第39期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦が大詰め。6月4日(木)には1組決勝の伊藤匠二冠―永瀬拓矢九段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、得意の角換わり腰掛け銀を用いて右玉攻略に成功した永瀬九段が137手で勝利。混戦の終盤を制して1組優勝を果たしました。
最先端の右玉戦
ともに本戦進出は決めており、どちらが組優勝を勝ち取るかという一戦。1組優勝者はあと1勝で挑戦者決定戦進出が決まるいわゆる「スーパーシード」の地位が与えられるだけに大きな一番です。振り駒が行われた対局は先手の永瀬九段が角換わり腰掛け銀に誘導、後手の伊藤二冠が右玉で受けて立つ構図は3年前の本棋戦挑戦者決定戦第3局と同じ戦型です。
右玉は力戦調になりがちな戦法ながら、豊富な研究量を誇る両者とあって早いペースで指し手が進みます。対局開始から約30分、60手を過ぎても依然として前例のある進行で、このあと伊藤二冠が桂跳ねの新手を出してようやく二人の戦いが始まりました。持ち時間でリードする伊藤二冠は軽快な端攻めに転じて主導権を獲得、やがて終盤戦へと突入します。
攻め疲れに乗じ永瀬九段逆転
黙っていても受けきれないと見た先手が攻め合いを求めた局面、ここで伊藤二冠が大長考に沈みます。夕食休憩をはさんで3時間以上の考慮のすえ指された拠点への香打ちは、先手玉をいちど右辺に追い出すだけにややひねった印象。決め手はないと見て長期戦の押し引きに勝機を求めた格好ですが、守勢だった永瀬九段としては息を吹き返すことに成功しました。
手番を握った永瀬九段は一気の寄せを披露します。8筋への香打ちで飛車取りとしたのが「玉飛接近すべからず」の格言通り右玉の急所を突いた決め手に。終局時刻は21時28分、最後は先手玉に詰みなしと認めた伊藤二冠が投了。伊藤二冠としては香打ちの1手前に銀捨ての絶妙手で先手の攻めを遅らせる手があっただけに悔やまれる敗戦となりました。
勝った永瀬九段は1組で自身3度目となる優勝を果たしています。
水留啓(将棋情報局)
