全国の高校生らが鉄道模型のジオラマ・レイアウト作品を競う「第18回 全国高等学校鉄道模型コンテスト 全国大会」が8月7~9日、東京・新宿住友ビル三角広場で開催された。参加校は昨年の184校からさらに増え、今大会でついに200校を突破。計207校の作品が集まった。

  • <!-- Original start --></picture></span>「第18回 全国高等学校鉄道模型コンテスト 全国大会」が3日間にわたり開催。今年も多くの力作が新宿に集まった<!-- Original end -->

    「第18回 全国高等学校鉄道模型コンテスト 全国大会」が3日間にわたり開催。今年も多くの力作が新宿に集まった

鉄道模型コンテストはモジュール部門、1畳レイアウト部門、HO車輌部門に分かれ、部門ごとに最優秀賞・優秀賞などを設定。今回は3部門で最優秀賞に選ばれた作品を紹介する。

まずはモジュール部門。直線・曲線モジュールおよびKATO線路・TOMIX線路を選択し、それぞれの規格に沿ってモジュールレイアウトを制作する。モジュールボードの中心に走行用の線路が配置され、ブロックごとに1周つながった線路を、参加校の生徒が持参したNゲージ車両が走行する。作品の高さ、電飾の条件、建築限界といった規格だけでなく、他校の作品と線路をつなぐことも意識して制作しなければならない。

今年、モジュール部門の最優秀賞を獲得した作品は、灘中学校・高等学校鉄道研究部の「KA Batra Kresna」だった。インドネシア・ジャワ島のスラカルタ・プルウォサリ~ヴォノギリ間を結ぶインドネシア国鉄のバタラ・クレスナ線と、同線が通るスラメット・リヤディ通りを曲線モジュールで再現した。

Googleマップやインドネシア語の動画を参考にしつつ、コンクリートの外観を持つ建物をプラ板のフルスクラッチで再現。ホテルとモスクは3Dプリンターで作成している。大通りの真ん中に置かれたスラメット・リヤディ像は、40分の1のミリタリーフィギュアを加工して作ったとのこと。東南アジアの豊かな植生や、湿度の高さに起因する建物の汚れ方もさまざまな技法と塗料で表現しており、日本にはない雰囲気をリアルに作り上げた。

  • <!-- Original start --></picture></span>最優秀賞の灘校鉄道研究部は、インドネシア・ジャワ島のスラメット・リヤディ通りの鉄道風景を再現<!-- Original end -->

    最優秀賞の灘校鉄道研究部は、インドネシア・ジャワ島のスラメット・リヤディ通りの鉄道風景を再現

  • <!-- Original start --></picture></span>大通りを横切る併用軌道。じつは非電化区間となっている<!-- Original end -->

    大通りを横切る併用軌道。じつは非電化区間となっている

  • <!-- Original start --></picture></span>植生の表現や、全体的に退色の目立つ建物などもポイント<!-- Original end -->

    植生の表現や、全体的に退色の目立つ建物などもポイント

続いて1畳レイアウト部門。1,820mm×910mm~900mm×600mmの範囲で、鉄道模型が走行するレイアウトを制作する。モジュール部門とは異なり、走行用の線路を他校の作品と接続しない分、レイアウトの線路配線は自由になる。それでも作品全体の高さ制限や、情景の建築限界を守った上で作らなければならない。なお、1畳レイアウト部門は今回が最後とされ、来年以降は取りやめになるとのことだった。

1畳レイアウト部門の最優秀賞は、白梅学園清修中高一貫部鉄道模型デザイン班が受賞した。スタジオジブリ制作の映画『魔女の宅急便』をイメージし、「幸せを届ける魔女のはなし」と題してヨーロッパ風のレイアウトを制作した。同校はモジュール部門・1畳レイアウト部門ともに今回初めて3Dプリンターを導入したという。この作品では、大部分の建物を3Dプリンターで作成。それをカラフルながらも目立ちすぎない色調に塗り分け、街並みを形成した。映画で印象的なシーンも随所に再現されている。

鉄道模型の面でも、講師の指導を受けながら、小型の路面電車・機関車とガントレットを3Dプリンターで制作。線路は2層構造になっており、街中を路面電車、地下を貨物列車が走行する。映画要素以外の人形配置も、それぞれのストーリーを意識して配置しており、洋風の街としても見どころにあふれたレイアウトとなっている印象だった。

  • <!-- Original start --></picture></span>白梅学園の1畳レイアウトは『魔女の宅急便』を再現<!-- Original end -->

    白梅学園の1畳レイアウトは『魔女の宅急便』を再現

  • <!-- Original start --></picture></span>カラフルな洋風の街。写真左手前にある色の濃い線路がガントレット<!-- Original end -->

    カラフルな洋風の街。写真左手前にある色の濃い線路がガントレット

  • <!-- Original start --></picture></span>自転車で海沿いを駆けるトンボとキキ、その下を小さな貨物列車が回る<!-- Original end -->

    自転車で海沿いを駆けるトンボとキキ、その下を小さな貨物列車が回る

最後にHO車輌部門。この部門では、HOスケール(80分の1)で制作された鉄道模型車両の作品を競う。台車・パンタグラフ・その他装飾品に限り既製品の使用も認められているが、車両本体は生徒自身の手で設計・制作する。

今回、最優秀賞は立教池袋中学校・高等学校鉄道研究部が受賞。同校は、都電荒川線で活躍した東京都交通局7500形7501号車の晩年仕様を制作した。実車の形式図を参考に、2DCADで車体を設計し、紙で制作。ケント紙を4層構造にすることで、乗降ドアの奥行きや窓枠など、立体的な表現を実現した。その他の小物類も可能な範囲で自作。路面電車ならではの存在感が高い完成度で表れていた。

  • <!-- Original start --></picture></span>立教池袋中学校・高等学校鉄道研究部による都電7501号車。ケント紙を重ねたことで表現できる奥行きに注目<!-- Original end -->

    立教池袋中学校・高等学校鉄道研究部による都電7501号車。ケント紙を重ねたことで表現できる奥行きに注目

講評は、審査委員長の宮田亮平氏(第9代東京芸術大学長)から行われた。生徒らが作品の中の情熱をどのように多くの人に伝えるかを一生懸命考えてきたことに触れつつ、「ただしこれは、絵画・彫刻・工芸ではなく、もっとすごい全体観の集合体です。『STEAM』(Science・Technology・Enginner・Art・Mathematics)が集合したときに最高の賞になります。そこに愛情があると、より私たち審査員は感動を覚えます」と述べた。

宮田氏は続けて、生徒らへのお願いとして、「自分たちの作品だけではなく、他校の作品の良いところを感動のもとに吸収してください。そうすれば、必ず次は後輩たちにそれを伝えていくことができます」と語った。

モジュール部門で最優秀賞を受賞した灘校鉄道研究部は、ドイツ・シュトゥットガルトで開催される「ヨーロピアン Nスケールコンベンション」へ日本代表として招待される。それ以外にも、今回の出展作品が各校の地元や各種イベントで展示される可能性がある。国内・海外の各所で、生徒らのジオラマへの熱意とその魅力が広まることに期待したい。