ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

投資的・投機的な面がフィーチャーされやすい仮想通貨ですが、資産運用・資産保全としての観点だけでなく、「成長業界である仮想通貨関連職やブロックチェーン関連職へのキャリアチェンジ」「フィンテックやAIと同様に社会へインパクトを与える仮想通貨&ブロックチェーン」など、仮想通貨を取り巻く多岐にわたるトピックを取り上げていきます。

「仮想通貨」って一体なんなの?

ひと言で「仮想通貨」を表現すると、「実物のないデジタルなお金」であると言い換えることができます。

仮想通貨は、円やドルのように紙幣や硬貨などの実物は存在しません。データで管理されているデジタルなお金であり、オンラインやオフラインで保管することができるものです。また、決済手段(支払い手段)や送金手段として利用することも可能です。日本政府は2016年3月4日に、「仮想通貨は貨幣の機能を持つ」という声明を発表しました。貨幣の機能の定義にはさまざまな考え方がありますが、私は主に「決済」「送金」「利殖・貯蓄」の3つに着目しています。

・決済…支払い機能のこと。物やサービスの購入に使うことができます。
・送金…振込や海外送金に代わる機能のこと。家族や友人、取引先に送ることができます。
・利殖・貯蓄…保管や資産運用の機能のこと。運用次第で売却益などを得ることができます。

このように、一般的なお金でできることと仮想通貨でできることは、実はほぼ一緒だと言えます。紙幣などの実物はありませんが、スマートフォンでも管理できますので、慣れてくればお金と同じ感覚で使ったりすることができるでしょう。

私も初めて仮想通貨を持ったときは、クレジットカードや電子マネー、オンライン口座を初めて持ったときと似た感覚でした。送金などに仮想通貨を使っても「あれ? これだけで良いのかな」と少し不安になったものです。使ってみると、案外あっけないんですよね。

仮想通貨と暗号通貨ってなにが違うの?

次に、「仮想通貨」と「暗号通貨」の違いについてです。結論から言えば、この2つは同じ意味の言葉です。

「仮想通貨」という言葉は、主に日本で使われています。「実態のないバーチャルなお金」というニュアンスから名づけられているのでしょう。一方、「暗号通貨」という言葉は海外で一般的に使われています。「Crypto Currency(クリプトカレンシー)」と表記され、Cryptoは暗号、Currencyは通貨を意味します。暗号技術を用いていることが由来となっています。

仮想通貨と暗号通貨、どちらの呼び方が正しいということはありません。日本では仮想通貨という呼び方が定着しつつありますが、「バーチャルコイン」「電子通貨」「電子コイン」「次世代通貨」などのさまざまな呼び名があり、数年後にはまったく違う呼び方で定着しているかもしれませんね。

仮想通貨元年ってなんだったの?

「日本における仮想通貨の認知度が高まった年」として、2017年は「仮想通貨元年」と呼ばれています。

元年といっても、仮想通貨が生まれた年というわけではありません。仮想通貨の代表格である「ビットコイン」は、2008年に発表されたサトシ・ナカモト氏の論文をきっかけに生まれました。誕生当初は、一部の暗号技術専門家やIT専門家にしか知られていませんでしたが、徐々に世界中で認知度が上がり、2017年は特に大きく認知度を上げた一年となりました。

2018年も終わりに近づき、すでに仮想通貨ブームは去ったかのように感じている方も多いのではないでしょうか。2018年に入り早々に発覚した「コインチェック不正流出事件」や、同年9月に発生した「ザイフ不正流出事件」など、仮想通貨取引所で起こるハッキング事件も度々報道されています。ネガティブなニュースが目立つことから、「仮想通貨って、とりあえず危なそう……」と感じている方も少なくないでしょう。

しかし、仮想通貨の普及は世界中で着実に進んでおり、日本でも「キャッシュレス化」や「フィンテック」などのキーワードとともに仮想通貨は話題に挙げられています。

今や知らない人はいない「iPhone」ですが、初代がアメリカで発売されたのは2007年6月29日のことです。それからわずか5年の間に、iPhoneは世界中で普及しました。今あなたがこの記事を読んでいる端末もiPhoneかもしれませんね。これと同じような現象が、仮想通貨で起こることは十分考えられます。仮想通貨を持つこと、利用することが一般的になる。そんな未来はそう遠くないでしょう。

次回は、ネガティブニュースの筆頭である「仮想通貨取引所ハッキング事件」について取り上げたいと思います。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。