「人生100年時代」と言われる今、20代からの資産形成は待ったなし。とはいえ「投資の目利き力、どうやって磨く?」と悩む人も多いはず。本連載では、20代から仮想通貨や海外不動産に挑戦し、いまはバリ島でデベロッパー事業、日本では経営戦略アドバイザーも務める中島宏明氏が、投資・資産運用の知識や体験談、そして業界の注目トピックを紹介します。
今回は、AIから「選ばれる存在」になるための条件について、株式会社LANY 代表取締役CEOの竹内渓太氏に伺いました。
株式会社LANY 代表取締役CEO 竹内 渓太氏/株式会社リクルートホールディングスにデジタルマーケティング職で新卒入社。3年間デジタルマーケティングに従事。大規模サイトのSEOを中心に、デジタル広告運用やBtoBマーケティングなど多種多様な業務を経験。その後、株式会社LANYを創業し、Webメディア・サービスサイト・データベース型サイトなど幅広いモデルのSEO改善をプレイヤーとしてサポート。現在もプレイヤーとして多くの企業のSEOコンサルティングに取り組んでいる。 X・YouTubeチャンネルで「SEOおたく」としても情報発信中。著書『強いSEO』『強いBtoBマーケティング』『強いLLMO』(エムディエヌコーポレーション)出版。
ネット検索は「リンクを探す」から「AIに相談する」へ
ChatGPTやGeminiの普及、Google検索におけるAI Overviews、AIモードの登場によって、検索行動そのものが変わり始めています。AI活用が当たり前になる時代、企業やメディアは、どのように見込み客から自社の存在や商品・サービス、コンテンツを発見してもらえばよいのでしょうか?
これまでのネット検索は、ユーザーがGoogleの検索窓などにキーワードを入力し、表示されたリンクを上から順にクリックする行為でした。しかし今は「そもそもGoogleを開かず、ChatGPTやGeminiに質問する」ケースが増えています。
株式会社LANY 代表取締役CEOの竹内渓太さんは、この変化を「人の検索行動も、プラットフォームの形も変わっている」と捉えています。従来は、テレビCMやSNSで商品を知り、Google検索で情報収集し、比較検討して購入するという流れが一般的でした。ところがAI時代には、商品やサービスを“発見する段階”と、購入前に“確認・比較検討する段階”の両方にAIが介在します。
たとえば「肌の乾燥に悩んでいる」とAIに相談すれば、AIが化粧水や美容液を提案する。さらに「その商品に悪い評判はないか」「A社とB社ならどちらがよいか」といった確認まで、AIとの対話の中で行われる。つまり企業は、検索結果で上位表示されるだけでなく、AIが候補を提示する場面、比較検討する場面の両方で“選ばれるブランド”にならなければならないということです。
LLMOは「上位表示」ではなく「推薦を勝ち取る」取り組み
そこで重要になるのが、LLMO(Large Language Model Optimization)です。竹内さんはLLMOを、AIが回答を生成する際に自社の情報を正しく反映させ、プロダクトやサービスを推奨してもらうための取り組みと説明します。SEOが「検索結果で上位表示されること」を目指すのに対して、LLMOは「AI回答の情報源に取り上げられ、AIに言及・推薦されること」を目指します。
両者の違いは、設計思想にあります。SEOでは「どのキーワードで上位表示を狙うか」が出発点です。一方、LLMOでは「誰が、何を、なぜ知りたくて、その質問をAIに投げるのか」というプロンプトや文脈が起点になります。コンテンツの役割も変わるということです。
SEOの記事は、人間に読んでもらう“目的地”であり、Webサイトへの“入口”でした。LLMOの記事は、AIに参照してもらい、回答の素材として使ってもらう“情報源”です。さらに対策範囲も、自社サイトだけでは完結しません。竹内さんによれば、AIは質問を受けると、事前学習データを参照するだけでなく、その場で複数の検索クエリを生成し、Google検索などを通じて情報を確認します。たとえば「おすすめの化粧水は」と聞かれれば、「化粧水 おすすめ」「化粧水 おすすめ 男性」「30代 化粧水」など複数のクエリを想定し、上位表示されている多数のページを参照して回答を生成しています。
そのため企業が対策すべき対象は、自社サイト、ブログ、noteだけではありません。Amazon、楽天などの通販サイト、比較メディア、ニュースメディア、レビューサイト、SNSなど、Web上の情報エコシステム全体で自社がどう表現されているかが問われます。LLMOは、単なるSEOの延長ではなく、ブランド情報の全体設計に近いと言えます。特定のキーワードで上位表示を狙うテクニックの話ではなく、企業の存在価値や、どんな顧客にどんな貢献を提供するのかという極めて本質的な話なのです。
ゼロクリック時代、自社サイトは「入口」から「AIへの学習材料」へ
AI検索が広がるほど、ユーザーは検索結果をクリックせず、AIの回答だけで情報収集を終えるようになります。いわゆる「ゼロクリック」時代です。竹内さんは、これまでWebページが担っていた「入口」としての機能が弱まり、今後は「AIに自社を学習させる材料」としての役割が強まると予測しています。
ここで重要なのは、誰が書いても同じような汎用的なナレッジ記事ではありません。「私たちはどのような会社で、誰に、何を、なぜ提供しているのか」が伝わるコンテンツです。AIに読み取られるためには、企業の実態、プロダクトの強み、導入実績、専門性、顧客に提供している価値を、Web上のテキストとして明確に示す必要があります。
書き方にも変化が起こります。竹内さんが挙げるのは、結論ファースト、質問と回答のセット、表やリストなどの構造化された情報です。AIはページ全体を丸ごと読むというより、ページ内の一部の文節やまとまりを拾い上げて回答に使っています。そのため、どの部分だけを切り出しても意味が通るように書くことが重要になるということ。これは、だらだらと読ませる文章よりも、論文やアカデミックライティングに近い構造です。
同時に、ハッタリや営業トークは通用しにくくなるでしょう。「この商品はすごい」と自社で主張するだけでは、AIにとって信頼できる根拠になりにくいからです。むしろ「導入実績が何社ある」「特定領域で何本の連載実績がある」「出版実績がある」といった、定量的で客観的なファクトが重要になります。AI時代のブランディングとは、イメージを装飾することではなく、事実を整え、正しく見える場所に置くことです。
媒体選びよりも、情報が届く構造化を
AI時代のコンテンツ戦略をめぐっては、「AIはnoteを好む」「noteをやるべきだ」という声もあります。しかし竹内さんは、「noteだからよい、ということではない」と冷静に分析します。
noteがAIに参照されやすいように見える理由は、note自体がAI向けに特殊な構造を持っているからではなく、UGCプラットフォームとしてページ数が多く、SEOで上位表示されるページが多いことにあるようです。AIが検索結果の上位ページを参照する以上、上位表示されやすいページが多いプラットフォームは、結果としてAIに拾われやすいというわけです。条件が同じであれば、アメブロ、Zenn、Qiita、その他のメディアでも同様の効果は起こり得るでしょう。つまり、重要なのは「どの媒体ならAIに好かれるか」ではなく、「AIが参照する情報源に、自社の正しい情報をどう配置するか」。自社サイトに公式情報を整備することも必要ですが、それだけでは不十分です。第三者メディアでの紹介、比較記事、レビュー、導入事例、SNS上の言及なども含め、AIが見に行く可能性のある場所に、矛盾のない情報を積み上げていく必要があります。
もちろん、SEOの基本が不要になるわけではありません。タイトルに重要なキーワードを入れる、検索意図に合う内容にする、必要十分な情報量を用意する、といった従来のベストプラクティスは引き続き重要です。そのうえで、「この記事を通じてAIに何を学習してほしいのか」という視点を加えることが、AI時代のコンテンツ制作には求められるのでしょう。
AIエージェント時代、企業サイトには“人より先にAIが来店する”
さらに先にあるのは、AIエージェント同士がやり取りする時代です。ユーザー側のAIエージェントが、その人の好み、課題、予算、過去の行動を学習し、「これがほしい」「この課題を解決したい」という一言をきっかけに、自動で検索、比較、提案を行う。企業側もAIエージェントを活用し、情報提供や接客を行うようになれば、Web上では“AIエージェント to AIエージェント”のやり取りが始まります。
「人が店舗に来る前に、AIエージェントがWeb上で先行来店する」イメージです。そうなれば、Webサイトの設計思想も変わります。これまでは人間が見やすいデザイン、ファーストビュー、動きのある表現など、ヒューマンファーストの設計が重視されてきました。しかし今後はAIに対して「自社は何者で、どんな商品を持ち、どのような価値を提供しているのか」が正確に伝わるAIファーストの情報設計が重要になるでしょう。
この変化は、マーケティングだけでなく採用にも及びます。求職者がAIに企業の評判を尋ねたとき、Web上に「ブラック傾向」「残業が多い」といった誤った情報や悪い評判だけが残っていれば、応募や内定承諾に影響する可能性があります。採用広報、人事制度、評価基準、社員インタビュー、福利厚生の発信まで、一貫性を持って整えることが、AI時代の採用ブランドにも直結します。
AIは、人よりも表面的な印象に左右されにくい。だからこそ、小手先のマーケティングハックや見栄えだけのブランディングは効きにくくなります。竹内さんは、これからの時代を「本当にいいプロダクトやサービスが、本当に必要な人に届く時代」と捉えています。検索リテラシーの高い人だけがよい商品にたどり着けるのではなく、AIが意図を汲み取り、最適な選択肢を提示してくれる。企業に求められるのは、そのときAIに正しく選ばれるだけの実態をつくり、Web上に正確な言葉で残していくことです。





