セガは、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」35周年プロジェクトの一環として、35年にわたり世界中で愛され続けてきたソニックの特徴を“DNA”という新たな形で表現した「SONIC THE HEDGEHOG DNA FIGURE」を制作。東京・渋谷の渋谷PARCO6階「SEGA STORE TOKYO」にて、6月23日より期間限定での展示を行っている。
“DNAフィギュア”とは?
1991年の誕生以来、「青い身体」「音速で走る超スピード」「冒険心」「自由でクールな性格」など、唯一無二の個性により、多くのファンに親しまれてきたソニック。本企画では、この35年間で積み上げられたソニックの個性を未来へつなげるべく、「生命の設計図(DNA)」として再定義し、最先端のアートとテクノロジーを融合させ、“DNA”を具現化することによって、ソニックという存在の核(コア)は色褪せないという事実を表現している。
ソニックを象徴する特徴を、時代を超えても変わらないキャラクターの“DNA”として捉え、ソニックの身体的特徴や性格、能力などを一つひとつ読み解きながら、“ソニックのDNA”として設計・合成し、等身大フィギュアの内部に実際に封入。カオスエメラルドに封入された“DNA”が、ソニックの胸元で浮遊するように配置されているのが大きな特徴となっている。
そんな「SONIC THE HEDGEHOG DNA FIGURE」の概要およびその魅力について、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』クリエイティブディレクターの星野一幸氏、そしてDNAフィギュアの制作を担当したトランシーズの浪岡拓也氏と青木寛和氏に話を伺った。
きっかけは大阪・関西万博
「常に新しいものに対して積極的にチャレンジしていくのがソニックブランド」という星野氏。「SONIC THE HEDGEHOG DNA FIGURE」の持つ新しさは、革新的なアイデア、そしてコンセプトだ。そのコアとなる部分こそが、トランシーズが手掛けるDNAの部分であり、「ただキレイ、カッコいいアートフィギュアというだけでなく、そこにDNAという要素が組み合わさることで、より新しく、より面白いものができる」という思いが、今回のプロジェクトの発端になっているという。
星野氏がDNAに着目したきっかけは、大阪・関西万博において、トランシーズが公開した「人工宇宙人」。DNA合成技術から生まれた、これまでにないまったく新しいDNAフィギュアに心躍らされた星野氏は、ブランディング活動の一環として、「これをソニックで実現したらすごく面白くなるのでは」と直感し、今回の企画を思い立ったと振り返る。
一方、「元々ソニックが大好きだった」という浪岡氏と青木氏は、ソニックをモチーフとしたDNAフィギュア制作の話が舞い込んだ際は「めちゃくちゃ最高だと思いました」と当時の心境を語る。万博で公開した「人工宇宙人」はあくまでも試作品であり、「例えば可愛らしい女の子のキャラクターを作るとか、もっとグロテスクなキャラクターを作るとか、自分たちにはもっとほかの選択肢があったかもしれない。しかし、その第一歩として、世界中からも愛されているソニックのDNAを作ることは、今後の自分たちにとっての指針にもなる」と大きな期待に胸を膨らませたという。
青い、速い、だけじゃない。ソニックを構成するDNA
「ソニックのDNAを合成する」。この言葉は、今回の「SONIC THE HEDGEHOG DNA FIGURE」において、非常に単純な言葉でありながら、非常に理解しにくい部分となっている。ソニックの象徴となる特徴をDNAに落とし込むとはどういうことなのか?
「ソニックをすごくわかりやすく表現すると“世界一速いハリネズミ”なんです」と、DNA合成について説明する浪岡氏は、今回のDNAフィギュアを制作するにあたり、まずはハリネズミのDNAを用意したという。そして、そのDNAをベースに、「例えばソニックは青いので、ハリネズミのDNAの中で毛の色を決めている部分を取り出し、もともと白だったり茶色だったりしているところを青色に書き換えていく」という作業を行うことで、理論上は青い毛のハリネズミができあがるという。あとはその作業を繰り返すことによって、ソニックのDNAができあがるわけだが、もちろんただ特徴を埋め込んでいくだけという単純な話ではない。
個体差はあるものの、ハリネズミの大きさはだいたい20cmくらいだが、ソニックは100cm。100cmのハリネズミを成立させるためには、ただDNA上の大きさに関する情報を100cmにするだけでなく、それにあわせて骨格を強くしたり、筋肉を増強したりする必要がある。さらに、100cmという体格を支えるだけでなく、ソニックの圧倒的なスピードにも耐えうる骨格・筋力が必須。「骨格や筋力を増強すると、必然的に泳げなくなるので、DNA的にも、ソニックの弱点である“泳げない”という特徴にも繋がる」と説明する浪岡氏。しかし、ただ重いから泳げないというのは根拠として弱いため、「身体の中にどういった機構があって、どういう性質があるから泳げないのか、さらに音速に耐えられる筋肉・骨格とはどういったものなのか。そういったところを延々と考え、行き来しながら、DNAを合成していきました」と当時の苦労を振り返る。
そういった様々な要素を取り入れ、バランスを取りつつ、50億文字とも言われるハリネズミのDNAを調整し、最終的に99%の精度でソニックのDNA合成を成し遂げたという。この99%というのは重要で、「今回ご助力いただいているDNA合成の権威の方の話では、研究所において99%のDNAができている時点で、その生命を作り出せることは確定している」という浪岡氏。つまり、今回合成されたDNAを使えば、実際にソニックを生み出すことも夢ではないという。ただ、「培養して、調整して、また培養して、想定したソニックが生まれるまでやり続けるのが研究の現場ではありますが、今回のプロジェクトはDNA合成までで、実際に培養するのは別の話」であり、あくまでも99%近似したソニックのDNAを作り出したということが今回のプロジェクトにおける成果となる。
なお、今回のDNA合成において、長年に渡ってソニックに関わり、クリエイティブディレクターとしてソニックの特徴を知り尽くす星野氏が求めたソニックは、単なる見た目や能力だけにとどまらない。「誰かが迷っていたり、悩んでいたりしたら、手を差し伸べて、何なら背中を押してあげるところ。さらに、誰からも自由であり、冒険が大好きなところ」。そういった内面的な特徴も“ソニックらしさ”としてピックアップしたという。「星野さんからいただいた特徴を実現するのは非常に難しく、頭を抱えながらの作業でした」と苦笑いを浮かべる浪岡氏だが、例えば「冒険が大好きなところ」については、動物の探索行動を強めるホルモンを強化するなどの工夫を施している。「ただ、周りの仲間達がいて、あの環境があるからこそ、ソニックの冒険心が育まれたという要素もあるのではないか。もちろん、ソニック個人でも十分に冒険心は強いと思うのですが、そのあたりの心の部分、身体だけじゃない部分もすごく重視して、DNA合成を行いました」と振り返る。
保管器をイメージしたシルバ-ボディ
「SONIC THE HEDGEHOG DNA FIGURE」は、ソニックのDNA合成が大きなテーマとなっているが、フィギュア自体も星野氏のこだわりが詰め込まれている。「ソニックの世界観をいかにこのコンセプトに落とし込むか」を重視し、等身大フィギュアの胸部に、DNAを埋め込んだカオスエメラルドを、まるでソニックの心臓であるかのように配置。それを親指で指し示すポージングには、DNAの継承のごとく、「誰からも自由であり、悩んでいる暇があれば走る。そんなメッセージを永遠に繋げていきたい」。そんな星野氏の思いが投影されている。
なお、ソニックといえば青というのが定番だが、今回のフィギュアが鏡面加工で仕上げられているのは、DNAの保管器をイメージしているから。カオスエメラルドの中に埋め込まれているDNAは、琥珀結晶化され、常温下でも数百年単位で保管可能な状態で提供されているが、それをさらに最上級の保管器をイメージした鏡面加工のボディに格納されているのが今回のフィギュアとなっている。「合理性もあるし、美しさもある」と絶賛する星野氏だが、あくまでもソニックのイメージは青ということで、「SEGA STORE TOKYO」での展示では、台座を青にするなど、映り込みによってフィギュアが青に染まる仕組みを採用。店内の青い照明もあいまって、さらなる美しさが引き出されている点も注目ポイントとなっている。
フィギュアの制作中、「我々はデジタルクリエイターなので、修正って比較的簡単なんですよ。だから同じような感覚で、『もう少しエッジが立ったほうがいいですね』って、本当に気軽に言ったら、担当の方のゴールデンウィークが吹っ飛んだと後から聞いて……こういったフィジカルなものは本当に大変なんだなって」と苦笑いの星野氏だが、「造形のときも、映像を撮るときも、常に一番前にいるのが星野さんだった」と、星野氏の今回のプロジェクトにおける姿勢を振り返る浪岡氏と青木氏。「監修される方って、後ろに座ってディスプレイを見ているという方が多いのですが、星野さんは常に最前にいる。つまり、星野さんが見ているものを我々が見ているという構図だったので、我々としては、星野さんが見ているソニックに、自分たちのソニックをいかに近づけられるかという意識が強かった」とのことで、「最終的に星野さんからOKをいただいたときは、完成した嬉しさや喜びはもちろんですが、我々の脳では計算しきれなかった星野さんの見ていた風景に近づけたという感動、何か言語化できない感慨が大きかった」と、あらためて今回のプロジェクトについて振り返った。
「最終的に、トランシーズさんと価値観を共有できたことによって、アイデア、造形も含めて、ソニックの世界観を落とし込み、高いレベルでまとめることができました」と「SONIC THE HEDGEHOG DNA FIGURE」の仕上がりに高い満足感を示す星野氏。「一言でDNAフィギュアと言っても、なかなか理解していただけないと思いますが、実際にフィジカルのものができあがっていますので、ぜひ『SEGA STORE TOKYO』に来ていただいて、ぜひご自身の目で見て、感じてください。わからないところがあっても、それも含めて、ワイワイと楽しんでいただけたら、このプロジェクトは成功だと思います」と笑みを浮かべ、「ソニックの35周年プロジェクトはまだまだ続きますので、今後の展開も楽しみにしていてください」と締めくくった。





