で1日分のビタミンCを摂取でき、ビタミンEも豊富。後者は1日分のビタミンCに加えてアントシアニン、ポリフェノールも摂取できるというもので、いずれも「キウイを食べれば健康になれる」というイメージどおりのマジックフルーツといえる。
そもそも、キウイフルーツは世の中に存在する数多くの果物の中でも栄養密度が最も高いものの一つで、上記以外に葉酸やカリウムも豊富に含んでいる。
ある調査では、「栄養素充足率」はイチゴが9.2、バナナが8.0だったのに対し、グリーンキウイは12.3、サンゴールドキウイは15.7、ルビーレッドは17.6と大きく上回った。
冒頭でも触れたように、キウイフルーツの健康価値の高さはさまざまな学術研究にも見ることができる。今回のニュージーランド訪問では、キウイの健康価値について研究する2人の科学者の講演を聴くことができ、納得感が深まった。その講演内容から最近の注目すべき研究成果にフォーカスしてみる。
欧州で健康価値をうたえる科学的根拠
オタゴ大学(クライストチャーチ校)医学部で消化器系を専門とするリチャード・ギアリー(Richard Gearry)教授は、とりわけグリーンキウイの健康価値について研究している。
ギアリー教授の研究は、グリーンキウイの摂取が排便回数を増やし、正常な腸の働きに寄与するというもので、2025年8月にEU(欧州連合)のヘルスクレーム認証を取得した。ヘルスクレームとは健康価値を前提とした機能性表示、つまり堂々“カラダにイイ!”と言えるということだ。
EUヘルスクレームは欧州食品安全機関(EFSA)が認証するもので、要は食べて安全、健康にもいいというお墨付きをEUの機関が与えるものである。その取得はきわめてハードルが高く、人間を対象として実施された複数の臨床試験の質・量ともに深い科学的根拠(データ)を用意する必要があり、それらが慎重に吟味されて初めて認められる。実は、EUヘルスクレームを取得した生鮮フルーツはグリーンキウイが初だった。
EFSAヘルスクレーム認定を取得するまでの経緯~リチャードギアリー教授の講義より~
「ニュージーランド人はキウイフルーツは健康にいい、おなかにいいと言われて育ちましたが、その慣習だけでは(ヘルスクレームは)承認されません」とギアリー教授。とにかく困難な認証だが、今回の申請に関しては先行研究に自らの最新研究も加えた6つの臨床試験におけるデータをEFSAに提示した。「キウイフルーツの腸の健康に関するこれまでの研究成果に自分たちの研究を上乗せして進められたので、ラッキーでした」と教授は振り返る。
まず、2つの年齢グループを対象に便通の改善効果を調べた2002年の先行研究で、1週間の排便は回数も頻度も増えていた。「健康な被験者を対象としていたため、EFSAはこの実験を重視していました」(ギアリー教授)
2つ目は2018年の研究で、大腸に残った便がグリーンキウイを摂取することで軟らかくなり、便通の質がよくなった。この研究は「キウイが腸にいい」という評価のいわば嚆矢(こうし)になったものだという。3つ目は2020年の研究で、キウイを摂取すると便通がよくなる一方、不快感が増えるといった逆効果はないことを示した。
続いて、グリーンキウイ1日2個と、便秘への効果がすでに実証されている健康食品およびプルーンをそれぞれ摂取した結果、グリーンキウイも実証済みの2つと同等の便秘軽減効果が示されたという2021年の研究。この実験で、どの食べ物が好きかと被験者に質問したところ、キウイと答えた人が圧倒的に多かったという。
こうした先行研究に、ギアリー教授自身が2022年に日本の東北大学の福土審教授、イタリア・ボローニャ大学のジョヴァンニ・バルバラ教授とともに行った臨床試験結果も加えられた。「EFSAは説得がとても大変なので、承認にはさらに研究が必要でした」と教授。この研究では非常に重要な結果が出たという。
被験者は3カ国から約60人ずつ、計184人。60人の内訳は健康な成人、食生活・習慣などに起因する便秘を抱える人、過敏性腸症候群を持ち、なおかつ、便秘を抱える人がそれぞれ3分の1ずつで、1日2個のグリーンキウイを摂取した。
この結果、グリーンキウイを摂取した便秘症状を持つ人たち全員に改善が見られ、1日2個のグリーンキウイ摂取はすでに効果があると実証されている健康食品と比較しても、同等もしくはよりよい効果が得られていた。重要なのは、腹部不快感や下痢を起こした人がいなかったことである。「1日2個のグリーンキウイ摂取は、便秘だけでなく腹部の不快感も改善することがわかりました。かつ、キウイの効果はきわめて早く出ることもわかったのです」(ギアリー教授)
これらの実験から得られたエビデンスとして、1日2個のグリーンキウイを摂取することが腸の健康によい影響をもたらすことが明らかになったとして、「1日あたり新鮮なグリーンキウイ2個(果肉200グラム以上)摂取」を条件に、EU全加盟国で「グリーンキウイの摂取は、排便回数を増やすことで、正常な腸の働きに寄与します」という文言によりグリーンキウイを売り込めるようになった。
食物繊維の機能性を追求するジョン・モンロー博士の研究
キウイフルーツの食物繊維が腸機能の健康にどう機能するのか。ニュージーランド・バイオエコノミー科学研究所の主任研究員であるジョン・モンロー博士は、植物の構造や成分が人間の健康にどう反応するかを研究対象としており、「キウイフルーツは話題性のある対象」(モンロー博士)だとして、キウイの食物繊維の腸機能における働きを研究している。
自然由来の食物繊維がもたらす影響~ジョン・モンロー博士の講義より~~
モンロー博士によると、自然由来の食物の食物繊維は未加工であるため、加工食品のものよりも腸内で大きく膨らむという。キウイはその食物繊維を豊富に含んでおり、摂取されて体内を通る消化の過程でより大きな容積を占めるようになるとのことだ。
「1個の生のキウイの食物繊維は、おなかの中で何倍もの大きさに膨らみます。それが摂取された他の食べ物を包むようにして、消化を助けます。併せて消化器官内にあるブドウ糖などの粒子の拡散速度を下げ、それにより消化速度が低下して、結果的に血糖値の上昇を抑えます」(モンロー博士)
キウイに関しては有機酸も特徴的で、「有機酸と食物繊維が一緒に作用していることが、血糖反応を抑制する要因だといえます」とモンロー博士は指摘した。
さらにもう一点、食事の際にキウイを食べる順番によっても、こうした反応における差が出るという。
「小麦のビスケットを食べる30分前にキウイを食べると、血糖反応が抑制されました。血糖値がゆっくり上昇しているときに小麦ビスケットを食べることで、血糖上昇を抑える効果が高まります。他の実験からも、キウイはできれば食事の最初、炭水化物の主食を食べる前に摂取すると、血糖上昇の抑制効果が出ることが見えてきました」(モンロー博士)
加えて、キウイの食物繊維は消化されないため、腸内に長くとどまることで発酵を促すほか、水分を多く含むことから大腸内のうるおいが高まり、便のかさが増す効果も見られるという。「発酵性のあるキウイの食物繊維は、大腸がんの予防にも貢献します」とモンロー博士。
結論として、キウイは食事全体の一要素として、他の品目と共に、しかもできれば一番最初に食べることが重要だというのがモンロー博士の研究からわかるキウイの健康貢献ストーリーだ。
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今回は、オークランドの市街地に面したハウラキ湾に浮かぶワイヘケ島も訪れた。美しいビーチとオリーブオイル、ワインの島として知られる観光地だ。ワイヘケ島に向けオークランドの港を出航した直後、街の上に巨大な虹がかかった
人々の生活に染み込んだニュージーランドなりの豊かさ
スーパーマーケットを訪れると、キウイがフルーツ売り場の広いスペースを占めていた。まさにニュージーランドを代表する果物だ。しかし印象的だったのは、それ以上に、健康や環境への配慮、そして社会への思いやりが、日々の買い物の中にごく自然に息づいていたことだった。
今回はニュージーランド国内でチェーン展開するスーパー「ニュー・ワールド(New World)」の一店舗を訪問する機会があった。店内ではスナックやシリアルなどさまざまな食品に、健康の観点から見たレーティングが最高5〜最低1の星数で示され、消費者が購入を判断する際の有力な材料となっていた。星5つや4つだけでなく、星1つの商品も見かけた。星が少ないことによる売上への影響はそのメーカーに聞いてみなければわからないが、「当社は誠実です」という意思表示なのかもしれないし、食べ物には健康以外の価値も当然あるのだからいわば多様性の証しなのかもしれない。
そのほか、リターナブル容器で惣菜を販売する取り組みや、ボディソープなどをリフィルで購入できるサービスも実施されていた。ムダを極力なくそうというニュージーランド人の“豊かな”心意気がここにもよく見える気がした。また、袋にパッキングされた食品を20NZドルで購入してその額を寄付する取り組みも行われていた。福袋を買うのにも似た感覚だが、中身を寄付者が自ら選ぶこともできるとのことだった。
こうした取り組みはスーパーマーケットだけではない。今回のニュージーランド訪問では、日常生活の中でキウイと深く関わる人々とも多く触れ合う機会があった。
夕食に招かれたオークランド郊外の一般家庭、サリス(Sallis)さんの邸宅では、食事やドリンク、デザートにキウイを生かしたメニューの数々をごちそうしてくれた。第1回で紹介したキウイ果樹園のカーナカンさんの家でもキウイを単体の果実としてだけでなく料理にあしらったり、フードドライヤーで乾燥しチップスにして食べるという話を聞いたように、キウイはニュージーランドの人々の暮らしにかなり深く浸透していることを現地で実感した。
ニュージーランドの豊かさを言葉にするのはなかなか難しい。ただ、現地でしばらく時間を過ごし、健康と自然環境と社会の良心を日常生活の中で当たり前のように追求している生活スタイルに、私はきっとニュージーランドなりの豊かさを感じたのだ。
そしてその豊かさの中心に、キウイフルーツがある。関わる人すべてが健康や美味しさという価値の追求を続け、いまや国の象徴とさえいえる果実に育っただけでなく、その価値は海を遠く越えたこの日本においても多くの人に注目され、愛されている。
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すっかりキウイファンになったうちの奥さま。先日も朝食時にサンゴールドが食卓に上がり、食後ゆっくり食べようと手をつけずにいたら、「食べちゃうね」と全部食べられてしまった。
ゼスプリのキウイは春先のルビーレッドからサンゴールドへ、そして日本が本格的な夏を迎えた頃からはグリーンキウイのシーズンに入る。
そして私は今日も、近所のスーパーで妻にキウイを買って帰るのだった。








