住宅ローンは、自分たちに最適な借り入れ方法を熟慮することが大切ですが、借り入れ後の管理も重要です。とくに変動金利で借り入れた場合は、金利の動向チェックや金利上昇リスクへの対策といった日々の管理が重要となります。

バランスを考えた日々の管理

日々の管理とは、具体的には預貯金をどう配分するかを日々考えていくことです。ローン返済の負担を減らすことを一番に考えがちですが、いざというときの現金を残しておくことも必要ですし、老後の生活資金の準備もしておかなければなりません。下図のように、自分たちに最適なバランスを考えることが重要なのです。

繰り上げ返済計画

返済期間は、何かあったときのために少し長めに設定することをお勧めしています。そうすると毎月の返済額は少なくなります。その場合は、本来返せる金額との差額はプールして、繰り上げ返済を行うことが必須です。必ず、60歳の一次定年までに完済するように繰り上げ返済を計画してください。

預貯金

余力が生まれても、それを全て繰り上げ返済に回せば良いとは限りません。何かあったときのための手持ち現金は必要です。

投資

教育資金や、老後の生活資金のための投資や貯蓄も必要です。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった非課税の積立制度もありますので活用してみてください。

繰り上げ返済の管理

変動金利で借り入れている場合には、金利上昇を見越した管理も必要です。下記の表は、エクセルを利用して繰り上げ返済のタイミングを検討するものです。3,500万円を1%の変動金利、30年返済での借り入れとしています。

  • 住宅ローン返済シミュレーション

できれば金利3%でも返せる返済計画がベストですが、表では固定金利2%で借り入れた場合の返済額の差額を5年間貯めて、繰り上げ返済をしています。5年後は金利2.5%と仮定、さらに5年後に3%の固定金利に変更しています。借り入れ規約上は金利が上昇しても直ちに返済額に影響しない仕組みとなっていますが、それは単に返済猶予でしかないので、ここでは正規の返済額で計算しています。

10年後の年間返済額は、当初の固定金利2%の155万円から167万円へと上昇し、総返済額も当初から固定金利にした場合よりも増えますが、金利が低かった変動金利のときの差額を繰り上げ返済することによって、比較的少ない上昇に抑えられています。金利の上昇が少なければ、差額の繰り上げ返済によって、万一金利が上昇しても固定金利の総返済額よりは低く抑えられる可能性もあります。

大切なことは、変動金利で借り入れても、少なくともその時点の固定金利で借り入れた場合の返済額でも可能な計画であることです。変動金利の低い金利でしか返済できない場合は、計画を見直して借入額を少なくして固定金利で借り入れることをお勧めします。

ライフプランニングシートを活用

下図は、ライフプランニングシート(生涯収支表)のサンプルです。「ファイナンシャルプランニングは、ライフプランニングシートに始まり、ライフプランニングシートで終わる」と言われているくらい重要視されています。

  • ライフプランニングシート(生涯収支表)

私がFPの資格を取って間もなく、仲間たちとモデルケースを作ってみたのですが、少しの見直しや改善で、将来の余力が劇的に変化することに本当に驚きました。少ない額の見直しでも、長い年数の間に大きな変化となるのです。だから、見直しは早い方がそれだけ効果も大きくなりますし、毎年見直せばその都度修正もできます。お金の配分を色々と変えてみて、どれがベストかも判断できます。

住宅ローンは大きな借金には違いありませんが、将来を見据えて上手に借り入れれば、住まいは大きな資産として残ります。無理のない、自分たちのライフスタイルに適した住宅ローンを考えてみましょう。そして、日々きちんと管理していくことが、安心して返済していけることにつながります。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。