FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。為替相場分析の専門家がFXの歴史を分かりやすく謎解きます。今回は「歴史的『踏み上げ相場』」について紹介します。

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「トランプ・ラリー」が起こる4カ月余り前、2016年6月24日にBrexit(英国のEU離脱)ショックが起こりました。英国の国民投票で、EUからの離脱が賛成多数となると、まさかの結果に、世界的にリスク回避の動きが急拡大しました。その中で、この日106円台で取引の始まった米ドル/円は、あれよあれよという間に100円を割れる暴落となったのです。

この日の米ドル/円最大下落幅は7円以上でした。ちなみに、2019年の米ドル/円は104~112円台で推移、一年間の最大値幅でもたった8円程度だったので、この「Brexitショック」の米ドル/円暴落がいかに凄い値動きだったかが、よくわかることでしょう。

生々しかった「暴落」の記憶

この頃、具体的には2015年から2016年前半にかけては、このような「××ショック」が何度か起こりました。2015年8月24日の「チャイナ・ショック」もその一つでしょう。

中国の突然の人民元切り下げがきっかけとなって、この8月24日のNYダウは一時1,000ドルの大暴落となりました。その中で、米ドル/円も122円から116円まで何と6円もの暴落となったのです。

  • 米ドル/円の週足チャート(2015年7月~2016年11月)(出所:マネックストレーダーFX)

    米ドル/円の週足チャート(2015年7月~2016年11月)(出所:マネックストレーダーFX)

それにしてもなぜこの時期、このような「ショック相場」が相次いだのか。それについて私は以前、景気減速局面では株の暴落が起こりやすいということ]を述べました。

2015年第3四半期から2016年第2四半期にかけて、米国の経済成長率は2%を下回る結果が続きました。そしてそれは、「世界一の産油国」となった米国にとって、原油相場の暴落が悪影響となった可能性が高かっただろうと私は考えました。

その観点でいえば、原油相場が2016年夏にかけて急上昇する中で、米景気も第3四半期の経済成長率が3%以上となるなど急回復していたわけですから、株は暴落しにくくなっていたでしょう。

ただし、人間の心理として、短期間に何度も株暴落、米ドル/円でも一日で6~7円も暴落する動きを見てくると、その生々しい暴落の印象はとても強いものとなるのではないでしょうか。

2016年の米大統領選挙において、当初共和党のドナルド・トランプはほとんど「泡沫候補」の扱いでした。それが、選挙が近付く中で、「まさか」共和党の候補者に選ばれたのです。

一方の選挙のライバル、民主党の大統領候補は、トランプと全く対照的な「本命中の本命」。かつて米大統領だったビル・クリントンの夫人、すなわち「ファースト・レディ」であり、クリントン大統領の現役時代から、大統領本人以上に「才人」と誉の高かった、「スーパー・ファースト・レディ」のヒラリー・クリントン。

「泡沫候補vs超本命候補」、そんな大統領選挙の戦いで「泡沫・トランプ」(失礼!!!)の勝利など「まさかのまさかのまさか」でした。しかし、だからこそ、そんな「まさかのトランプ勝利(まさトラ)」の可能性は、この間繰り返された生々しい暴落の記憶としては、「景気回復なんて気休めにもならない」といった思いにさせたとしても不思議はなかったかもしれません。

市場において、売り手が買い戻しに追い込まれることを「踏み上げ」といいます。生々しい暴落の記憶、ある意味で「暴落恐怖症」となっていた市場が、一斉に買い戻しに追い込まれたことで起こった歴史的「踏み上げ相場」、それこそが「トランプ・ラリー」の真実だったのではないでしょうか。

吉田恒(よしだひさし)

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
大手の投資情報ベンダーの編集長、社長などを歴任するとともに、著名な国際金融アナリストとしても活躍。2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊、2016年トランプ・ラリーなどマーケットの大相場予測をことごとく的中させ、話題となる。

機関投資家に対するアナリストレポートを通じた情報発信はもとより、近年は一般投資家および金融機関行員向けに、金融リテラシーの向上を図るべく、「解りやすく役に立つ」事をコンセプトに精力的に講演、教育活動を行なう。2011年からマネースクエアが主催する投資教育プロジェクト「マネースクエア アカデミア」の学長を務める。2019年11月より現職。書籍執筆、テレビ出演、講演等の実績も多数。マネックス証券