「人生100年時代」と言われる今、20代からの資産形成は待ったなし。とはいえ「投資の目利き力、どうやって磨く?」と悩む人も多いはず。本連載では、20代から仮想通貨や海外不動産に挑戦し、いまはバリ島でデベロッパー事業、日本では経営戦略アドバイザーも務める中島宏明氏が、投資・資産運用の知識や体験談、そして業界の注目トピックを紹介します。

今回は、投資家がつくったバイクチーム「TEAM-8A」の『旧車オーナー大図鑑』でプロジェクトマネージャーを務める姫さんにお話を伺いました。

  • TEAM-8A『旧車オーナー大図鑑』プロジェクトマネージャーの姫さん

    TEAM-8A『旧車オーナー大図鑑』プロジェクトマネージャーの姫さん

50万円だったバイクが300万円以上になるまで

――現在のバイク市場、特に価格の高騰ぶりをどのように見ていらっしゃいますか?

姫氏:正直に言うと、ここ数年の状況は以前を知る者からすると、にわかには信じがたい世界ですね。とにかくバイクの部品から本体まで、なにもかもが高くなりました。

私の愛車はホンダのCBX400Fなのですが、以前はカラーによって前後しますが新車で50万円ほどでした。中古車市場に目を向ければ、30万円も出せば十分に良い個体が買えた時代があったんです。それが今、どうなっているか。かつて30万円だったようなバイクが、今では300万円以上の物もありますし、フルレストアなものは600万円以上する車体もあります。

――20年という歳月で、価値が跳ね上がったということですね。

姫氏:そうなんです。20年ほどの間に、価格の桁が変わってしまいました。私はプロジェクトマネージャーとしてTEAM-8Aの『旧車オーナー大図鑑』に携わっていますが、そこに掲載されているのは本当に希少な車種ばかりです。

もちろん、今現在は「旧車」と呼ばれていない現行のバイクたちも、将来同じような道を辿るかもしれません。今の高騰を目の当たりにしていると、「まだ安かったあの頃に、もっとたくさん買って、そのまま持っておけばよかった」と、つい悔やんでしまうこともありますね(笑)

――「300万円」「600万円」という価格は、バイク好きにとって心理的な壁になっているのでしょうか?

姫氏:それはもちろん、非常に大きな壁です。買いたくても買えない値段になってしまったというのもありますが、もし手に入れたとしても、今度は「高すぎて怖くて乗れない」というジレンマが生まれます。本来、バイクは走らせてこそ。「用の美」のものですが、資産価値がこれほどまで高まると、万が一の事故や故障を恐れて、盆栽のように眺めるだけになってしまう方も少なくありません。

インフレ懸念と「実物資産」としての価値

――この「300万円」「600万円」という価格は、今がピーク(天井)なのでしょうか?

姫氏:それはだれにもわかりません。でも、私は「果たしてここが天井なのかな?」と疑問に思うこともあります。

今の世の中を見渡すと、為替の問題や、世界的なインフレ、物価上昇の波が押し寄せていますよね。さらに中東の有事によるエネルギーコストの高騰など、今後さらにインフレが加速する懸念材料は山ほどあります。そうした背景を考えると、今「300万円は高い」と言っているこの価格ですら、数年後には「あの時はまだ安かったんだな」と振り返る日が来るかもしれない。そう思わせるほどの勢いを感じています。

――実物資産への投資という観点から、バイクをゴールド(金)やアンティーク、アートのような「資産」として持つ動きについてはどう思われますか?

姫氏:面白い選択肢だと思います。なにより、自分の好きなものを所有する喜びがありますから。好きが高じて趣味と実益を兼ねられるというのは、実物資産ならではの魅力でしょうね。

一方で、実物資産ならではの「難しさ」もあります。実物資産は、株のように明確な指標が常に掲示されているわけではないので、本当の価値がわかりにくいです。

例えば、買取業者に査定を依頼したとき、相手が「この人は価値を知らないな」と踏めば、相場より安い見積もりを出してくることもあります。もしかしたら、みなさんのご実家などで、価値を知られずに眠っている旧車が置きっぱなしになっているかもしれません。それは非常にもったいないことです。

ホンモノ志向と奇跡的な縁が生んだ「世界に一本のマフラー」

――姫さんご自身も旧車オーナーとして苦労されている「部品」について教えてください。

姫氏:愛車であるホンダのCBX400Fは、とにかく部品が手に入らなくなりました。メーカーには「部品保有期間」というものがあって、それを過ぎてしまうともう純正部品は供給されません。

私はもともとホンモノ志向で、純正部品以外には全く興味がありませんでした。当時は、同じ部品がもう二度と買えなくなるなんて、肌身に染みてはわかっていなかったのかもしれません。今では、純正部品が枯渇したことで、オリジナルの部品やマフラーを製作する業者が増えました。昔は興味がなかったそれら社外パーツですら、今では高値が付いています。「あのとき、純正じゃなくても買っておけばよかった」と惜しいことをしたな、という経験も一度や二度ではありません。

――そんな中で、非常に特別なマフラーを制作中というエピソードを伺いました。

姫氏:はい、これは本当に不思議な縁なんです。かつて、あるバイク部品ショップのオーナーのSさんからお話をいただいたことがあったのですが、そのときはお断りしてしまったんですね。それから月日が流れ、Sさんの奥様がなんとインスタグラムで私と繋がったんです。奥様がSさんに私の投稿を見せたら、「あれ? この人は……」と気づいてくださって。お店自体はすでに閉店していたのですが、当時のマフラーの型をまだ持っていたんです。そこで図々しくも改めてお願いして、私のためにオリジナルで、世界に一本だけのマフラーを特別に制作してもらっています。年内には出来上がる予定です。思わぬ再会がマフラー制作につながってうれしいです。

お店は閉店したものの今でも人気があるブランドで、なんと今季から再出発に向けて、動き始めているそうです。それもまたうれしい展開ですね。

盗難の恐怖と、愛車と共に歩む「覚悟」

――資産価値が上がれば上がるほど、無視できないのが「盗難」の問題ですね。

姫氏:これは本当に深刻な問題です。最新の2025年の統計では、年間のバイク盗難認知件数は約1.4万件を超えています。計算すると、1日あたり毎日約40台ものバイクが、日本のどこかで盗まれているんです。

私のCBX400Fもそうですが、人気のあるバイクはとにかく狙われます。私も保険に入りたかったのですが、そもそも「盗難保険に入れない車種」という扱いなんです。リスクが高すぎて、保険会社も受けてくれない。

――実際に盗難被害に遭われたこともあるそうですね。

姫氏:あります。愛車を盗まれたときのショックといったら、言葉では言い表せません。でも、そこから這い上がって、自分でバラバラのパーツから組み上げて一台のバイクを作ったこともありました。それほどまでに、バイクという存在に執着していたんでしょうね(その車両も後に売却しましたが)。

今乗っているCBXは、実は私にとって7代目のバイクなんです。買って、売却して、それが利益になったこともありますし、逆に子どもが生まれたときに「これからは子育てに専念しよう」と決意して一度バイクを売ったこともありました。でも、結局その3ヶ月後にはまた新しいバイクを買っていました(笑)。それくらい、離れられない存在なんです。

旧車が持つ「用の美」と、これからの楽しみ方

――テレビドラマでも旧車が話題になりましたね。

姫氏:阿部サダヲさん主演の『不適切にもほどがある!』ですね。昭和のダメおやじが令和にタイムスリップするコメディで、当時の文化が面白おかしく描かれていました。その劇中に、私の愛車と同じ車種が登場したんです。

ただ、ドラマの中でそのバイクを蹴るシーンがあって……! それを見たときは、もうハラハラして生きた心地がしませんでした。「今の価値で考えたらなんてことを!」と、ついオーナー目線で見てしまいましたね。

旧車には「用の美」があると思っています。純正部品が手に入らなくても、今はいろいろな方法で維持することができます。しっかりとメンテナンスをすれば、古いバイクでも長く乗り続けることが可能です。

投資としての側面も確かにありますが、やはり根底にあるのは「好き」という気持ちです。情熱を持って向き合えば、それは単なるモノではなく、人生を豊かにしてくれる大切なパートナーになります。たとえ300万円、600万円という価格になっても、その価値に見合うだけの魅力が、旧車には詰まっていると信じています。