第74期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、伊藤匠王座への挑戦権を争う挑戦者決定トーナメントが進行中。6月1日(月)には1回戦の羽生善治九段―糸谷哲郎九段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、相雁木の力戦形からリードを奪った羽生九段が108手で勝利。快勝といえる内容で2回戦に進出しています。

ホットなカード

藤井聡太名人との名人戦七番勝負を戦い終えた糸谷九段と、棋聖戦・王位戦で挑戦者決定戦まで進んだ羽生九段といういまホットな二人の対戦。振り駒が行われた本局は先手となった糸谷九段が角道を止めて雁木の戦型を提示します。対して後手の羽生九段も同様に雁木で対抗、相雁木に進み糸谷九段が右四間飛車に構えたのを見て右玉に変化する趣向を披露します。早くも定跡形を外れました。

駒組みが一段落した局面は糸谷九段にとって考えがいのある局面。右桂を跳ねて攻撃を準備したのは後手に主導権を握らせまいという姿勢の表れですが、この日は羽生九段の積極的な指し回しがその一枚上を行きました。4筋と8筋に連続で歩を垂らしたのが敵陣を乱す手筋で、それぞれ「大駒は近づけて受けよ」「金はナナメに誘え」の格言に従っています。

中盤で勝負ありの一局

羽生九段の手筋を駆使した軽快な手順が止まりません。先手の銀を呼びこんでおいてからサッと守りの金をかわしたのが中盤の決め手。攻めの要と思われた先手の右銀を空振りさせることに成功し、右玉らしい「かわし」のさばきが完成しました。糸谷九段としては右辺に注力していた飛車角銀の3枚が働きのない駒になっているのが響きます。

中盤で差がついてからは一方的な展開となりました。終局時刻は17時44分、最後は逆転の見込みなしと認めた糸谷九段が投了。終局図で糸谷玉は一手一手の寄り形で、一方の羽生玉は2枚の銀が守備力を発揮して有効な王手が続かない形でした。勝った羽生九段は2回戦に進出して王座挑戦まであと3勝。次戦では近藤誠也八段と顔を合わせます。

水留啓(将棋情報局)

  • 羽生九段は今年度10勝2敗と絶好調をキープ(未放映のテレビ対局除く)(写真は第67期王位戦挑戦者決定戦のもの 撮影:編集部)

    羽生九段は今年度10勝2敗と絶好調をキープ(未放映のテレビ対局除く)(写真は第67期王位戦挑戦者決定戦のもの 撮影:編集部)