2番目に注目されたのは20時39分で、注目度70.6%。喜多川歌麿が蔦重に不信感を募らせるシーンだ。

吉原では歌麿の浮世絵を活用した再建策が練られ、本人のいないところで商談がまとまっていた。歌麿の「看板娘」は大きな話題を呼んだ。しかし、それは結果的に物価の異常な高騰を招き、幕府から浮世絵に女郎以外の女の名を書き入れてはならないという通達が出ることとなった。

しかし、女郎絵ならば名を入れて出せると考えた蔦重は、その場で仕事を引き受ける。吉原の復興を実現するためにも、蔦重はなんとしても歌麿を説得しなければならない。「待ってよ。俺、まだやるとも何とも言ってねえんだけど!」自分の預り知らないところで話が進んでいたことを知った歌麿は、露骨に不満をあらわにした。

さらに、蔦重が耕書堂の抱える吉原への借金100両を歌麿の女郎絵50枚で返すという内々の事情も明かしたため、歌麿は「それ、借金のカタに俺を売ったってこと?」と冷たい視線を浴びせる。蔦重は必死に弁解するが、歌麿の怒りは収まらない。「頼む! ガキも生まれんだ!」蔦重は思わず言ってしまった。「…へ?」想定外の一言に、歌麿はあっけにとられた。「色々出すには出したが、大きく跳ねたのは『十躰』と『看板娘』だけだ。正直なとこ、新たな売れ筋が欲しい。頼む! お前だけが頼りなんだ! 身重のおていさんに苦労かけたくねえんだ! 頼む! 頼むよ」蔦重はひたすら平伏している。

しばしの沈黙のあと、歌麿は「仕方中橋。やってやるよ」投げやりな口調で了承した。「恩に着る。恩に着るぜ義兄弟」涙目で歌麿にすがる蔦重をよそに、歌麿は密かにある決意を固めていた。

  • (C)NHK

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「全部事後報告かよ」「タイミング最悪だよ」

このシーンは、蔦重と歌麿のすれ違いに視聴者の関心が集まったと考えられる。

大ヒットした『看板娘』を幕府にとがめられた蔦重は、次の一手として女郎の大首絵をそろいで出すことを思いついた。しかし吉原の景気も依然悪く、入銀は望めない。それでも義父・駿河屋市右衛門(高橋克実)の助け舟によって、歌麿の絵と引き換えに借金を棒引きにするということで話がまとまる。ていの懐妊もあり、苦しい経済状況から抜け出したい蔦重は、歌麿に相談なく独断でこれを承服。歌麿の気持ちを全く考えていない。後から歌麿の承諾を得た蔦重だったが、身勝手な依頼の代償は大きなものになりそうだ。

SNSでは「子供のことも、絵のことも、全部事後報告かよ。今まで仲を取り持ってくれてたおっかさんはもういないのに…」「ここでおていさんの懐妊をカミングアウトするのはタイミング最悪だよ」「私の脳内で鶴屋さんが『そういうところですよ!』って叫んでいる」「絵師としてのプライドとか歌の都合も考えずに事後承諾で次から次に仕事を持ってくるとか、三行半を突き付けられても仕方ないな」と、身勝手な蔦重に批判が集まった。

今回、大ヒットした婦人相学十躰は喜多川歌麿が1792(寛政4)年頃に制作した美人画の揃物。女性の表情や仕草を通じて性格や気質を表現するという、人相学の視点を取り入れた画期的なシリーズで、当初は10点構成だったが、出版統制の影響で8点で終了したとされている。この作品は美人画に初めて大首絵や雲母摺を導入した点で高く評価された。シリーズ中の1つ『浮気之相』は、現在は東京国立博物館が所蔵しており、かつ重要文化財に指定されている。美人画としてだけでなく、相学を取り入れたことで、当時の町人文化・女性観・遊びの感覚を巧みに反映していたと考えられている。

シリーズの題名は途中で『婦女人相十品』に改題されたが、これは相学関係者からの抗議によるもので、最終的には出版が中止されるという経緯をたどった。もう1つのヒット作・寛政三美人は、江戸時代の美人画の頂点とされる傑作。芸者の富本豊ひな(門脇遥香)、難波屋おきた(椿)、高島屋おひさ(汐見まとい)の3人を描いている。当時の美人番付として大きな人気を集めた。

豊ひなを演じる門脇遥香は、プロダクション尾木に所属する神奈川県出身の21歳。大河ドラマは『べらぼう』が初出演だ。舞台やテレビで活躍の場を広げつつある新進気鋭の女優で、今後の出演作にも期待が高まっている。