今年2026年はウルトラマンシリーズの原点というべき空想特撮シリーズ『ウルトラQ』『ウルトラマン』の放送から60年、そしてウルトラマンシリーズの新時代を築いた『ウルトラマンティガ』放送開始から30年という節目の年である。
『ウルトラマン』第1話「ウルトラ作戦第一号」の一週間前にTBS系で放送された前夜祭番組『ウルトラマン誕生』の放送日「7月10日」には、同番組(イベント)が収録されたゆかりの地、東京・杉並公会堂にて「ウルトラマンシリーズ60周年記念『ウルトラマンの日in杉並公会堂』」と銘打たれた豪華イベントが開催され、老若男女、多くのウルトラマンファンたちが『ウルトラマン』60周年、『ウルトラマンティガ』30周年を祝い、盛り上がった。
本稿では、ウルトラマンシリーズを愛する多くの方たちに向け、円谷プロ制作のテレビシリーズ第1弾となる『ウルトラQ』そしてこれに続く『ウルトラマン』がいかにして企画され、作り上げられたのかの経緯から、前夜祭『ウルトラマン誕生』のシナリオと実際の収録映像との違い、『ウルトラQ』『ウルトラマン』でメインライターを務めた脚本家・金城哲夫氏の筆による「怪獣絵物語ウルトラマン」に込められた、映像ではうかがえないウルトラマンの「心情」についてなど、「コラム集」のかたちでご紹介していきたい。
コラム1:幻の特撮ドラマ企画『WoO』はウルトラマンの原点か
ゴジラ、モスラなどの東宝怪獣映画で世界的に知られる特技監督・円谷英二氏が「円谷特技プロダクション(後に円谷プロダクション)」を設立したのは、1963(昭和38)年のこと。
当初は劇場映画の特撮やCF(コマーシャル・フィルム)製作に携わっていた円谷プロだが、連続テレビ映画(ドラマ)として2つの企画が立ち上がっていた。それは宇宙からやって来た生物が人間の味方をして、様々な怪事件に立ち向かう『WoO(ウー)』(フジテレビ)と、自然界のバランスが崩れた世界で巻き起こる怪事件をアンソロジー形式で描く『UNBALANCE(アンバランス)』(TBS)。共に企画書、脚本、撮影スタッフの準備が進められたが『WoO』は諸事情により撮影開始に至らず、数本の脚本を残したまま立ち消えとなった。
一方『UNBALANCE』は3本のエピソードを製作した段階で「怪獣路線」に変更することになり、タイトルも『ウルトラQ』に改められた。かくして『ウルトラQ』はゴメス、ペギラ、ナメゴン、ガラモン、ケムール人といったユニークな怪獣・宇宙人をテレビのブラウン管の中で大暴れさせ、日本全国に熱烈な「怪獣ブーム」と呼ばれる現象を巻き起こした。
大ヒットした『ウルトラQ』は全部で2クール・28本のエピソード(『あけてくれ!』のみ再放送が初出)を生み出し、このまま円谷プロとTBSは後続番組を検討することになった。そこで円谷プロは、フジテレビで未製作となった『WoO』の企画を再浮上させ、TBS用に新しく「設定とストーリー」案を準備した。
『ウルトラQ』では、怪事件や怪獣に遭遇するレギュラー(佐原健二、西條康彦、桜井浩子)を設定していたが、「主役トリオだけがいつも怪獣に遭遇するのは不自然ではないか」というストーリー作りにおいての意見が出て、これを反映させて「怪獣や怪事件を専門に取り扱う集団」をレギュラーに置くことが決まった。
フジテレビ版『WoO』の企画段階で第1話「宇宙人来訪す」の脚本は8稿まで練り上げられており、最終となる第8稿には「A・G・C(アートグラフィックセンター)」というグループが設定された。彼らは特ダネを求めて怪事件の情報があればどこにでも駆けつける集団である。A・G・Cの設定は、怪獣のいるところに自分から乗り込んでいく『ウルトラマン』の「科学特捜隊」のアイデアに少なからず影響を与えているかもしれない。もちろんTBS版『WoO』の企画でも、A・G・Cの設定が前面に打ち出されていた。
やがてTBS版『WoO』の企画は整理、再検討され、「人間と仲の良い宇宙生物」から「怪獣と戦う巨大ヒーロー」へと修整される。タイトルも『科学特捜隊ベムラー』『科学特捜隊レッドマン』と移り変わり、これが『ウルトラマン』につながっていく。宇宙の彼方からやってきたヒーローが地球人(科学特捜隊)と協力して、『ウルトラQ』怪獣の猛威から人々を守るという『ウルトラマン』。その原点をたどると、形にならなかった幻の宇宙生物『WoO』の存在がぼんやりと見えてくるというものだ。なお『WoO』は2006年にキャラクター設定や世界観を大幅にリニューアルし、『生物彗星WoO』のタイトルで連続ドラマ化(NHK)されている。

