そして話題は、自身の家族へと及んだ。
「私も一度は美容室を継ごうと思って勉強したんです。でもその時は、自分が本当にやりたいことのほうが勝ってしまった」
美容師である父の背中を見て育ち、高校卒業後は美容学校へ進学。しかし、芸能界への思いを捨てきれず、途中で退学した。
「高校卒業の時点で進路が決まっていなかったのが私だけだったんですよ。芸能界に入りたいという夢はあったんですけど、とりあえず手に職をつけた方がいいって、家族にも言われていて。一旦、美容学校に行かせてもらったんですけど、やっぱり本当にやりたいことが違うとキツいなと思ってしまって…」
家業を継ぐ道は選ばなかった。しかし今は、その選択を後悔していないという。
「もちろん今思えば、美容学校は卒業しておいた方が良かったかなと思うこともあります。でも今こうして『ザ・ノンフィクション』のナレーションをやらせていただいていることが、私の中では本当にすごいことなんです」
実家では家族そろって毎週欠かさず番組を見ていた。
「まさか自分がナレーションを担当できるなんて思っていませんでした。だから結果的に、家業を継がなくても良かったのかなって思えているんです。もちろん、家業を継がなかった私も、何かしらの形で家族に恩返ししたいという気持ちはずっとあります」
そんな野呂だからこそ、家族の支えを描いた今回の物語に強く感情移入したという。
「一番心に残ったのは、やっぱり支える側の家族ですね」
そう語る野呂自身も、現在は夫と支え合いながら多忙な日々を送っている。
「うちも共働きですし、夫に支えてもらっている部分も大きいんです。実家も商売をしていましたし、お父さんが困難なことに直面した時に、お母さんが一生懸命支えている姿も見てきました。だから商売人の家族の話というのは、すごく共感できるところがあるんです」
常連客が集う「大人の社交場」に感じた懐かしさ
野呂は、母方の祖父母も喫茶店を営んでいた。
「その喫茶店が本当に大好きだったんです。レンガ造りの素敵なお店だったんですけど、私が高校生の頃に立ち退きで閉店してしまって…」
店内は決して広くなかった。2人掛けのテーブルが2つとカウンターだけ。しかし、そこには野呂にとって忘れられない景色があった。
「おじいちゃんが作るメロンソーダが大好きでした。今思えばシロップをソーダで割っていただけなんですけど(笑)、なぜかすごくおいしく感じて。トーストも本当においしかったんです」
祖父が厨房に立ち、祖母が接客を担当する。母や伯母も交代で店を手伝っていた。
「おじいちゃんが病気になった時も、家族みんなでローテーションを組んで毎日お見舞いに行っていました。だから今回のご家族を見ていても、『いい家族だな』と思いながら見ていたんです」
そんな幼少期の記憶は、今回の屋台ラーメンの物語と重なった。屋台には常連客が集い、ラーメンを食べながら他愛のない話を交わす。ある客は、屋台を「大人の社交場」と表現していた。ドラマでスナックのママを演じている野呂だが、その空気感はどこか懐かしいものだったという。
「私も小さい頃からお店を手伝っていたので、大人たちのくだらない話を聞いて育ったんです。競馬で負けた話とか、お店のテレビでお相撲を見ながら、みんなで盛り上がったり…。そういう人が集まる場所の空気感みたいなものは、なんとなく体に染み付いていますね」
だからこそ、店主である貴雄さんの人柄にも魅力を感じた。
「人が好きじゃないと接客業って楽しくできないと思うんです。貴雄さんは本当に表情も豊かで、お話も面白いし、人懐っこい。でも、軽口を叩いているようで、余計なことは一切言っていない。だからみんなが集まってくるんだろうなと思いました」
そして、その姿からは、屋台の先代の面影も…。
「生前、お孫さんと一緒に屋台に立っていた時の先代の笑顔が本当に素敵で…。きっと、先代もそこにいるだけでみんなが安心できるような方だったんだろうなって。そう思うと、この家族の今につながっているものが全部見えてくる気がするんです」
思わず笑顔を見せながら、こう付け加えた。
「あと、ラーメンが本当においしそうで(笑)。ナレーションしながら食べたくて仕方なかったです」
