幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。第84回は 女優の小池栄子さんについて。

現在、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)に出演中の小池さん。タレント、ではないのです。女優の小池栄子さん。側から眺めているだけでも、潔い女性だと感じます。だって皆さん、想像がつきますか? 20年前はグラビアアイドルとして一世風靡をして、バラエティ番組で彼女の姿を見ない日はないほどの名司会者であり、バラドルと呼ばれていた日々を。人気をパッと切り替えて、次の道に向かう姿、もう武士ではないか。

主役は北条政子でも良かったのではないか

小池栄子

日曜の夜、日本の全家庭が熱狂している(と思われる)『鎌倉殿の13人』。ハイスピードで進むドラマのあらすじを少しだけ。

舞台は平安末期から鎌倉初期にかけて。北条時政の次男として誕生した北条義時(小栗旬)。源頼朝(大泉洋)を助けながら、勢力を拡大して、鎌倉幕府の実権を握った武士が今回の主役である。父の再婚、姉と前妻のある頼朝の結婚に……と日々、身内に振り回されて、そのたびに奔走する人のいい義時。見ていると同情してしまう部分も。いよいよ頼朝は平家との戦いのため、挙兵を決意する。そしてその傍らにはもちろん義時の姿あり。

三谷幸喜さんの脚本とはドラマティックとコミカルが、いい塩梅に配分されている。よって、本当に今回の大河ドラマは面白い。ドラマオタクとは言いつつも、終盤はあまりの長さと時代背景を調べながら観る難しさ(面倒さ)に、脱落することが多い。失敬。でも今回は朝ドラのごとく、ラストまで一緒に並走したくなるような雰囲気が序盤から漂ってくる。

この作品で小池さんが演じているのは源頼朝の妻・北条政子。この政子がキレッキレで最高。ドラマをリアルタイムで視聴できる時はSNSもチェックしながら見ていると、主役の義時を差し置いて、政子の人気が常にトレンド入りしているほど。

北条家にかくまった頼朝に一目惚れした政子、人目も気にせずに甲斐甲斐しく頼朝の世話を焼き、ついに妻の座をゲット。ただ夫には一男を儲けた前妻・八重(新垣結衣)の存在がある。この一人の男を巡る女の闘いが個人的には毎度、ドラマのハイライトだ。

話しても演じても小気味好いとは、もう女傑

「もし、佐殿とあの女がどうにかなるようなことがあったら。私、何をするのかわかりませんからね」

八重の住む館を見ながら、義時にこう告げる政子。笑顔を作りながらも、内心に憎悪をたぎらせていることがありありと分かるシーンは笑ってしまった。これは小池さんの演技における醍醐味だと思う。

印象に残っている作品を挙げるとすれば『世界一難しい恋』(日本テレビ系 2016年)の村沖舞子役。ホテルグループの社長の敏腕秘書でありながら、実は過去に不倫の恋に溺れて、勤めていた旅館を解雇されている。社長に冷静沈着且つ、ためになる恋のアドバイスをしていたのはその経験からだったのだと納得。舞子の過去について触れるシーンは僅かだったけれど、妙に納得をしてしまった。『母になる』(日本テレビ 2017年)では、偶然拾った男の子を7年間育てて、愛し、どうしても忘れることができなり、実母と戦っていた。少々、病んでいたようにも見えた。今回の政子役も含めて、我が身を忘れて誰かを盲目に愛する役をやらせたら小池さんは本当に素敵。ただバトったり、陰がある役ばかりではなく、『姉ちゃんの恋人』(フジテレビ系 2020年)の市原日南子役のように可愛らしい大人の片想いの表現もよく似合う。

これらの引き金になっているのは、実生活の結婚なのかと思いを巡らす。私が彼女のことを好きだなあと思ったのは、2007年の結婚会見。自分から交際を申し込んで、結婚が決まったことを「あ、やっと結婚してもらえる!」と言っていたのだ。こんなことを晴れの会見で言える女性(当時)タレントは早々いない。一般人の披露宴だって、夫からアタックされたことがフィーチャーされる。そしてその横で物静かに、含み笑いを見せながら鎮座する妻。この縮図のほうが出席者にも悔しいことに受け入れられやすい。でも定例を敢えて取り入れず、自分の愛をアピールする妻とは最高じゃないですか。あ、また最高と書いてしまった……ところで、今週放送の政子の愛情アピールとバトルを待つ。