この番組のコンセプトの一つは、古いものをAIというフィルターを通して新しく見せること。第2弾は「大喜利」「ものまね」という歴史あるテレビコンテンツを“リブート(再生)”させるが、採用されなかった企画案も数多くある。

権利面の処理が困難で断念した、楽器ができない芸人が作曲する企画をはじめ、日本語化や言語化が得意でない人が小説を書く企画、料理未経験の人がプロ並みのレシピを作れる企画、さらにはAIを使った恋愛リアリティショーも。

こうした企画案や大喜利のお題案をAIに求めてみたというが、「どれも面白くないんです」ときっぱり。人間が作ったストックをAIに読み込ませて案を出させても、最終的に選ぶのは人間が作った元の案だったという。番組内のBGMや「空想ものまねショー」のステージ背景など、様々な部分にもAIが使われているが、「AIに全部頼るのは違う。“融合”こそがAIを使う上での真価だと思っているので、二人三脚という感じですね」と改めて感じたそうだ。

番組タイトルの『シンギュラ』は、AIの知能が人間の知能を超える技術的特異点「シンギュラリティ」に由来するが、命名の狙いは、その言葉のイメージとは真逆にある。

飛田氏が大学生の頃は、シンギュラリティが「2045年に来る」と言われていたが、今では「今年、来年にも来るのでは」と予測されるほどAIの進化は速い。それでも、「これは人間の能力がAIをはるかに超える瞬間を見られる番組なので、真逆のタイトルになっているのは、遊び心です」と明かした。

  • 「空想ものまねショー」(C)フジテレビ

    「空想ものまねショー」(C)フジテレビ

人間ドラマを見抜き、言語化するMC若林

それぞれの企画を見守るMCの若林正恭は「どっぷりAIに浸かっている方」だという。移動中の車内でも、家に帰ってもAIと会話しているといい、「誰よりも会話している相手がAI」といえるほどAIを使い込んでいることから、この番組の企画構造を理解してもらうのに適任と考えてオファーした。

その上で、若林は物事の内側で起きている人間ドラマを見抜き、それを言語化する力に長けている。制作側が「これ面白いけど、どこがどうなって面白いんだろう」と言語化できていない事象を、若林が言葉にしてくれることで、「それで自分たちは笑っていたんだ」と気づくこともあるそうだ。

さらに、飛田氏の個人的な思い入れも。小学5年生のとき、近所の学園祭で初めて見た芸能人が、『M-1グランプリ』決勝に進出する1カ月前のオードリーだった。「自分にとって初めて企画が成立した番組なので、初めて見た憧れの芸能人である若林さんにぜひオファーしたいと思っていました」と念願がかなったブッキングとなっている。