次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第73回は「グルメなスプレッド」。

  • パンやクラッカーに塗るだけ!簡単・便利なスプレッドがグルメに進化

「グルメなスプレッド」とは?

スプレッドとは、パンやクラッカーなどに塗って食べるものの総称。バター、マーガリン、ジャム、クリームなどさまざまな種類があり、塩気のあるもの、スイーツのように甘いものまで幅広い。各メーカーがこだわりの製法で作っているため、トーストに塗るだけで、おいしい食事やデザートになる時短&便利な商品だ。

そのスプレッドが、近年さらにグルメな進化を遂げている。本格的な料理の味わいを再現したものや、パンやクラッカーに塗るだけでなく他の料理へのアレンジも推奨し、メーカーがオリジナルレシピを紹介している商品も多数。コロナ禍により家庭内で食事をする機会が増えたこともあり、手間をかけずに自宅で凝った味わいの食事が楽しめるのが人気の理由といえそうだ。

「グルメなスプレッド」はどこで買える?

全国のスーパーや、輸入食品を販売する店舗、各メーカーのオンラインショップなどで購入できる。スーパーの場合、要冷蔵の商品は乳製品コーナー、常温保存可能なものはジャムやハチミツのコーナーに置いてあることが多い。

  • アヲハタ「ヴェルデ ガーリックシュリンプトーストスプレッド」(100g/346円)。右は調理例

ジャムやスプレッド類の製造・販売を行うアヲハタでは、パンに塗って焼くだけで簡単にグルメなトーストが楽しめる「ヴェルデ トーストスプレッド」シリーズを1999年から展開。「ガーリックトースト」「明太フランス風」など、普通の食事としてはもちろんお酒との相性も楽しめそうな味が特徴だ。

今年8月には新しく「ガーリックシュリンプ」が仲間入りしている。殻ごと砕いたエビを使用することで、ガーリックシュリンプならではの香ばしさや味わいを表現。コロナ禍で海外旅行や外食に行きづらい状況下で、「ガーリックシュリンプはハワイの名物料理で、外食メニューでも展開されている日本人にも馴染みのある料理。エビの香ばしさとガーリックの旨味がパンとの相性も良いことから、商品化に繋がりました」(アヲハタ マーケティング本部の向井妃奈さん)という。

また、発売の背景として「在宅勤務の増加や外出時にマスクを着用するようになったことで、にんにくを使った料理を気にせず食べられるようになった方が増えたこと」(向井さん)も理由の一つに挙げられるという。アヲハタのWEBサイトでは、本商品を使った「ブロッコリーとマッシュルームのアヒージョ ガーリックシュリンプ風味」などのアレンジレシピを紹介。ガツンときいたガーリックと香ばしいエビの風味で、“おうちバル”気分を楽しめそうだ。

  • マリンフード「私のフレンチトースト」(160g/340円)。下は調理例

手間のかかるフレンチトーストの味わいを再現したスプレッドが、マリンフードが販売する「私のフレンチトースト」だ。同社取締役研究部長の川村敏美さんは「家庭で本格的なフレンチトーストを作ろうとすると、食パンをアパレイユ(卵、牛乳、砂糖などを混ぜ合わせたもの)に一晩浸してからフライパンでじっくり焼き上げる、とかなりの手間暇がかかります。本格的なフレンチトーストをもっと簡単に作れないか、という発想から生まれた商品です」と、開発の経緯を話す。

原料には、実際のフレンチトーストで使用される卵黄や牛乳を配合し、本物の味の再現にこだわっている。商品パッケージには「食パンにたっぷり塗ってトースターで3分焼く」という手軽な作り方、「スプレッドをフライパンに落とし、食パンの両面をじっくり焼いて中まで味を浸透させる」という、より本物のフレンチトーストに近い味わいが楽しめる作り方を掲載。その日の気分や時間の有無に合わせて作り方が選べるのがうれしいポイントだ。

コロナ禍をきっかけに同社のスプレッドを知ったという人も多く、「私のフレンチトースト」の購入者からは「手間なしで、本物のフレンチトーストと遜色ない味が再現できた」「時短にもなるし、洗い物も出ない」といった声が届いており、とくに忙しい主婦や子育て世代に人気があるようだ。

「グルメなスプレッド」を食べてみた

旅行に行く機会が減って、やはり恋しくなるのはご当地グルメ。というわけで、今年9月に発売された遠藤製餡のグルメなスプレッド「ずんだ茶寮監修 ずんだあんバター」を食べてみた。ずんだとは、枝豆をつぶしてペースト状にしたもので、ずんだに甘みをつけて餅にからめた「ずんだ餅」は、宮城県仙台地方を代表する郷土料理の一つだ。本商品はずんだあんに国内産の無塩バターを配合し、バターの風味となめらかさがプラスされている。

同社市販用食品部の西崎充さんは、本商品の特に工夫した点として「ずんだの風味を残すこと」を挙げ、「あんこをパンに塗るというノウハウは以前より社内にありましたが、『ずんだ茶寮』様の味を再現する為に山形産の枝豆を使用するなど、味にとことんこだわって作りました」と話す。

本商品の監修を務めた「ずんだ茶寮」は、仙台を中心に展開するずんだスイーツの専門店。筆者は以前、仙台駅の店舗で同店の「ずんだ餅」「ずんだシェイク」を食べたことがあり、本商品にも大いに期待しながらパッケージを開けた。

  • 遠藤製餡「ずんだ茶寮監修 ずんだあんバター」(300g/518円)

ペースト自体は、緑茶を思わせるような深い緑色。むいた枝豆のような香りがほのかに感じられる。さっそくトースターで焼いた食パンに塗って、ひと口かじってみる。しっかりとした甘みがあり、バターが入っているのでトーストとのなじみも良い。時々感じる枝豆の粒の食感も、「これぞ、ずんだ!」と感じる良いアクセントになっている。パンを焼かずにそのまま塗っても合いそうだ。小豆を使ったあんこよりもややあっさりとした味わいで、老若男女がおいしく食べられそうだと感じた。

  • トーストに塗るのはもちろん、餅やだんごに合わせるのもおすすめ!

餅やアイス、パンケーキなどにのせて食べるのもおすすめとのことで、ここはやはり定番の「ずんだ餅」が食べたい! 白玉を自作し、ずんだあんバターをたっぷりかけて食べてみた。見た目も味も、まさにイメージ通りのずんだもちが完成! 白玉の表面がつるっとしているので、ずんだの粒感をより感じることができる。バターのコクが加わり、一つのデザートとして満足感の高い一品になった。

「餅や白玉にそのままのせていただくことで、ずんだ餅としてお楽しみいただけます。また、電子レンジなどで温めていただけますとよりおいしくお召し上がりいただけます」(西崎さん)とのことで、今度は温めて食べてみたい。容量300gとたっぷり入っているが、いろいろなアレンジを楽しんでいるうちにすぐ食べきってしまうかも。自宅近くのスーパーで購入できたので、好きなときに仙台名物の味を楽しめるうれしい商品だ。

食事として、デザートとして、手軽に楽しめる「グルメなスプレッド」。いつものバターやジャムとは趣向を変えたレパートリーのひとつとして、食卓に並べてみては?