北村匠海が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』(毎週月曜21:00~ ※FOD・TVerで見逃し配信)の第10話が、15日に放送された。

本作は、海辺の町で教師になるという“なんとなく”の動機で、とある田舎町の水産高校に赴任してきた新米教師が、同じく“なんとなく”日々をやり過ごしてきた生徒たちと出会い、高校自慢の「サバ缶」を宇宙食にするという夢に向かっていく、実話をもとにした青春学園ドラマ。

サバ缶を完成させるための最後の課題、そして“夢を受け継ぐ”ことの意味――終盤に差しかかった本作は、連続ドラマとして積み重ねてきた時間の厚みを生かしながら、静かに大きな問いを投げかけてきた。

  • 北村匠海=『サバ缶、宇宙へ行く』第10話より (C)フジテレビ

    北村匠海=『サバ缶、宇宙へ行く』第10話より (C)フジテレビ

「過去の研究をたどれば解決できるのではないか?」という疑問

ここまで9話を見続けてきて、一つ疑問に思っていたことがあった。それは、1期生から4期生へと受け継がれてきた10年以上にわたる壮大な「宇宙食サバ缶プロジェクト」での試行錯誤は、過去の研究をたどれば解決できるのではないか?ということだ。

どうすれば味を落とさずにいられるのか。どうすれば柔らかさを維持できるのか。どうすれば粘度を保てるのか。長年積み上げられてきた先輩たちの足跡“黒ノート”をひも解けば、答えはすでにそこにあるのではないか。そんな疑問を抱いた視聴者も少なくなかったはずだ。

第10話は、まさにこの疑問そのものを物語の中心に据えてきた。認証まであと一歩と迫った5期生たち。そこでは、“先輩たちの夢を受け継ぐもの”と考える生徒と、“これは私たち自身の夢だ”と考える生徒との間に、微妙なすれ違いが生まれていた。

確かにそうだ。せっかく自分の夢を見つけたと思っても、10年以上にわたる先輩たちの足跡を目の前にすれば、それを手放しに“自分たちだけの夢”だと言い切ることは難しい。積み重ねられてきた歴史があるからこそ、その重圧ものしかかってくる。けれど同時に、人は自分自身の夢だと思えなければ、本気にはなれないし、何より楽しくない。

その繊細な感情の機微を、第10話という終盤になって描いたことこそ、今作の“らしさ”だったように思う。いや、正確に言えば、第1話から積み重ねてきた時間があったからこそやっと描けたテーマだったと言うべきだろう。連続ドラマでしか描けない時間の厚みが、そこには確かにあった。

そして興味深かったのは、その答えが“どちらか一方”ではなかったことだ。朝野(北村)は、1期生の頃から続く“アマモ”の植栽を例に挙げる。海をきれいにするという取り組みは、一人の力で成し遂げられるものではない。誰かが植え、次の世代が引き継ぎ、少しずつ海はきれいになっていく――。夢もまた同じだ。先輩たちの夢であり、同時に自分たちの夢でもある。夢は一気にかなうものではなく、世代を超えて少しずつ形になっていく。そのことを、“アマモ”という象徴を通して説いてみせた朝野の言葉は、このドラマらしい優しさに満ちていた。

  • (C)フジテレビ

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物語はまだ終わらない…目的は“サバ缶を宇宙へ飛ばす”

さらに興味深かったのは、最後の課題である“サバの身をどう柔らかくするか?”という問題の解決法だ。これまでの試行錯誤が“何かを加える”方向だったのに対し、今回はサバを“神経締め”するという、まったく別の発想から突破口を見いだした。前回大きな壁となった保存検査における“おいしさ”についても、「うまみ成分」を数値化して検証する描写がさりげなく盛り込まれており、最後の最後にスッキリと解き明かされたトリックのようで楽しかった。

何より、その発想のきっかけが、これまで常に物語をにぎやかに彩ってきた田所(八嶋智人)の何気ない“プロレス談義”だったことも実に今作らしかった。真面目に夢を追い続ける物語の中にある“バカバカしさ”が、この作品の緩衝材として機能していたのだと改めて感じさせられた。

そして第10話、ついに完成したサバ缶は宇宙日本食として認証された。あの瞬間は、ここまで見続けてきた視聴者にとって間違いなく大きなクライマックスだった。最終回に置いてもおかしくないほどの感動が、じわじわと押し寄せてきた。

しかし、このドラマはまだ終わらない。そうなのだ。この物語の目的は、“宇宙食のサバ缶を完成させること”ではない。“サバ缶を宇宙へ飛ばすこと”なのだ。そのことを改めて思い出させてくれたラストであった。

ここまで画としては地味にも思えるサバ缶づくりの工程を、丁寧に、愚直なまでに描いてきた今作。その夢の終着点にあるのは、広大な宇宙という圧倒的なロマンである。

いよいよ次回が最終回。ここまで多くの世代と長い時間をかけて描いてきた“夢の大河ドラマ”を、どのように締めくくるのか。そして、その終着点である宇宙をどんな形で描くのか。楽しみだ。

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