金融リテラシーの1つとして「人生3大支出」について理解しておくことが求められています。計画的に準備をしておきたいですね。その3大支出は、住宅取得、教育、そして老後資金です。

教育費や老後資金はNISAやiDeCoといった税制優遇制度をきっかけに準備を始めた人も多いでしょう。ただ、住宅取得については、今年、急に良い物件を見つけて購入することになるかもしれませんし、今後5年、10年と購入しない人もいるでしょう。

数多く住宅取得相談に対応してきましたが、意外と計画的に購入する人は少なく、「今だ!」、「この物件だ!」と思い立ち、急に購入することになったという人の方が多い印象にあります。特に戸建て希望の場合は、理想的な土地と出会った時、それは唯一無二の存在となり、他にも検討している人がいるとなると、比較的短い期間で、思い切った決断に迫られることになります。

そんな時、ローンのこと、頭金や諸費用、減税措置のことなど、まさに金融リテラシーが試されることになるのです。

  • マイホーム購入に必要な金融リテラシーを備えていますか?

変動金利は政策金利に、固定金利は長期金利に連動する

2013年の春先、米国の金融政策の影響を受け、日本の「金利市場」も大きく上昇していました。TVなどでも「金利が上昇しています。住宅ローンを組んでいる人は大変なことに!?」といったトーンで数多く取り上げられていました。

そういった報道もあり、私も幾つか問い合わせに対応しましたが、その問い合わせをしてきた人の全員が「変動金利」で住宅ローンを組んでおり、今後の金利上昇を懸念してのものでした。

ただ、その時、変動金利は微動だに変動せず、全く影響はなかったのです。実は「金利市場」と表現しましたが、金利市場は大きく短期と長期の2パターンがあり、当時は「長期金利」が上昇していており、短期金利は全く変動していなかったのです。

ではここで、住宅ローンについて簡単に整理します。

「一定期間固定」など様々なタイプがありますが、大きく2つに分けると、将来金利が変動する可能性がある「変動金利」か、ずっと金利が変わらない「固定金利」に分かれます。通常、変動金利の方が固定金利よりも金利水準が低いのですが、将来の金利変動リスクを取ることになります。

先ほどの事例に戻りますと、「金利が上昇している」という局面で変動金利の水準が変わらなかった理由は、それぞれ「変動」と「固定」が「仕入れ先が違う」というのが分かりやすいかもしれません。

変動金利 日本の政策金利に連動。政策金利は日本銀行が方針などを定め、アナウンスされる。
固定金利 日本の長期金利に連動。長期金利は10年もの国債の利回り。

「ゼロ金利」、「マイナス金利」という表現を聞いたことがある人は多いと思います。これは日本銀行が日本の景気動向を踏まえ、金利をコントロールしており、景気が悪い時は金利を下げる傾向にあります。そして日本はデフレなどに長く苦しんでおり、いわばほぼ金利がゼロの水準に設定されているのです。そして「変動金利」はこういった政策金利に連動します。

一方、固定金利は日本の10年もの国債の利回りに連動します。そして10年物国債は金融機関などが日々取り引きをしており、国債の価格、そして利回りは日々変動します。

もうお分かりだと思いますが、先ほどの2013年の時の金利上昇は日々取り引きされる10年物国債が上昇しており、その結果、住宅ローンも固定金利が上昇傾向にあっただけで、日本銀行は引き続きゼロ金利を貫くというスタンスであったため、変動金利は微動だにしなかったのです。

ただ、固定金利を既に組んでいる人は30年や35年といったローン期間、一切変動しませんので、安心です。こういう局面で一番影響があるのは、「これから固定金利を組もうとしている人」となります。

先ほど「仕入れ先」という表現を使いましたが、「変動」と「固定」を「キャベツ」と「レタス」という野菜に例えます。長雨や日照量などで野菜の価格は上下し、時にレタスが高騰する時があります。

一方、キャベツは影響が少なく値段は全く変わっていないということもありますよね。「レタス」が高騰しているのに、「キャベツ」を買おうとしている人が大騒ぎをしていたのが先ほどの2013年の状況と言えます。

その原因の1つとして、「金利が上昇しています。」と「変動」と「固定」の違いにまで踏み込まないケースが多いからです。そこまで触れるとかなり複雑になるためです。いうなれば「野菜が高騰している。」といった表現で一括りにされるのです。

もちろん、レタスの高騰をきっかけにキャベツの価格も上昇することがあるように、金利もそれぞれ相互的な影響がないわけではありませんが、自分が検討しているローンのタイプが、どのように決まるのか? ということは知っておく必要があります。

金利の変動要因や見直し方法にも興味関心を

住宅ローンの相談で最も多いのが、「変動と固定どちらにすべきか」というものです。言葉のイメージから「変動はこわい」と考える人も多いのですが、変動は日本銀行が今までどういった金融政策を取ってきたのか? これからどういう方針だと日銀総裁が記者会見で話をしているか? といったことをチェックしておくことで、ある程度今後の動向を予想することができます。

日本はずっと低金利が続いていますので、10年ほど前に変動金利でローンを組んだ人は、今に至るまで一切変動していないという現状にあります。

一方、固定金利は毎月のように変わる可能性があります。長期金利は日々、日本の将来性、経済動向、財政問題など様々な要因で変動します。よって、1月に住宅購入を決意しても、住宅の引き渡しまで数カ月かかり、融資実行が6月になるということも考えられます。

その際、固定金利を選ぶ人は1月から6月まで日本の長期金利がどのように推移するか注視する必要があります。変動金利を検討している人は日銀総裁の定期的な記者会見などに注目してください。

このようにローン1つ選ぶだけでも、かなり金融の知識が必要だということが分かりますよね。そして変動から固定に変えることができるのか? といったその後についても気になると思います。変動が上昇しはじめたタイミングで固定に切り替えるということも可能です。

ただし、その時、固定金利も上がっているかもしれません。ローンを組んだ後も、時々、金融市場をチェックすることが上手な家計管理にもつながるのです。

ぜひ人生で最も大きな買い物と言われる住宅購入と向き合う際に、一度金利の仕組みについて整理してみてください。

筆者プロフィール: 内山貴博

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。