ニュージーランドの大地が生み出す、一風変わった宝石・キウイフルーツ。第1回で世界最大のキウイフルーツ販売企業・ゼスプリのキウイフルーツを栽培する果樹園を訪問したが、私たちの食卓に上るキウイフルーツは果樹園で収穫されたものがそのままダイレクトにやってくるのではない。こと品質にこだわるゼスプリのキウイフルーツは、生産から販売までいくつもの厳しいチェックを経てようやく市場に姿を現す。
第2回では「ゼスプリ・システム」と呼ばれるそのプロセスに着目し、高い品質を支え価値を生み出し続ける人々の営みにフォーカスした。
キウイは"ニュージーランドの象徴"として育てられてきた
世界が熱狂している某大会でサッカー強国オランダの代表と日本代表チームが引き分けた試合を見ながら、思い浮かべたことがある。「世界は神が創ったが、オランダはオランダ人が造った」という言葉だ。これは要するに、オランダ国土の多くはオランダ人による干拓で生まれた土地であることを意味するもの。もちろんジョークである。
翻って、今回のニュージーランド訪問では多くの場面で「ニュージーランドもニュージーランド人がつくり上げたもの」という感慨を深くした。ニュージーランドの土地自体はオランダのように人の手で造られたものではないにしても、ニュージーランドならではの魅力的な価値の数々は、ニュージーランドの人々の不断の努力によって築き上げ、維持されているものだと実感したのである。
キウイフルーツは、ニュージーランドの農産物輸出額ランキングで畜産物(乳製品・肉類)を除くとトップクラスに位置し、とりわけ果物にあっては常に1位の座に君臨している。つまりキウイはニュージーランド農業の顔であって、“ニュージーランドの象徴”という言い方をしてもあながち間違いではないはずだ。
そしてそのトップの座は、キウイが本来持っている魅力を、ニュージーランドの人々が日々の努力によってさらに高め、“より良いキウイフルーツ”を世界中に送り出そうと奮闘に奮闘を重ねているからこそ守られている。加えて、キウイの「カラダにいい・カラダによさそう」「おいしい」というイメージも、その健康価値をよりいっそう高めよう、もっともっとおいしくしようと汗を流すニュージーランドの人たちがいて、成り立っている。
そうした営みがキウイの価値を支えているのだと考えれば、キウイはまさに「ニュージーランド人がつくり上げてきた、THE NEW ZEALANDのシンボル的存在」と捉えてもいいのではないか。キウイの一大産地であるベイ・オブ・プレンティ(Bay of Plenty)地方で、グローワー(キウイ生産者)の果樹園に続いて訪れたいくつかの施設で目にした光景、耳にしたエピソードが、それを裏付けてくれると思う。
余談だけれど、ニュージーランド(New Zealand)の国名はオランダ南部ゼーラント地方のZeelandに“新しい”をつけたもの。オランダ人タスマンがヨーロッパ人として初めてニュージーランドへ到達したことに由来するわけだが、いずれにせよオランダとはけっして無縁ではない。ちなみにゼーラントは英語にすればSea Land、つまり“海の国”である。
厳しい基準とシステムがキウイの魅力をさらに高める
キウイを世に広く提供するゼスプリにおいては、前回紹介した果樹園の生産者がとにかく質の高いキウイを栽培しようと力を入れているだけでなく、果樹園で収穫されたキウイが運ばれる選果場(パックハウス)においても厳格な品質検査が施される。今回は果樹園と同じタウランガ郊外カティカティ(Katikati)地区にあるパックハウス「アパタ(Apata)」を訪れた。
施設に入ると、まずはGMのトーマス・ワッツさんが「ゼスプリ・システム」の概要と、このパックハウスで行われる作業について詳しく説明してくれた。
「ゼスプリ(のシステム)は、3つの要素で構成されています。1つ目がゼスプリという会社、2つ目がサプライヤー、3つ目がグローワーで、パックハウスはサプライヤーに含まれています。そしてパックハウスの仕事は、キウイのケアと品質管理です」
ゼスプリ・システムでは、キウイの生産から出荷までが大きく5つの工程に分かれている。「栽培」「収穫」「パッキング」「貯蔵」「出荷」の5つだ(これらには残留農薬検査やトレーサビリティの綿密な管理といった要素も含まれている)。果樹園でゼスプリの基準に沿って一定程度熟成し、収穫されたキウイはアパタのようなパックハウスに運ばれる(前回に紹介したツイン・カウリ果樹園のようにパックハウスを併設している農園も存在する)。
アパタは同所を含めて2つのパックハウスを所有し、グローワーからビンと呼ばれる大きな木箱で、合わせて1日3000箱のキウイが毎日運ばれてくるとのこと。この数はパックハウスとしては規模が大きなほうで、現在260のグローワーと契約を結んでいるという。
「届いたキウイは、まず箱から出す作業から始まります。続いて、ゼスプリの厳しい基準に応じてカメラやセンサーによる自動チェックと作業者による人力でのチェックを行い、品種ごと箱にパッキングされていきます。パッキングされた箱はロボットで積み重ね、冷蔵庫で保管して、出荷を待ちます」
人によるチェックは、形やサイズ、表面のキズなどを一つひとつ見分けて選別する。ちなみに出荷および輸出までのプロセスでは追熟は行わず、シッピングされて到着した各国の倉庫で、販売時期に合わせて適宜熟成を行い、最も“おいしい”時期に店頭に並ぶということだ。
それぞれの箱にはバーコードが貼付され、どの果樹園から来てどの国へ出ていくのか、どのパックハウスでチェックと包装を受けどこで保管されているのか、トレーサビリティもしっかり管理されている。こうした仕組みもゼスプリのキウイの信頼性を示しているといえるだろう。ちなみに日本には、最高級の「Class1」のキウイが輸出されているそうだ。
キウイの甘さも収穫前段階で綿密にチェックされる
さて、キウイが「おいしい」というイメージを持つ人は多いと思われるが、ではキウイが「甘い」というイメージを抱いている人はどれくらいいるだろうか。
前回、妻が急きょ入院した関係で、近所のスーパーで買ったキウイをしばらく放置した結果、とにかく甘いフルーツに変身していたという話を紹介した。これは、要は意図せず長い間寝かし、自然熟成がより進んだからなのだが、たとえそうだとしてもキウイ本来に甘くなる“素質”がなければそこまで甘くなることはあり得ない。
実際のところ、キウイは酸っぱさが比較的前面に出る果物であり、その酸っぱさとさわやかな甘みのコンビネーションが好きという人も多いものの(私自身もそちら派)、酸っぱさを削ぎ落とせばきわめて高い糖度を有した“甘い果物”である。妻の場合は酸味がそれほど得意でなく、とにかく甘い果物が好きなタイプなので、一定期間寝かした結果のとにかく甘いキウイの大ファンになったという顛末だ。
そして、キウイがポテンシャルとして持つその甘さは、ゼスプリの場合、果樹園で栽培している段階から糖度を綿密に検査する営みが担保している。タウランガにある、ゼスプリのキウイの高い品質を管理するため甘さをはじめとした成熟度を調べる「ヒル・ラボラトリーズ(Hill Laboratories)」。「ここはファミリービジネスとして経営しています」と、ブランチマネージャーのブラッド・スティーブンスさんが話し始めた。
「このブランチは5年前に設立されました。グローワーの果樹園に派遣したスタッフがサンプルを持ち帰り、ここでは主に熟成のチェックを行います。1日に250から300袋、シーズン全体では約2万袋のキウイを検査しています」
熟成のチェックとは、キウイの糖度や酸っぱさ、色、実の入り具合などを中心に検査する工程である。「検査の時点ですでに熟成しているかどうかではなく、消費者のもとに届いた時点できちんと熟成されたものになる、という視点でチェックします」とスティーブンスさん。もちろんそれ以外に大きさや重量、実の硬度などのチェックも行われる。硬度は出荷時期を判断するために計測するとのことだ。
サンプルは、果樹の列を縦・横に移動する、果樹園内をジグザグに動くという2つのパターンでアトランダムに採取する。ピッキングを行うスタッフはGPSを備えており、どのスタッフがどの果樹園で採取したかなどもきちんと記録している。また各サンプルにもバーコードが貼られ、トレーサビリティ管理も徹底している。
ゼスプリキウイはニュージーランド国内7拠点の第三者機関の検査施設で、収穫前の成熟度をチェックしており、ヒル・ラボラトリーズは中でも最も大きな施設だそうだ。ちなみに、ヒル・ラボラトリーズのような検査機関では、収穫前の成熟度検査に加え、土壌分析や残留農薬分析なども実施しており、厳しい品質・安全基準に基づいて検査が行われている。これもまさに、ニュージーランドのシンボルの価値を守り育てるため、ニュージーランドの人たちが念を入れ、徹底的に取り組んでいる姿を表すプロセスだといえるだろう。
未来のキウイを生み出す研究開発の最前線
ゼスプリでは品種改良と新種の開発を進め、よりおいしく、カラダも喜ぶキウイを世に送り出してきた。それのみにとどまらず、さらにおいしく、カラダもさらに喜ぶキウイを生み出そうと日々取り組んでいる人たちもいる。
ベイ・オブ・プレンティ地方の中でもキウイの街として知られるテプケ(Te Puke)。その郊外にある「キウイフルーツブリーディングセンター(KBC)」は、2021年にゼスプリとニュージーランド国営研究機関の合同出資で設立された施設で、新たな品種の研究開発に日夜勤しんでいる。コミュニケーションスペシャリストのサラ・ヒッキーさんと科学者のアラン・シール博士が、新たなキウイの開発について詳しく教えてくれた。
まずサラさんは「世界で最も魅力的で、健康的なフルーツを通じて、より良い未来を届ける」というビジョンと、「より多く、より良く、より速く」キウイを届けるという“私たちの原点”、さらに「新規の品種ソリューションを提供することで、消費者、生産者、そして世界のサプライチェーンに変化をもたらすこと」という“私たちの使命”を紹介。
そのうえで、新品種の開発にあたり重視することとして、消費者については「味」「食感」「みずみずしさ」「外観」「栄養」「食べ頃の期間」、栽培者に関しては「収量」「大きさ」「害虫や病害」「栽培管理」「サステナビリティ」、サプライチェーンに対しては「貯蔵期間」「日持ち期間」「果実ロス」「販売期間」「市場アクセス」といった要素を挙げた。
これらをベースに研究を進めていくわけだが、新品種開発はまさに科学である。同センターでも最先端の遺伝学・ゲノミクスや植物病理学、昆虫学、化学などの知見をもとに、新たな品種の開発や品種改良に取り組んでいる。消費者が甘さを感じる要素についても科学的分析を大切にし、長い時間をかけ交配やテストを繰り返して、「ゼスプリ・サンゴールドキウイ」「ゼスプリ・ルビーレッド」に次ぐ品種の開発を目指している。
「毎年約3万本の苗木を植え、何年にもわたる選抜を繰り返して次世代品種を開発しています。」と、これまで約40年にわたり研究を続けているアランさん。
1つの品種候補につき、植えてから果実ができるまでの2年、その果実に関してさまざまなデータを収集する3年と、5年計画で取り組む壮大なチャレンジだ。その5年を経て「これは」というものをゼスプリに送り、チェックを受ける。
とはいえそこからゼスプリが商品とする新たな品種へと順調に育っていくとは限らず、実際、「ゼスプリ・ルビーレッド」の次なる品種についてはいまでも試行錯誤が続けられている。
「過去20年から25年をかけ研究を続けてきた品種があるのですが、それが今後もしかしたら花咲くかもしれません」とアランさん。「ゼスプリから待望の新品種登場!」のニュースが一日でも早く聞けることを期待したい。
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キウイにはやはり「カラダにいい」というイメージが強く。消費者の期待も高い。KBCでの話にも「栄養」という要素が示されていたように、ゼスプリとしても健康価値にはとりわけ注力しているように見える。
キウイの健康価値について言うなら、妻が入院していた半月ほどの間、病院食としてサンゴールドキウイが5回も出たとのこと。病院食だから栄養士が緻密に検討し、気に入ってメニューに入れていることは間違いない。つまりキウイの健康価値は、病院で出す果物としても適しているという認識が広がっているわけだ。
では、実際にキウイは健康に対してどういった価値を持っているのだろう。第3回はさまざまな研究結果から、キウイの健康価値をクローズアップしてみたい。









