ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

  • ビットコインのスケーラビリティ問題とハードフォークってなんのこと?

「スケーラビリティ問題」ってなに?

以前のコラムでお伝えした「取引所のハッキング事件」と同様、仮想通貨の問題としてよく取り上げられるのが「スケーラビリティ問題」です。スケーラビリティ問題をひと言で表すと、「送金スピードに遅れが生じ、手数料が高くなる状態が引き起こされてしまう」ということです。スケーラビリティとは「拡張性」。つまり、処理の増大にどれだけ適応できるかを表す言葉です。

仮想通貨の代表格とも言えるビットコインは、2015年頃からスケーラビリティ問題を指摘されていました。世界中でビットコインの取引量が増えることで、処理速度が遅くなり、処理コストが上がります。結果、送金に時間がかかるようになり、送金手数料も上がってしまうというわけです。これでは、仮想通貨の特徴である「速くて安い送金手段」というメリットが薄れてしまいます。

取引が活発になった2017年には、「100円分のビットコインを送金するのに、手数料が1,500円だった。着金までに1週間かかった」という例もありました。これでは、送金や決済にはとてもじゃないですが使えないですよね。

「ハードフォーク」ってなに?

「ビットコイン分裂」という見出しを見たことのある人は多いのではないでしょうか。「ハードフォーク」とは、この分裂のことを指しています。仮想通貨のルール(プロトコル)を変える際に、これまでのルールを無視して新しいルールを適用し、旧ルールと新ルールの互換性がなくなることをハードフォークと言います。

ビットコインからハードフォーク(分裂)して誕生した仮想通貨もいくつかあります。
■ビットコインXT
■ビットコイン・アンリミテッド
■ビットコイン・クラシック
■ビットコイン・キャッシュ(ビットコインABC、ビットコインSV)
■ビットコイン・ゴールド
などがその一例です。何度も起こっているビットコインのハードフォーク問題ですが、その原因はルール変更の中でも「1ブロック(取引データを集めたもの)あたりのデータ許容上限を大きくするかどうか」という点にありました。データ許容上限を大きくすることで、遅く高い送金手段になってしまったビットコインのスケーラビリティ問題を解決しようと考えたのです。

ところが、何度も分裂をくり返すことでビットコインの信頼性は下がってしまいます。発行上限が2,100万BTC(BTC=ビットコインの通貨単位)と決まっているビットコインですが、「分裂することでビットコインの総数が増えているようなものだ」という指摘もあります。

発行上限が少ないということは、限定品のように人気が出れば価値が上昇するということです。価値上昇によって利益を得ようと考えている投資家からは、分裂の度に批判の声が出ています。しかし、スケーラビリティ問題が解決されればより実用的な仮想通貨が誕生する可能性もあるため、批判と同時に期待の声も高まっています。

ビットコインの問題を解決するべく世界中でさまざまな試みが

ビットコインが取引・送金の速度や手数料の高さなどの問題を解決できなかった原因は、特定の管理者・権限者がいないからであると考えられていました。特定の管理者がいないことはビットコインの大きな特徴ですが、それにはメリットとデメリットがあります。

メリットは、誰もが管理者であり権限者であるため、自由かつ平等に意見交換ができるという点です。ビットコイン創生期には、当初のプログラムから90%もの改良がなされたとも言われています。一方デメリットは、特定の管理者や権限者がいないため、改善するための統率が取れない点です。ビットコインの知名度が世界中で上がり、ビットコインのプログラムに対する多くの意見が飛び交うようになったことで、プログラムの改良がスムーズに行われなくなってしまいました。

ビットコインのスケーラビリティ問題を、ビットコインのプログラムを改良するだけで解決することは極めて困難でした。そこで、「もっと良い仮想通貨を新しくつくろう」という人や企業、チームが現れたのです。

こうして新しい仮想通貨が生まれ、新しい仮想通貨は「オルタナティブコイン(代替コイン)」略して「アルトコイン」と呼ばれるように。これが、ビットコイン以外の仮想通貨の総称になりました。ビットコイン・キャッシュ、リップル、イーサリアムなどの有名な仮想通貨も、アルトコインの一種です。

次回は、その新たに生まれた仮想通貨「アルトコイン」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。