新型コロナウイルスの感染が世界中に広がり、国内でも満員電車を避けるために「テレワーク」の実施など、改めて多様な働き方への関心が高まっています。

また、一定の産業や中小企業を中心に大きな影響が出ており、事業継続が困難というケースも。少しでも早く収束に向かってほしいところです。

そんな中、改めて働き方について熟考している人も多いと思います。「会社が存続できなかったら」と不安を抱えている人もいるでしょう。一方、以前から「いつか転職したい」「独立したい」という希望を持っている人も多くいるでしょう。

この「働き方」と向き合うことは、金融リテラシーを高める絶好の機会と捉えることもできます。もし退職し、今後違う働き方となった場合、お金を取り巻く環境がどれほど変化すると思いますか?

  • 転職や起業により年金などのお金の仕組みが変わることを理解していますか?

転職、起業で付き合い方が変わる可能性のある制度

会社員を辞めた場合、大きく3つ選択肢が考えられます。

(1)別の会社に転職する
(2)起業し、自分でビジネスをする
(3)当面働かない

30代や40代の方は(3)を選ぶケースは限られると思いますので、(1)と(2)を中心に以下、お金を取り巻く環境変化について紹介します。

年金

会社員は原則厚生年金に加入しています。保険料は労使折半。つまり半分は会社が払ってくれています。もし独立し、自営業となった場合は国民年金となり、保険料は全額自分で払うこととなります。

また、保険料だけでなく、保障に違いがあることも知っていますか?

老後の年金額が「会社員は2階建ての制度で充実している」というのは有名な話ですが、万が一、現役時に亡くなった場合の「遺族年金」や障害者となった場合の「障害年金」も厚生年金に加入しているかどうかで大きく異なるのです。

健康保険

皆さんが持っている保険証についてです。

大手企業に勤めている場合は「健康保険組合」に加入している場合があります。組合独自に手厚い給付サービスなどがあるのが一般的です。転職先に組合が無い場合は、通常「協会けんぽ」と呼ばれる健康保険に加入することとなります。

また、自営業の場合は、国民健康保険になります。国民健康保険には「被扶養者」という概念がありません。つまり、養っている家族が多ければ多いほど、保険料が上がる仕組みになっています。よって、一定の年収のある会社員が退職し、国民健康保険に加入することになると、かなり保険料が上がることが想定されます。

そこで、退職前の健康保険制度をしばらく継続させる制度があります。それが「任意継続制度」です。退職日から20日以内に手続きする必要があります。保険料負担や保険給付内容がどれだけ違うのか?会社を辞める前に必ず確認しておきたいポイントです。

確定拠出年金

DCと呼ばれる確定拠出年金制度を導入している会社が増えています。退職した場合は転職した企業へ、それまでの掛け金を移すことができる場合もありますし、個人でiDeCoに加入し、そのiDeCoに今までの掛け金を移すことも可能です。

「よく分からないけど、毎月5,000円積み立てている」という人も少なくありません。ぜひ、制度自体の理解と、どのように積み立てや運用を行っているのか、しっかりと把握してください。

税金

退職した場合、退職金がもらえる場合も。この退職金も退職所得として課税されます。控除額が大きいため、税負担をしなくてよいというケースも多いのですが、手続き次第では税金が源泉徴収されている場合があります。その場合は確定申告で還付してもらえます。

また、A社を夏に退職し、すぐB社に転職したという場合は、その年はB社で年末調整をしてもらうことになります。その際に、退職したA社での源泉徴収票が必要となります。会社を辞める際にもらう各種書類はしっかりと保管しておきたいですね。

失業手当(求職者給付)

退職してからハローワークに出向き再就職先を決めるという人もいると思いますが、その際は、「失業手当」としておなじみの求職者給付をもらえる場合があります。ただし、自分から会社を辞めるといった場合(自己都合)は一定の待期期間や制限期間があるため、3カ月程度経過しなければ給付金をもらえません。

また、最大でも150日しか給付されません。では、1日あたりいくら給付されると思いますか? 当然今までもらっていた給与によって変わりますが、1日5,000円程度というケースも多いです。

このような制度をしっかり知らずに「失業手当があるし、しばらく大丈夫」と楽観的に退職してしまうと、大変なことになることも。

例えば、自己都合で失業給付をもらうためには原則、直近2年間で1年以上雇用保険に加入している必要があります。つまり、新卒1年目から2年目の社員では、失業給付を一切もらえないということも考えられます。

入社後すぐは、色々大変なこともあると思いますが、こういうこともしっかりと踏まえておいてください。

住宅ローン

転職して、お給料も増えたし、「夢だったマイホーム購入を検討しよう!」とハウスメーカーを訪ね、理想の家づくりに着手。でも、数か月後に住宅購入を断念することに。こういったことも考えられます。原因は住宅ローンの審査です。

各銀行は住宅ローン契約時の審査で2年や3年以上といった一定の勤続年数を条件にしているケースがほとんどです。よって、転職したばかりでは、現在の会社での勤続年数が短いために住宅ローンを組めない場合があるのです。

もちろん、既に住宅ローンを組んでいる人が、「より有利な住宅ローンがあるから、違う銀行の住宅ローンに借り換えをしよう」という場合も同じことが想定されます。「転職前に住宅ローンの契約をしておけば……」と転職してからでは遅いですよね。

いかがですか? 大きく6つ、働き方が変わることで影響が出るお金の話を取り上げました。

「お金の勉強をするために」と会社を辞める人はいないと思いますが、もし、転職や独立など働き方を考える機会があれば、ぜひ、今回紹介した制度を中心に、一度ゆっくり勉強してみてください。一生役立つ金融リテラシーを身に付けることができますよ。