• 生成AIの入力画面(左から「脳内大喜利」「空想ものまねショー」)

2020年にフジテレビへ入社した飛田氏は、最初の2年間は人事部に配属。その後、希望だったバラエティ制作に異動し、『人志松本の酒のツマミになる話』などを経て、深夜番組『深夜のハチミツ』でディレクターに。現在は『新しいカギ』や特番を担当しながら、『シンギュラ』に取り組んでいる。

こうした番組で出会った人たちが、『シンギュラ』の実現を支えてくれたという。「脳内大喜利」では、出演者が使いやすいように極めてシンプルなUIを技術スタッフと作り、プロンプトを打ってボタンを押せば数秒で画像が出る仕組みができた。「今こうやって一人でインタビューを受けているのも申し訳ないぐらい、本当に皆さんの力があったからできました」と謙虚に語る。

今後の展望として、レギュラー化への強い思いを抱く飛田氏。「AIの強みは“学習”できるところです。継続すればするほど番組としてのデータや知見が途切れずに蓄積されて、AIがこの番組に合わせて進化する姿が見えてくると思うんです」と力説する。

第1弾からわずか数カ月の間に、AI自体の性能も大きく進化。特に感じたのは、画像生成のクオリティとスピードの向上だ。前回は、背景が「なんとなくグレーがかった東京っぽい街並み」だったものが、今回は「どう見ても原宿でしかない」ような具体性を持つように。絵の細部の精度も上がり、生成スピードも向上し、「前よりも面白いことを返してくれそうな予感がしました」という。レギュラーでその過程を見せることも、番組の面白さにつながる。

また今回、“大喜利巧者”ではないメンバーからも爆笑回答が出たことから、芸人にとどまらない幅広いジャンルにもキャスティングの門戸が広がる可能性が見えてきた。

AIに関する知見のある制作スタッフ、協力してくれる技術・美術スタッフをチームに持ち、“AI”というフックがあれば大喜利だけではない間口の広いパッケージが可能であることを強みに、「どんな企画でもAIを通して新しく魅せられるので、とにかくいろいろやらせてもらえたらうれしいです」と、社内でアピールしているそうだ。

フジテレビっ子が抱く危機感「無視できない問題」

こうしてまずは『シンギュラ』という番組を育てて実績を作っていくことに注力する考え。その上で、他の番組にもノウハウを横展開することで、フジテレビ全体の制作力向上につながる将来像も視野に入れている。

『人志松本のすべらない話』『IPPONグランプリ』『はねるのトびら』『クイズ!ヘキサゴンII』『VS嵐』など、「リモコンの8チャンネルのボタンが擦り切れるくらい」フジテレビの番組が大好きで、就活の際もテレビ局はフジしか受けずに入社したという飛田氏。

そんな彼が、「今、“フジテレビで好きな番組はなんですか?”と聞かれたら少し悩んでしまうんです。他局ですと『水曜日のダウンタウン』(TBS)とか『アメトーーク!』(テレビ朝日)など挙げられるのですが。こんなにフジテレビっ子な自分がそうなってしまうのは無視できない問題だと思っています」と危機感を抱いている。

同期の面々には、『ここにタイトルを入力』『有吉の脱法TV』など、入社2年目から話題の番組を送り出してきた原田和実氏らも。「自分たちの世代から、この状況を何とか変えていきたいです」と力強く語ってくれた。

●飛田将斗
1998年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学でデータサイエンス・人工知能の勉学に励み、卒業後、20年にフジテレビジョン入社。人事局に配属後、バラエティ制作に異動し、『人志松本の酒のツマミになる話』などを担当。『深夜のハチミツ』でディレクターデビューし、現在は『新しいカギ』を担当する。26年1月に『AI実験バラエティ シンギュラ』で初めての企画・演出を担当。番組制作部門のスタジオ戦略本部を横断した次世代プロジェクト「WALTZ」のメンバーとして特番『だったらコレもエモくない?』の演出も務めた。