映像のクオリティーが高いからこそ、細部に違和感を覚える部分もある。

例えば、テレビ局の楽屋前の通路がビジネスホテルのような雰囲気だったり、大阪・難波の場面で東京の中央線を思わせる電車が高架線を走っていたりしたほか、山里の体形も実際より少しふっくらして見えた。

また、人物によって再現の精度に違いがあるのも興味深い。山里やちぇく田、クロちゃんは特徴をよく捉えている一方、加納や銀次はやや本人との印象が異なって見える場面もあった。顔立ちや髪形など、AIが再現しやすい特徴には違いがあるのかもしれない。

とはいえ、これらは細かく見なければ気にならない程度のもの。むしろ、トーク番組においては、生成された映像が思いがけず現実から外れることを笑いにつなげられる可能性があるだろう。

芸人の「脳内」を可視化 フジテレビのAIバラエティが目指すもの

今回の番組を見て思い出したのが、同じくフジテレビでこれまで2回放送された『AI実験バラエティ シンギュラ』だ。

同番組の「脳内大喜利」は、芸人が頭の中で思い浮かべたイメージを生成AIによって可視化し、大喜利の回答にするという企画。『話シネマ』も、エピソードトークを通して、まるで話し手の脳内をのぞいているような感覚を生み出している。

両番組に共通するのは、AIを制作費の削減や作業の効率化だけに使うのではなく、これまでテレビで表現することが難しかったものを映像にするために活用している点だ。

今回の企画では、フジテレビのAIセンターと制作、技術・美術部門が連携。社員ディレクターが自ら生成AIで映像を制作するとともに、バーチャルプロダクションやスタジオ技術の省力化にも取り組んだという。効率化で生まれた時間やリソースを、番組の面白さを高める演出に振り向けるという考え方が、実際の映像にも表れていた。

総合演出を務めたのは、梅澤慶光氏。これまで、ツタに覆われた家の内部と住人の人生に迫る『ツタの家。』(テレビ東京)や、閉校する小学校を舞台に卒業生と恩師の再会を描く『最後のホームルーム 同窓会をプロデュース』(BS朝日)など、独自の着眼点を持つ番組を手がけ、両番組とも「ヤング映像クリエーターを励ます賞」で経済産業大臣賞、『最後のホームルーム』では「ATP賞」で最優秀新人賞も受賞した実力者である。

さらに、『川島人形代わりにやってあげる』(フジテレビ)では、川島明本人の代わりに人形を使い、生身の人間では難しい実験を映像化するという企画も演出。これらの番組には、普段は見えないもの、なかなか見ることができないものを、ユニークな手法で映し出すという共通点が感じられる。

今回の『話シネマ』は、事前に制作したAI映像をトークに合わせて見せる形だが、今後テクノロジーが進化すれば、話し手の言葉に応じて映像をその場で変更したり、共演者のツッコミによって映像を変化させたりすることもできるかもしれない。

山里が語った「トーク番組の革命」という言葉も、大げさには聞こえない。人間の想像力と話芸に、AIという新たな映像表現が加わることで、テレビの笑いはまだ進化できるという期待を抱かせる30分だった。