シリーズ序盤はそのような救命救急だけでなく、進藤と楓の魅力と関係性も作品をけん引していた。

進藤は冷静沈着で一流の技術を持つが、冷淡で信念を曲げないやっかいな男。一方、楓は患者から治療拒否され、けいれんした患者に動揺するなど未熟な研修医だが、初日から救命医にふさわしいメンタルの強さを見せていた。

指導医となった進藤から「お前、俺が見た研修医の中で最低だ。失格だ」と言われても「指導医なのに何も教えてくれなかったじゃないですか。それで医者失格なんて言われたくありません」と言い返す楓。

『救命病棟24時』は進藤の厳しい指導に食い下がることで徐々にたくましくなり、師弟関係が築かれていく楓の成長物語でもあった。一方、進藤もシリーズを重ねるごとに、優しさがにじみ出るなどドキュメントのようなムードも魅力の1つだろう。放送中の第6シリーズでは成長して副センター長になった楓が若手を指導するシーンが多く、その成長物語は次世代に継承されている。

第1シリーズにおけるもう1つの見どころは、女性医師の立ち位置。

第1話では楓が堺から「大変なところに来ちゃったよね。女の子にはキツイところだから」と言われるシーンがあった。楓は「いえ、男とか女とか関係ないところだと思ってますから。私、救命救急って男性と一番対等に働けるところだと思うんです」などと返事。さらに、進藤にも「先生が私を気に入らないのは女だからですか?」と食ってかかるシーンもあった。

これらの現在より女性医師が少なかった時代の描写もある、記録的な価値の高い作品と言っていいかもしれない。

主要人物の再登場も見どころの1つ

第1シリーズの主要人物で注目は、内科医の落合雅人(沢村一樹)、研修医の辻智宏(八嶋智人)、脳神経外科医の堺、新人看護師の桜井ゆき(須藤理彩)の4人。第6シリーズで落合は院長になり、辻はセンター長となって再登場している。桜井も第2シリーズに連続出演するなど、このような主要キャストの変化も見どころの1つだろう。

これまで多くの俳優が医師や看護師役で出演してきたが、今後も「ひさびさの再登場」が可能なところもシリーズ作の強みであり、もし第7シーズンがあれば誰が復活するのか注目を集めるのではないか。

そしてキャストの点でもう1つ特筆すべきは週替わりのゲスト。第1シーズンの第1話では鈴木砂羽らが出演した。さらに第2話では泉谷しげると宮崎美子、第3話では斉藤暁と矢沢心。以降でも池脇千鶴、江守徹、角替和枝、北村総一朗らが出演した。このようなキャスティングがシリーズ全般で続いているため、現在活躍するベテラン、特にバイプレーヤーの多くが『救命病棟24時』の出演歴があると言っていいかもしれない。

2010年代に医療ドラマが量産された影響で20年代に入ってからそれまで定番だった「外科医が主人公の医療ドラマでは数字が取れない」という時代になった。医療ドラマが難しいフェーズに入る中、前期の『クロスロード~救命救急の約束~』(テレビ朝日系)、映画化が続く『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)など救命救急が舞台の作品は一定の結果を残している。

『救命病棟24時』はそのシンボリックな存在と言っていいだろう。令和の今、第1シリーズを見ても違和感がないだけに「第6シリーズで初めて見た」という人は27年前までさかのぼって見てもいいのではないか。

日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。