第52回放送文化基金賞が9日に発表され、NHKのドラマ『ひらやすみ』に出演した岡山天音と森七菜が演技賞に選ばれた。『ひらやすみ』はドラマ部門最優秀賞となった。

  • (左から)岡山天音、森七菜

    (左から)岡山天音、森七菜

岡山天音の“ナチュラルさ”に評価

岡山は『ひらやすみ』で、生田ヒロトを演じた。生田ヒロトは、29歳のフリーター。定職なし、恋人なし、将来への不安も一切ない自由人で、人柄のよさから、仲良くなった近所のおばあちゃん・和田はなえから一戸建ての平屋を譲り受ける。

選考理由では、岡山について「俳優・岡山天音の持つ魅力のすべてが生田ヒロトという人物として結実したかのようなナチュラルさがあった」と評価。「どこまでも優しく、他者を思いやることのできる人物」を自然かつ内省的に表現した点が高く評価された。

また、これまで屈折した陰のある役や、野心的で情熱に満ちた役などを演じてきた岡山が、今作では「人の辛さや痛みを知っているからこそ、生きることを慈しむ大切さを自覚する品性のある力強い人物」を体現したと評されている。

森七菜、不器用な美大生の成長を繊細に表現

同じく『ひらやすみ』から演技賞を受賞した森は、不器用な十代の美大生を演じた。

選考理由では、森について「ヒロ兄や大学の友達との関係性の変化を繊細に、かつ爽快に演じて視聴者を魅了した」と評価。最初は自意識過剰で不機嫌な一面をコミカルに見せながら、次第に友人と打ち解け、自信を持てるようになっていく変化を丁寧に演じ切ったことが称えられた。

さらに、視線、表情、体の動き、態度などを大きく使いながらも過剰にならず、自然に見せる演技力にも言及。ヒロ兄との関係性を阿吽の呼吸で築いた点についても、相手を信頼し、その場で何かを生み出す瞬発力があったと評価されている。

毎田暖乃、ラジオドラマで“声の表情”見せる

演技賞はほかにも、NHK大津放送局のFMシアター『大きな湖の小さな島で』で毎田暖乃が受賞。選考理由では「俳優の大きな力となるべき動きやたたずまいや表情が、ラジオでは見えない」とし、その分、声の高低や抑揚、間合い、気配などによって「声の表情」が求められると説明。その上で、毎田の演技が「さらに大きな可能性を示した」と評価された。

毎田が演じたのは、友達とのコミュニケーションに困難を抱えた小学5年生の少女・理沙。離島通学を通して成長していく少女の怖れ、とまどい、喜び、不安、そして回復への兆しを、声だけで表現した。

放送文化基金賞は、過去1年間に放送・配信された番組・コンテンツや、放送文化、放送技術の分野で顕著な業績をあげた個人・グループに贈られる賞。今回は全国の民放、NHK、動画配信会社などから317件の応募・推薦があり、約2カ月にわたる審査を経て受賞が決定した。贈賞式は、7月8日に開催される。

第52回放送文化基金賞 受賞一覧

ドキュメンタリー部門

最優秀賞
NHK
『NHKスペシャル ドキュメント 医療限界社会 追いつめられた病院で』

優秀賞
鹿児島テレビ放送
『警察官の告白―鹿児島県警情報漏洩事件を問う―』

奨励賞
名古屋テレビ放送
『メ~テレドキュメント 風はどこから ~進む軍産回帰~』

テムジン、NHK、NHKエデュケーショナル
『NHKBSスペシャル 戦後80年 僕の日本人助産師を探して』

NHK
『NHKスペシャル 臨界世界 戦慄の占領地 “ロシア化”の実態』

ドラマ部門

最優秀賞
NHKエンタープライズ、NHK
『夜ドラ ひらやすみ』

優秀賞
WOWOW
『連続ドラマW 夜の道標 -ある容疑者を巡る記録-』

奨励賞
テレビ東京
『ドラマプレミア23 シナントロープ』

NHK、WOWOW
『戦後80年ドラマ 八月の声を運ぶ男』

エンターテインメント部門

最優秀賞
CBCテレビ
『ハートフルワールド 京都・紙屋川砂防ダム編』

優秀賞
フジテレビジョン
『AI実験バラエティ シンギュラ』

奨励賞
NHK
『100カメ 羽田空港 空飛ぶ翼を守るプロたち』

RKB毎日放送
『ハカタの王様 しんどい通学路選手権 勝手に九州大会編』

ラジオ部門

最優秀賞
NHK
『特集番組 沖縄戦後80年 父はアメリカ兵だった』

優秀賞
NHK大津放送局
『FMシアター 大きな湖の小さな島で』

奨励賞
KBS京都ラジオ
『岸野雄一の~民謡でヨイショ!~』

個人賞

演技賞
岡山天音
『夜ドラ ひらやすみ』

森七菜
『夜ドラ ひらやすみ』

毎田暖乃
『FMシアター 大きな湖の小さな島で』

脚本賞
此元和津也
『ドラマプレミア23 シナントロープ』

取材・制作賞
下野賢志
『ハートフルワールド 京都・紙屋川砂防ダム編』

企画・制作賞
房満満
『NHKBSスペシャル 戦後80年 僕の日本人助産師を探して』

木村和穂
『NHKスペシャル 臨界世界 戦慄の占領地 “ロシア化”の実態』

放送文化部門

西村匡史(TBSテレビ)
17年にわたる「死刑」当事者の肉声記録と番組の制作

「郷土劇場」制作チーム(沖縄テレビ放送)
“ウチナー芝居”といわれる郷土芸能文化を65年間にわたって継承してきた功績

アイヌ差別取材班(北海道放送)
10年にわたるアイヌ民族への差別・ヘイト問題の放送活動と行政を動かした実績

NHK「ディープオーシャン」シリーズ制作チーム
長年にわたり深海シリーズを制作し世界へ国際展開した実績

放送技術部門

伊藤正史(フジテレビジョン)
ISDB方式の現行テレビ放送を対象としたアドレッサブルTV技術とその偽情報対策技術の開発

シーラカンス8K撮影チーム(NHK)
世界初「シーラカンス8K撮影」および潜水艇撮影システムの開発

手話CG研究開発チーム(NHK、NHK財団)
手話CG制作システムの研究開発および実用化

1万人の第九EXPO2025 技術チーム(毎日放送)
1万人の第九EXPO2025

特別賞

チームコウセイラジオ
ラジオ番組『コウセイラジオ~break through the wall~』制作グループ

少年院・刑務所経験者や支援者が犯罪と立ち直りについて語る番組の企画・制作