伊藤園お~いお茶杯第67期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は、挑戦者決定戦の伊藤匠二冠―羽生善治九段戦が5月28日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり相早繰り銀の終盤戦で抜け出した伊藤二冠が90手で勝利。二転三転の終盤を制して藤井聡太王位への挑戦権を獲得しています。
羽生九段主導の序中盤
ともに4勝1敗で組優勝を果たした二人(伊藤二冠は同星で並ぶ3人のプレーオフを制しての登場)。振り駒が行われた本局は先手となった羽生九段が角換わり早繰り銀を採用、それを見た伊藤二冠も早繰り銀を選択しました。両者の間で4月に行われた棋聖戦決勝トーナメントの対局では羽生九段が先手番腰掛け銀を持って快勝していましたが、羽生九段の方から変化した格好です。
主流となっている6筋の歩突きは入れずにシンプルに仕掛けたのがこの日の羽生九段の決断。わずかな形の違いで早い段階から定跡を抜けた読み合いへと突入します。攻防の要に思われた角を切り飛ばして飛車の成り込みを急いだのが伊藤二冠も軽視した猛攻で、わずかに羽生九段がリードを奪います。とはいえ伊藤二冠も馬を作って先手玉に肉薄、迫力ある終盤戦が始まりました。
攻守一転の歩頭角
終盤は伊藤二冠の勝負手から幕を開けます。馬を見捨てて飛車の大さばきを狙ったのが終盤特有の速度感覚で、端に逃げ込んだ先手玉に先に詰めろをかけることに成功。この直後、羽生九段からの王手に対し桂の合駒で応じた手が重要な伏線となりました。伊藤二冠の攻めがひと息ついたところで羽生九段も反撃開始。伊藤玉への迫り方が悩ましい最終盤の局面、一分将棋になるまで考えて竜を引きますがこの手が敗着に。
再度手番を握った伊藤二冠の目が光ります。持ち駒の角を相手の歩の眼前、タダのところに打ちつけたのが観戦者驚がくの王手。取ると羽生玉に即詰みの筋が生じるため、取れないのを見越しています。続いてこの角を平然と敵竜の利きに押し売りしたのが爽快な継続手でした。角を犠牲に一手を稼いで、先述の合駒に使った桂が羽生玉を追い詰める攻め駒として跳ね出す猶予が生まれます。羽生玉はあっという間に一手一手の寄り形に。
終局時刻は19時35分、最後は自玉の受けなしを認めた羽生九段が投了。先手ペースの終盤と思われた局面から一閃の勝負手で攻守を逆転させた伊藤二冠の鋭さが光る熱戦となりました。チャンスを逃した格好の羽生九段ですが、難解な終盤について「ちょっと苦しいんじゃないかと思い自信はなかった」と振り返っています。藤井王位との間で争われる七番勝負は7月4日(土)・5日(日)に静岡県浜松市の「浜松八幡宮楠倶楽部」で開幕します。
水留啓(将棋情報局)
