「鉄道模型コンテスト 2026 全国大会」が、8月7~9日に東京・新宿の新宿住友ビル三角広場で開催された。過去最多の207校が出展し、3日間とも多くの生徒や来場者らでにぎわいを見せた。本誌でもコンテスト終了後、モジュール・1畳レイアウト・HO車輌各部門の最優秀賞を紹介したが、それ以外にも多数の力作が展示されていた。
学生の出展するコンテストだけでなく、一般個人が出展可能な「T-TRAKジオラマSHOW」「ミニジオラマサーカス」も並行して開催された。今回はコンテスト3部門の最優秀賞作品を改めて解説するとともに、優秀賞などの出展作品、「T-TRAK」「ミニジオラマ」も紹介する。
灘校が再び最優秀賞に! モジュール部門
まずは「第18回全国高等学校鉄道模型コンテスト」モジュール部門から。900mm×300mmの直線モジュール、または一辺600mmの曲線モジュールのどちらか、およびKATO線路・TOMIX線路を選択し、それぞれの規格に従ってモジュールジオラマを制作する。レイアウトボード底面から作品全体の高さは450mm以下に抑えること。その他、線路形状、建築限界、電飾なども、決められた条件を満たすように制作する。
モジュール部門の最優秀賞は、灘中学校・高等学校鉄道研究部の「KA Batra Kresna」。インドネシア・ジャワ島中心部のスラカルタから南東部のヴォノギリを結ぶ、インドネシア国鉄バタラ・クレスナ線と、同線がスラカルタで走行するスラメット・リヤディ通りを再現した。実際のバタラ・クレスナ線も、始発駅のプルウォサリ駅から大きくカーブしてスラメット・リヤディ通りに合流し、単線非電化ながら、次のソロ・コタ駅手前まで併用軌道を走行する。
制作はGoogleマップやインドネシア語の動画を参考にしており、現地の街並みの特徴である、コンクリートの外観が目立つ建物をプラ板から自作。プラ板の厚みや、コンクリートのエッジが出ることを意識したという。エアブラシで塗装した後にウェザリングを重ね、高温多湿による汚れ・傷みを表現している。ホテルやモスクは3Dプリンター製。道路の真ん中には、40分の1のミリタリー人形を改造して作られたスラメット・リヤディ像が立つ。
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灘校鉄道研究部によるジャワ島・スラカルタを再現したモジュール作品が最優秀賞
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大きくカーブする線路の隣に、ヤマハの現地ディーラーが存在する
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スラメット・リヤディ像の立つ大通り。建物のウェザリングや街のにぎわいもしっかり表現
熱帯地域の植生を豊かに表現すべく、ドライフラワーや、緑色に塗ってから細断した半紙を活用。葉の形がしっかりしている南国植物は、3Dプリンターで作成した。とくに、半紙を使った表現は、2023年の泰緬鉄道モジュールでも使用されており、久しぶりの東南アジア作品である今回にもしっかり生かされた。取材した部員の1人は、「自身がこれまで見てきた中で最もこだわった作品」と話していた。現役生徒だけでなく、OBからも高い評価を受けたとのことで、非常に満足度の高い作品に仕上がっていた。
優秀賞は白梅学園清修中高一貫部鉄道模型デザイン班と、台湾から参加した國立永靖高級工業職業學校室内空間設計科が受賞した。
白梅学園は、京都・丹後エリアの伊根町を題材にした「青き海に刻む青春の記憶」を制作。地域の特徴である木造舟屋を、既製品のキットに角材を貼ることで再現。潮風による風化を再現すべく、外観の角材をやすりやカッターで削った。この作業だけで2週間以上かかったという。今回、初めて本格的に3Dプリンターを活用し、バス停、舟、鳥居などの小物類を3Dプリンターで作成している。
観光地としても有名な伊根の舟屋だが、もちろん地元住民の生活もある。Googleマップなどを参考に、随所に生活感やストーリー性を持たせ、部員らも作品に登場。他にも、パンパステルで着色した砂浜の上からレジンを流し、乾燥後に「大波小波」(KATO)で波を付けた海も魅力のひとつとなっており、例年のこだわりも現役部員に受け継がれた。制作した部員によれば、今年はテーマ決めに時間がかかり、テーマ設定から制作まで2カ月間の短期間だったというが、無事に完成して安心しているようだった。
続いて、國立永靖は「雲霧と紅葉の阿里山森林鉄道」という作品を制作。実車の阿里山森林鉄道(阿里山林業鉄路)は、台湾南西部の嘉義駅からスイッチバックやループ線を交え、森林資源に恵まれた阿里山方面へ上っていくナローゲージの山岳鉄道。世界三大登山鉄道のひとつにも数えられる。乗車の際は事前予約ができるが、定期列車の本数が少なく、多くの観光客に人気のため、満席になることも多い。
このレイアウトでは、山の上に沼平(ジャオピン)駅を配置し、ボード外に向かって発車していく想定で情景を展開。ふもとの走行用線路の外周では、阿里山の原住民族・ツォウ族の集落「デェンヤナ(ディンヤナ)」と、秋に行われるという音楽祭を再現した。作中の建物や鉄道車両などは、レーザーカットしたクラフト紙を素材に、部員らが塗装して再現している。
自然表現の面でも、色調の異なるパウダーを使い分け、山の緑を多彩に表現している。沼平駅では紅葉への移り変わりも垣間見られる。山上の木のところどころに綿で雲・霧を表現し、適度にぼかした背景も備わっている。総じて規格の範囲を守りつつも、それ以上の高さ・奥行きを演出し、駅舎・列車の再現や人物表現の魅力にもあふれる作品に仕上がった。部員の1人は「すべてのメンバーに感謝します。今回の大会に参加できて大変うれしく思います。日本が大好きです」(翻訳)と語った。
2024年から最優秀賞と分けて設けられた文部科学大臣賞は、今回、広島城北中・高等学校鉄道研究部が受賞した。同校の作品「鵜とともに生きる街」は、かつて名鉄岐阜市内線が行き交っていた併用軌道を中心に据え、長良川の鵜飼や、金華山のある街並みを再現している。
今回は土台から3Dプリンターで作成し、各種建物や街灯・屋台などの小物にも3Dプリンターを活用した。長良川に浮かぶ舟と鵜も3Dプリンターで作られている。今年はUVプリンターを導入したとのことで、道路や建物の色・模様の表現に活用した。しかし、画面上のデータと実際に出力した部品でずれも生じ、修正と試行錯誤の連続だったという。
一方、山に囲まれた奥に神社が建っており、実際の金華山と伊奈波(いなば)神社もこのような位置関係になっている。わずかに水色のついた長良川により、川と山・神社で複数の視点を設けた。最新技術だけに頼らず、木の幹と枝を竹串と針金で作り、神社への道にはウェザリング、鵜舟・街灯・屋台などに電飾を施すなど、従来からの手作業も生かしている。最新技術との組み合わせで、自然・歴史・伝統文化のある町をオリジナリティを持って表現していた。
その他、筆者の印象に残った作品を3点紹介したい。1点目は、関東学院六浦中学校・高等学校鉄道研究部による「夏の昼の京都・嵐山」。渡月橋、嵯峨祭、竹林の小径など、嵐山の魅力を詰め込んだ。キモノフォレストは透明なストローと和柄の折り紙で再現したという。山と川の自然表現はリアルなだけでなく、実寸法以上の高さと奥行きを感じさせた。
2点目は、奈良学園中学校・高等学校交通問題研究部の「錦を纏う保津の跡」。1987年から2年間、JR西日本が運営していた時期の保津峡駅を紅葉とともに再現した。3Dプリンターを活用した作品の上位入賞が多い中、ほとんどの構造物をプラ板・プラ棒から自作した点が好印象だった。保津川や、奥行きを出しづらい山の紅葉も、素材を的確に使い分けて表現していた。
最後に、初参加という高田中・高等学校鉄道研究部の「トリプルゲージ」も取材したので紹介したい。桑名駅南側にある、3軌間を一度に横断する踏切が題材となっている。走行用線路は近鉄名古屋線(標準軌)に見立て、JR関西本線(狭軌)、三岐鉄道北勢線(ナローゲージ)のまくらぎを3Dプリンターで作成した。作中では、前者は軌間7mm、後者は5mmとし、フレキシブルレールを移植して再現した。他にも、関西本線と北勢線の架線柱をプラ棒で自作するなど、チャレンジングな姿勢が随所にうかがえる意欲作だった。
白梅学園が3年連続最優秀賞達成! 1畳レイアウト部門の作品は
次は1畳レイアウト部門を振り返る。この部門では、最大1,820mm×910mm~最小900mm×600mmの範囲で、列車が走行するレイアウトを制作する。他校の作品とは接続しないので、線路配線は自由。ただし、Nゲージサイズで制作し、作品全体の高さも700mmに収めなければならない。1畳レイアウト部門は今回が最後となり、来年以降は取りやめとなる。
今回、最優秀賞は白梅学園清修中高一貫部鉄道模型デザイン班の「幸せを届ける魔女のはなし」が受賞。スタジオジブリ制作の映画『魔女の宅急便』を題材にしたこの作品で、1畳レイアウト部門の3連覇を成し遂げた。
レイアウトは路面電車と貨物列車の2層構造。路面電車が走る街は、貨物列車の中央駅と主人公・キキのパン屋以外、すべての建物が3Dプリンターで作られている。それらをカラフルに、しかし主張の強すぎない色に塗装し、ヨーロッパらしい街並みを表現した。その際、大部分はスプレーで、窓枠は爪楊枝で塗装し、細かな色差しまで丁寧に行われた。
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映画『魔女の宅急便』をイメージした洋風の2層レイアウト
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カラフルな建物が続く町並みを小さな路面電車が走る
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地下・海沿いは小さな貨物列車が走る。左の駅舎は、KATOの銀行を3Dプリンター作成部品で改造した
鉄道模型については、上段を路面電車、下段を貨物列車が走行する。路面電車は街中を周回するように複雑に配線しており、ガントレット(単複線)も組み込まれている。一方、貨物列車はシェルターで覆われた海沿いを走行し、地下を回って駅に戻る。路面電車、機関車、ガントレットはいずれも講師の指導を受けながら3Dプリンターで制作したとのこと。
映画の印象的なシーンも作中に散りばめられている。映画要素も含め、人形の配置にストーリー性が意識されており、映画要素と街の生活感を両立した、見どころの多い作品となった。制作した部員の1人は、「最初にイメージしていたものとは違うけど、メンバーで話し合って作ってきて、個人的には良かった」と話していた。3Dプリンターの使い方を学んだことも大きなポイントだったという。
優秀賞は、松本秀峰中等教育学校鉄道部「峠越え」が受賞。北陸新幹線開業前の信越本線で、横川駅からの碓氷峠越えをイメージしたレイアウトを制作した。拠点となる横川駅舎は3Dプリンターで再現。「峠の釜めし」でおなじみのおぎのやは、グリーンマックスのキットに自作看板を組み合わせて制作した。ホームの外周に横川機関区を配置しており、バラストの色の違いも意識したという。
このレイアウトでは、横川駅から時計回りを軽井沢方面に見立て、駅を発車した後、66.7パーミルの急勾配を上って新碓氷川橋梁を渡る。その勾配や、新碓氷川橋梁もNスケールで完全再現している。周回の都合上、新碓氷川橋梁手前で下り勾配に転じるが、それにより、新碓氷川橋梁で開ける車窓から一瞬だけ横川の町を一望できる。実物とは違ったワクワク感が、偶然にも鉄道模型で実現した。
制作した感想について、部員の1人は「1畳レイアウト自体作るのが初めてで、しかも短いスケジュールだったので完成するか心配だったが、完成して良かった」と話していた。
都電や京急デトが上位入賞、HO車輌部門の作品を紹介
最後はHO車輌部門を見ていく。この部門では、HOスケール(80分の1)の鉄道模型を生徒自身が制作し、出展する。台車やパンタグラフ、他の小物類に限り既製品を使用できるが、基本的に車体の設計・組立は生徒自身で行う。そのため、完成品やキット製品の改造はできない。
今回、最優秀賞は立教池袋中学校・高等学校の都電7500形(7501号車)が受賞した。7500形の中で唯一、シングルアームパンタグラフを装備していた車両が7501号車だという。車体は、実車の形式図を参考に2DCADで設計し、レーザーカットしたケント紙で制作。ケント紙を4層重ねたことで、乗降ドアや窓枠など微妙な奥行きを表現している。
台車は既製品を使用したが、自作できそうな部品は自作しているという。その上で、機器類は実車通りの配置を再現。既製品で用意されている部品が少ない車両だからこそ創意工夫を凝らしており、言われなければ紙でできていると気づかないほど高精度に仕上がっていた。
優秀賞は、正則学園高等学校鉄道研究部が制作した京急電鉄の事業用車両デト17・18形。身近な素材の可能性を引き出すことを意識して作られ、車体やコンテナを100円ショップで買える厚紙で作っている。コンテナは扉が開閉し、内装も再現。他にも、パンタグラフの一部箇所、連結器、台車、車輪以外はすべて自作とのことだった。
IRアンテナも厚紙で作られているが、紙が曲がるリスクを減らすべく、硬化のために接着剤を活用したことがポイントに。パンタグラフのアームに真ちゅう線、配管にステンレスの針金、手すりに洋白線と、金属線の使い分けも意識し、高い完成度でデト17・18形を自作した。
最優秀賞・優秀賞の他にも、筆者の印象に残った作品として、本郷中学校・高等学校鉄道研究部の制作した高松琴平電気鉄道2000系を挙げたい。大部分を3Dプリンターで設計・出力し、別々にした前面・側面の貼り合わせと、前面上部のパテ盛り・成型に手間をかけたという。屋根は外れるようにし、内装も表現。実車が出場していない時期に制作を始めたとのことで、大変さがうかがえるが、新型車両のいち早い模型化に挑戦した力作だった。



























