今春ドラマが終盤を迎える中、強烈な設定と中毒性の高いキャラクターで隠れた人気作となっているのが『余命3ヶ月のサレ夫』(テレビ朝日系、金曜23時15分)。「余命3ヶ月」の宣告を受けた上に、妻の不倫や遺産総取り計画を知り、復讐に突き進む主人公の奮闘が描かれている。

その悲しき主人公を演じているのが白洲迅。現在33歳の正統派イケメンだが、このところ過酷な設定を背負わされる悲劇の俳優としての評価が高い。なかでも最大の無茶振りと思われるほどの難役だったのが4年前の主演ドラマ『個人差あります』(東海テレビ・フジテレビ系、FODで配信中)。

同作はどんな物語で白洲はどんな役柄を演じたのか。さらに近年どんな役柄を演じて評価を高めてきたのか。ドラマ解説者・木村隆志が掘り下げていく。

  • 『個人差あります』(C)日暮キノコ・講談社 (C)東海テレビ/共同テレビ

    『個人差あります』(C)日暮キノコ・講談社 (C)東海テレビ/共同テレビ

2人で1役を演じる「異性化」

『個人差あります』は白洲に加え夏菜、新川優愛のトリプル主演作。突然性別が変わる「異性化」で女性になる夫・磯森晶を白洲と夏菜が2人1役として演じ、新川は妻・苑子が演じた。

“異性化”はもちろん架空の設定であり、これを通して夫婦や恋愛のあり方を描くファンタジー作。会社員の晶と小説家の苑子はどこか冷めた夫婦生活を送っていたが、身体的な性別が変わる異性化によって生活が一変する。

化粧、ブラジャー、男性への意識、セクハラなど初めてのことばかりで戸惑う晶と、男性が消えた夫を変わらず愛せるか悩む苑子。さらに晶の先輩・雪平直道(馬場徹)、女性の気持ちが分かる上司・澤俊之(大浦龍宇一)、晶が通うドラッグストアの店員・横山真尋(紺野彩夏)を交えて、物語は序盤から意外な方向に二転三転して目が離せない。

一見、「もし性別が変わったら……」というティーン向けの軽い設定を思わせるが、扱うテーマはド真ん中の直球。結婚、パートナー、異性への理解、心が通じ合うことなどを考えさせられるシーンが続き、男性は白洲と夏菜、女性は新川の目線で感情移入できる大人向けの作品であり、ひいては多様化の時代に合う作品と言っていいだろう。

10年代から視聴率低迷に苦しむ各局のドラマ班はわかりやすさを優先させ、ファンタジーの大半が「タイムリープ」「入れ替わり」「ゴースト(乗り移り)」で占められるようになった。しかし、その3つは昭和時代からの定番設定であり、さんざんやり尽くしてきたもの。新たなトライを避ける消極的な制作姿勢が続いていただけに『個人差あります』の「異性化」が際立って見える。

ただ思い切った設定だからこそ“終わらせ方”が難しいものだが、当作はいい意味で予想を裏切るラストが待っていた。未視聴の人は「そっち?」「裏をかかれた」と思わされる結末に驚かされるだろう。

土曜23時40分からの深夜帯で放送されたが、フジで言えば「月9や月10あたりでもっと多くの人々に見てほしかった」と思わせるクオリティがあった。