ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。

本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

今回のテーマは、「仮想通貨には投機の要素も必要?」。

  • 仮想通貨には投機の要素も必要?

「仮想通貨長者の誕生」がもっとも注目されやすいニュース

第60回の記事でお伝えしたように、仮想通貨の価値を上げるのに最も有効なのは、「価値が上がった」という事実です。

同様に、「仮想通貨長者が生まれた」というニュースは注目度が高く、仮想通貨への投資を検討する人や実際に投資する人を増やすことに貢献します。

儲かる/儲からないという話は下世話に感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、つまり、仮想通貨の普及には「投機の要素が不可欠」ということになりますね。

仮想通貨の価値が上がる理由はシンプルです。

売る人よりも、買う人と保有し続ける人が多ければ、その仮想通貨の価値は上昇します。 ビジョンや機能が魅力的な仮想通貨を見つけたら、「なくなっても仕方ない」と思える範囲の余力資金で自分も投資し、魅力を人に伝達すること。

そんな伝達する人、いわゆるエバンジェリスト(伝道師)を増やすことができれば、その仮想通貨の価値もやがては上昇します。

ようは、いかにその仮想通貨のファンをつくるかということなのですが、本質はいつもシンプルなのに、ついつい複雑に捉えたり考えたりしてしまいがちです。

投資と投機に善悪はない

「投機」という言葉を使うと、ネガティブなイメージを持つ人もいらっしゃるかもしれません。

「投資は善で、投機は悪」という考え方は、日本では案外一般的です。

「投機はお金を転がすだけのマネーゲーム」と言われることもあります。

しかし、投資も投機も、利益を得ることを目指している点では一緒ですよね。

利益の源泉が、投資の場合は「価値の向上」で、投機の場合は「価格の変動」であるという違いだけです。

投資と投機に善悪はないですし、貴賤もないと思います。

「私は投資家であって、投機家ではない」

とおっしゃる方もいますが、「儲けたい」という本心や野心を隠しているだけのようにも感じてしまいます。

私は長期保有するスタンスですので、「価値の向上」に重きを置くという意味では投資寄りの立場と言えるかもしれません。

ずっと保有しているだけで、仮想通貨を売却することもないのですが、「売りたいときに売れる」「いつでも現金化できる」と思えるのは、投機家の方々がいるおかげです。仮想通貨の流動性・換金性が高いのは、投機家の存在があるからこそ。

投資家と投機家、どちらも市場に必要な役割です。

ポジティブ・ネガティブどちらのニュースも普及につながる

「ポジティブなニュースが多い方が、仮想通貨の普及につながりやすい」という面も確かにありますが、実はネガティブなニュースでも普及につながります。

例えば、2014年のマウントゴックス事件※は、仮想通貨取引所のハッキングによるビットコインの大量流出や横領が問題になり、仮想通貨業界に衝撃を与えました。

極めてネガティブなニュースだったわけですが、この事件によってビットコインの存在を知った人も多くいました。そして、ビットコインに投資する人や保有する人(ホルダー)が増え、ビットコインの価値は徐々に上昇していきます。

過去の値動きを見ていると、仮想通貨市場に生息する人たちは、基本的にポジティブなんじゃないかと感じます。最近では、著名人の発言ひとつで仮想通貨の価格が上下することすらありますので。

些細なことでも仮想通貨の価値は反応するし、そこに対してポジティブに挑んでいく。

そういった姿勢の方が、利益を得やすいのではないでしょうか。

これは、仮想通貨市場に限らず、株式市場でも同じだと思います。

市場は神聖なものではないですし、綺麗事を言っても利益を得られるわけではありません。

「お金を回す素敵な装置」くらいに思って、売ったり買ったりするのが良いでしょうね。利益を出すことだけが目的になっても、面白くないですしね。

次回は、「いまでも案外多い? 仮想通貨に関する3つの勘違い」についてご紹介します。

※仮想通貨取引所「マウントゴックス」がハッカー被害に遭い、75万BTCを超えるビットコインのほか、購入用の預かり金28億円が消失した事件

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。