スズキの「e SKY」とBYDの「ラッコ」は、どちらも軽EV(軽自動車の電気自動車)の注目株だ。e SKYのプロトタイプに乗ったので、走りと性能でラッコと比較してみたい。

  • BYD「ラッコ」

    BYD「ラッコ」とスズキ「e SKY」の走りを比較!

どちらもBYD製バッテリーを搭載

ラッコは「200」「300Plus」「300Premium」の3グレード構成。200と300ではバッテリー容量(と航続距離)が異なる。リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)の容量は200が22.4kWh、300が35.84kWh。航続距離(WLTCモード)は同210kmと320km、交流電力消費率は120Wh/kmと124Wh/kmだ。最高出力47kW(64PS)、最大トルク160Nmは全グレード共通。0-50km/h加速(0-100km/hではないところに注意)は200が4.2秒、300が4.4秒だ。

  • BYD「ラッコ」

    BYD「ラッコ」の走り

ついに200枚を突破…BYD「ラッコ」の写真を一気に見る

e SKYが搭載するのはBYD傘下の会社が作るLFP。容量は26kWh、航続距離(WLTCモード)は310km、交流電力消費率は97Wh/km(国産EVで最も電費が良好)だ。出力やトルク、加速性能はプロトタイプのため未公表となっている。

充電時間をラッコ(300)とe SKYの順に比べてみると、普通充電(100%まで)の3kWだと約12時間と約8時間、6kWだと約6時間と約4.5時間、50kWの急速では約24分(30%→80%)と25分(警告灯点灯から80%まで)となる。バッテリー容量の差があるので、e SKYの方が充電完了までの時間が短くなっているが、ラッコの200であればほぼ同等の数値になるはずだ。

35.84kWhの少し大きなバッテリーを搭載して320kmという長い航続距離を達成したラッコ(300)はもちろんすばらしいが、26kWhとより小さなバッテリーを積んでいるのにもかかわらず、ラッコ300まであと10kmに迫る310kmの航続距離が出せたe SKYは、「少ない電気でたくさん走る」を標榜しているスズキらしく、なかなか頑張っている。

どちらも、日常使いに加えて週末の少し長めの移動までこなせる、軽EVとして十分な性能を備えている。

走りは「巡洋艦」と「駆逐艦」の違い

ラッコのシフトセレクターはスイッチではなく、握りのいい楕円形のレバータイプ。ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」「スノー」がある。回生ブレーキのレベルは「スタンダード」と「ハイ」の2つだ。1人で乗る時はスポーツモード&ハイ、家族を乗せる時はノーマル&スタンダードの組み合わせが最適と感じたが、ハイにしてもそこまで強い減速Gが発生するわけではなく、アクセルペダルの完全オフで停止まで持っていける「ワンペダル」は不可。強力な前後ディスクのフットブレーキを使用して停車するしつらえだ。

  • BYD「ラッコ」

    BYD「ラッコ」のボンネットを開けたところ

車重が1,200kgもあるので、EVでよくある「すごく速い」とか、「加速感がすばらしい」といった感じの走りではない。走り的には至って静かで普通だ。

バッテリーや各種ユニットを統合した「Xパック」の車体構造と、高強度鋼板やレーザー溶接を投入したボディは、両側電動スライドドアという強度的にはハンディとなるかもしれない形状をものともせず、まるで硬い殻のよう。背が高くて大きなボディでゆったり走る感覚は、まるで巡洋艦のようにどっしりと落ち着いている。ちなみに、最小回転半径は4.8mだ。

一方のe SKYは、その正反対と言ってもいい。1,030kgという軽い車重にコンパクトなボディの組み合わせは、これまで乗ってきた軽自動車と同じ感覚。加減速は慣れ親しんだ塩梅だ。

  • BYD「ラッコ」

    スズキ「e SKY」の走り

外観も走りも! スズキ「e SKY」の写真を一気に見る

シフトは見慣れた「P-R-N-D-B」のスライドレバー式で、操作に戸惑うことはない。走行モードはガソリン車の感覚に近い「D」、回生ブレーキ強めの「B」、アクセル操作のみで加減速し、停車寸前まで対応できる押しボタン式のワンペダルモードがある。

  • BYD「ラッコ」

    スズキ「e SKY」のインテリア

e SKYプロトタイプにサーキットで試乗している途中、突然の大雨に見舞われたのだが、ヘビーウェットの中でも100km/hまでの加速や50~70km/hでのコーナリングに不安なし。シャシー性能はなかなかのものだ。最小回転半径は4.4mで、ラッコより小回りがきく駆逐艦タイプだといえる。

商品力の対決はどうなるのか

ラッコの販売価格はエントリーグレードの「200」が214.5万円、中間グレードの「300Plus」が239.8万円、最上級グレードの「300Premium」が249.7万円で、CEV補助金は全モデル/グレード一律で15万円。200であれば200万円切りの199.5万円で手に入る。これはこれですごい価格設定だ。

一方のe SKYはプロトタイプのため価格は未発表。試乗会の帰りに営業の方に呼び止められ、「いくらだと思います?」とダイレクトなご質問を受けたので、「補助金入れずに200万円」と答えておいた。

筆者は1979年の「アルト47万円」の衝撃(通常の軽自動車が60万~70万円の時代だった)をリアルに知る世代なので、今回のe SKYもそうした衝撃的プライス(補助金を入れたら150万円前後)を掲げてもらいたいと思ったからだ。「e SKY 197万円」ならもっといい。

軽EVという同じジャンルながら、ボディ形状も含めてほぼフル装備で勝負してきたラッコに対して、全く別のシンプルなスタイルを掲げて出てきたのがe SKY。ぜひ価格面でも「小・少・軽・短・美」を地でいく数字を実現し、軽EVの革命児になってもらいたいものだ。

【フォトギャラリー】BYD「ラッコ」

【フォトギャラリー】スズキ「e SKY」