上司に相談したが、あまり親身になってもらえなかった。アドバイスをもらったけれども、それはすでにやっていることだった。せっかく相談したのに残念な思いをした。あるいは期待した答えが返ってこなかった。そんな経験はありませんか。

良いアドバイスをもらうためには、情報を整理して相談相手にわかりやすく伝える必要があります。上司の方は、その情報から問題解決の糸口を見出したり、物事の進め方を決めるための判断材料としたりします。情報を整理してわかりやすく伝える手段として、ビジネスメールは効果的です。ここでは、ビジネスメールで良いアドバイスをもらうための相談の仕方について、ポイントをお伝えしていきます。

本題に入る前の第一歩が重要

まずは相談のためにメールを送ったということを、件名にしっかりと明記しましょう。それは相手のメールを読む姿勢を整え、お互いのスタンスを合わせるためです。日常の会話を思い浮かべてみてください。もしも友人から「ちょっと相談があるんだけど……」と切り出されたら、相手をじっと注視したり、身を乗り出したりするなど、普段とは聞く姿勢が変わってくるはずです。

例えば、イベントの集客について上司に相談するとします。まずは件名。

「〇〇イベントの集客について」
これでは連絡なのか相談なのかがわかりません。メールは手軽なコミュニケーション手段として、ちょっとした連絡にも利用されています。その特性上、手紙や文書と違って熟読されにくいという側面もあります。

「〇〇イベント集客についてのご相談」
何のためにメールを送ったのかがわかるだけで、読み手の受け取り方は変わってきます。

本文の書き出しにも注意が必要です。

「〇〇イベントの集客についてご相談がありメールいたしました。」
ビジネスでは結論から先に伝えるのが鉄則です。文章を書く際、伝えたい事柄にストーリー性を持たせようと、起承転結、あるいは時系列にまとめる方が多く見受けられます。しかしメールの場合もビジネスの鉄則に則り、本文の冒頭(要旨)で相談がありメールした旨を第一に伝えましょう。

具体的な情報開示で認識の統一を

親身になってもらえなかったと感じたときは、問題の大きさが伝わっていなかった可能性があります。問題の大きさは具体的に伝える必要があります。例えば「集客目標500人に対して、現状150人です」と数値を使って伝えるとわかりやすいでしょう。あるべき姿と現状とのギャップ、それが問題の大きさです。「集客がうまくいっていません」のように抽象的な表現だけでは問題を正しく認識できません。

あるべき姿に向けて、すでに実施した内容があれば、それも漏れなく伝えておく必要があります。「やるのが当たり前だから」という思い込みで情報を削除したり、あるいは指摘を恐れて曖昧な報告のみに終始したりするようなことがあってはいけません。実施した内容を箇条書きにするなど、具体的に伝えるべきです。それがないと、せっかくアドバイスをもらっても「すでに実施した内容であまり参考にならなかった」という残念な結果につながりかねません。

実施した結果やそこから見えてきた問題点があれば、それも伝えておくことによって、さらにアドバイスはしやすくなります。その情報があれば、実施したアクションに対する改善点や、次に取るべきアクション、あるいは他の施策についてもアドバイスが得られる可能性が高まります。

求めるだけではいけない

良いアドバイスをもらうためには、相手が考えやすい状況を作ることが大切です。第一歩を間違ってしまうと、その先、望むアクションをもらうことが難しくなります。まずは件名、要旨で相談があることを伝え、そのうえで以下の3点について情報を整理しましょう。

・あるべき姿と現状
・すでに実施したこと
・その結果と問題点、うまくいかなかった要因など

これらの情報を共有することで、お互いの認識が一致し、良いアドバイスをもたらすことにつながります。ときにはご自身の意見を付け加えてみるのもいいでしょう。相談も決して一方的に求めるものではなく、相互コミュニケーションなのです。

井上賢治

一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師
1974年生まれ。宮城県出身。大学卒業後、大手製紙メーカーグループの印刷会社に勤務。入社3年目で営業成績1位を獲得。翌年にはその経験を活かし、新たな印刷会社の立ち上げに参画。新規開拓において数多くの実績を残し、出版物の制作や大手企業のセールスプロモーションを手がける。その後、ヘッドハンティングにより移籍した会社では東京支社長に就任、20名の部下を統括する。テレアポや飛び込み訪問による営業スタイルを確立していたが、さらなる受注拡大の実現、そして組織全体の営業力強化、人材育成など、幅広い業務を担うなかでビジネスメールの有用性を実感。1通のメールがコミュニケーションを円滑にし、業績向上にも結びつくとの想いから、認定講師としての活動を開始。営業経験、管理職経験を活かした実践的なビジネスメールの指導を得意とする。

日本ビジネスメール協会

日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を中心に28冊出版(内2冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。2時間でビジネスメールを学ぶ、「ビジネスメールコミュニケーション講座」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。