スズキが2026年11月16日に発売する同社初の軽乗用EV「e SKY」は「最大トルク」が小さめに設定されている。モーターで走るEVは大きなトルクと鋭い加速が持ち味になりがちだが、スズキがあえてトルクを小さく抑えた理由とは?
サーキットを走る勇姿も! 「e SKY」の写真を一気に見る
他社の軽EVは大トルク
e SKYはスズキ初の軽乗用EV(軽乗用車の電気自動車)だ。グレードは「A(受注生産)」「G」「X」の3種類で価格は212万円~279万円。容量26kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを床下に搭載しており、一充電走行距離は310kmを実現している。軽EVクラストップとなる「電費」(ガソリン車でいうところの燃費)が売りで、交流電力量消費率は97Wh/kmだ。
e SKYの走行性能をチェックしてみると、トルクが小さめに抑えられていることに気が付いた。
軽EVは軽自動車の規格に沿ったクルマであるため、いくらモーターで走るからといっても、やたらとハイパワーな設定にすることはできない。軽自動車には最高出力を64馬力(47kW)までとする業界の自主規制があり、それはモーターで走る軽EVでも同じだ。どの軽EVも、最高出力は47kWに設定されている。
ただ、最大トルクについては、一般的な軽自動車よりも軽EVの方が大幅に大きくなる。例えば日産自動車でいえば、ガソリンエンジン搭載の「デイズ」が60Nm(ターボエンジンは100Nm)であるのに対し、EVの「サクラ」は195Nm。ホンダでいえばガソリンエンジンの「N-ONE」が65Nm(ターボ104Nm)、EVの「N-ONE e:」が162Nmだ。
では、e SKYはどうなのか。同じ「ハイトワゴン」タイプのスズキ「ワゴンR」と比べてみると、ワゴンRが58Nm(マイルドハイブリッド車には40Nmのモーターが付く)で、e SKYは133Nmだ。
トルク小さめな理由を商品企画担当に聞く
技術的に不可能だったわけではなく、あえてトルクを小さめに抑えているのは明らかだが、その理由は? 商品企画担当に聞くと、「設計を含め社内で何度も議論して、どのレベルにするかについて検討を重ねた結果、133Nmというスペックに落ち着きました」とのことだ。理由は「航続距離」を伸ばすためでもあるのだが、「ガソリン車から違和感なく乗り換えていただく」ことを重視した結果でもあるという。
味付け次第ではあるのだろうが、大トルクのEVはペダルを踏むと思ったよりも勢いよく加速する場合がある。車種によっては、強めに踏むと背中がシートに押し付けられるような鋭さでダッシュを決める。これを爽快だと感じるか、それとも怖いと感じるか。話を聞いた担当者は「恐怖を覚えられるお客様もいらっしゃいます。軽自動車ということで、乗りやすさを一番に考えました」とする。
だからといって、高速道路の合流でもたつくような走りにはなっていないと同氏。「立ち上がりの伸びは意識していまして、高速の合流など、トルクの欲しいところではちゃんと応えてくれるという、絶妙なセッティングを狙っています」とのことだった。
ちなみに、加速とは逆の「止まる」の方は、どんな考え方なのか。e SKYでは「D」「B」のほかに「イージードライブペダル」(Xグレードに標準装備)があって、Dは普通にクリープするガソリンエンジン車に近い走り、Bではペダルを戻すと「エンジンブレーキ」が発生するような走り、「イージードライブペダル」では「ワンペダル走行」のような走り(ただし、ペダルを完全に戻しても停止はしない)となるそうだ。
あくまでもガソリン車から乗り換えやすい「Easy to Switch」を狙ったのが、スズキ初の軽乗用EV「e SKY」なのである。


















































