朝、Aさんが出社してメールをチェックすると、昨晩のうちに取引先のBさんから問い合わせのメールがきていました。そこにはこう記されています。

「恐れ入りますが、明日の15時までにご回答いただけませんでしょうか。」

さて、Aさんはこのメールにいつ返信すべきでしょうか。

メールには「明日の15時までに」と書いてあるので、今日の15時まででしょう。そう考える方も多いと思います。しかし、もうワンランク上の対応を目指すために、おすすめする返信のタイミングは「読んだらすぐ」です。

リアクションがないことへの不安

確かに、問い合わせを受けたAさんの立場からすると、15時までに返信、回答することによって、その役目を全うしたことになります。一方、問い合わせをしたBさんの立場で考えてみるといかがでしょう。Bさんは「メールは読んでもらえただろうか」「間違いなく15時までに回答が得られるだろうか」と、不安な気持ちを抱えたまま、数時間を過ごすことになるかもしれません。

近年、ネット通販事業が大きく拡大しています。利用されたことのある方も多いと思います。ネット通販で商品の注文を完了させると、ほとんどのサイトで注文完了をお知らせするメールが届きます。たいていの場合は自動返信メールですので、何気なく目にしているだけかもしれません。しかし、この自動返信メールがなかったら、どうでしょう。きっと「注文できただろうか」と不安を感じるのではないでしょうか。

2020年東京オリンピック観戦チケットの抽選申し込みでは、膨大なアクセスが集中したことにより、申し込み完了のメール送信に数時間の遅れが発生しました。SNS上には「申し込みできていないかも……」という不安の声が出ていました。

インターネットを介したコミュニケーション手段では、相手からの返信(リアクション)があって、初めて不安が解消されるのです。それはビジネスメールにおいても全く一緒です。

早い回答よりも大切なこと

冒頭の話に戻りましょう。問い合わせはしたものの、希望通りに回答が得られるのか不安なBさん。そんなBさんの不安を解消するのが、「読んだらすぐ」の返信です。

〇〇のお問い合わせについて、確かに承りました。
本日15時までに、あらためてご回答申し上げます。

これだけで、Bさんは安心して15時まで待つことができます。

特に返信期限が設けられていない問い合わせでも同様です。まずは問い合わせを承った旨を返信すべきです。その際に、いつごろ回答できるのかも伝えておきましょう。問い合わせに対して、あらかじめ回答が明日になることを返信した上で翌日に回答するのと、何も言わないまま、ただ翌日に回答するのとでは、同じタイミングで回答をしているとしても、相手の評価はまったく違ってくる可能性があります。

多くの方がメールでの問い合わせに対して、回答を揃えた上で返信をしようと考えます。回答を揃えるためには、関係各所との調整や、上司への相談が必要など、時間がかかってしまうケースもあります。どれだけ最善を尽くし、正確に回答しても、相手からは対応が遅いと評価されてしまうこともあるかもしれません。まず大切なのは早いリアクションです。それこそが、相手からの信頼感につながるのです。

仕事に振り回されないために

業務効率化の観点からも、すぐに返信することは効果的です。冒頭のケースでは、何もリアクションがないことに不安を感じたBさんが、Aさんに確認の電話をするかもしれません。そうするとAさんは業務の手を止めて、その電話に対応する必要が出てきます。

期限が定められていない場合、予期せぬタイミングで催促を受けることも考えられます。催促されれば、お詫びをする必要もあるでしょう。それに対応するために、仕事を処理する順番を変える必要が生じるかもしれません。

返信メールに要する時間はせいぜい1~2分です。その1~2分が相手に安心感を与え、自身の業務進行を円滑にしてくれます。最近、仕事に振り回されていると感じる方にも、ぜひ実践していただきたい内容です。

井上賢治

一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師
1974年生まれ。宮城県出身。大学卒業後、大手製紙メーカーグループの印刷会社に勤務。入社3年目で営業成績1位を獲得。翌年にはその経験を活かし、新たな印刷会社の立ち上げに参画。新規開拓において数多くの実績を残し、出版物の制作や大手企業のセールスプロモーションを手がける。その後、ヘッドハンティングにより移籍した会社では東京支社長に就任、20名の部下を統括する。テレアポや飛び込み訪問による営業スタイルを確立していたが、さらなる受注拡大の実現、そして組織全体の営業力強化、人材育成など、幅広い業務を担うなかでビジネスメールの有用性を実感。1通のメールがコミュニケーションを円滑にし、業績向上にも結びつくとの想いから、認定講師としての活動を開始。営業経験、管理職経験を活かした実践的なビジネスメールの指導を得意とする。

日本ビジネスメール協会

日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を中心に28冊出版(内2冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。2時間でビジネスメールを学ぶ、「ビジネスメールコミュニケーション講座」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。