テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、8日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第22話「小生、酒上不埒にて」の視聴分析をまとめた。

  • 『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第22話より (C)NHK

    『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第22話より (C)NHK

大いに盛り上がる宴

最も注目されたのは20時38~40分で、注目度75.0%。恋川春町(岡山天音)が捨て身の宴会芸を披露するシーンだ。

耕書堂では蔦重(横浜流星)が戯作者や絵師、職人たちを集めて忘年会が開かれていた。絵師たちの席では、恋川春町の新作『廓ばかむら(※竹冠に愚)費字尽』が話題となっていた。北尾政演(古川雄大)は自分が描きたかったとこぼしている。春町は朋誠堂喜三二(尾美としのり)に背中を押され席に加わり、うた麿大明神の会で政演を盗人呼ばわりしたことを謝罪するが、当の政演は蔦重が言ったとおり覚えていなかった。驚く春町は政演の隣に腰を下ろし、2人は酒を酌み交わした。宴も進み、蔦重は亡き平賀源内(安田顕)の言葉を思い出していると、「さあさ、皆様ご注目!」と、次郎兵衛(中村蒼)が三味線を鳴らしながら声を上げた。

すると2階から、さらしとふんどしを巻き、肩から着物を羽織った春町が三味線の音とともに階段を下りてくる。明らかにいつもの春町ではない。「これよりお目にかけまするは、一世を風靡せしかの名高きへっぴり芸!」次郎兵衛の口上が終わると同時に春町は着物を投げ捨てる。「皆様にはせめて、年のしまいにお笑いいただきたく! いよぉー!」と、春町は声を張り上げ屁をこいた。

皆は一瞬あっけに取られたが、その場はすぐに笑いの渦に包まれた。次郎兵衛の三味線に合わせながら扇子と筆を手に屁を連発する春町は、屁が出なくなれば「プ。プ。」と屁を真似てつぶやきながら踊りを続けた。そんな春町につられて皆も立ち上がり、宴は大いに盛り上がった。

踊りつかれた春町は倒れながら狂歌を詠み、「狂名、酒上不埒!」と叫ぶ。蔦重はそんな春町を心底うれしそうに見守っていた。

  • 『べらぼう』第22話の毎分注視データ推移

めんどくさい春町に視聴者のコメント相次ぐ

注目された理由は、真面目な春町のぶっ飛んだ芸に視聴者の視線が「くぎづけ」になったと考えられる。

前回、政演を盗人となじった春町は、心の内では政演には絵師として技量では敵わないと感じていた。そんな心の内を知った喜三二と歌麿の励ましもあって、春町は立ち直ることができた。

そして春町の新作『廓ばかむら費字尽』は、吉原通の政演がうらやましがるほどの仕上がりとなる。自信を取り戻した春町は政演とも向き合い、さらにはへっぴり芸を披露することで蔦重一派の面々に溶け込むことができた。SNSでは、「春町先生のエピソード、大河ドラマで何やってんだって感じがたまらなく面白い」「春町先生のあの不貞腐れ方、悔しがり方、ひねくれ方すべてが愛おしい」「春町先生、ツンデレで情緒不安定な彼女みたいで好きすぎる」と、めんどくさい春町に視聴者のコメントが集まった。

当時の江戸で大流行した狂歌だが、古典的な和歌の形式(五・七・五・七・七)を踏まえながら、何げない日常、社会風刺、人間関係などを題材に、洒落や皮肉、滑稽さを盛り込んだもの。従来の風雅な和歌とは異なり、俗語や流行語を積極的に取り入れ、機知に富んだ言葉遊びや、既存の和歌をなぞらえて詠む本歌取りを多用するのが特徴だった。狂歌は江戸時代以前、鎌倉・室町時代には存在していたが本格的に発展し、大流行したのは江戸時代中期以降。特に天明年間(1781年~89年)に江戸で「天明狂歌」と呼ばれる一大ムーブメントが起こり社会現象にまでなった。この時期には、武士、町人、歌舞伎役者、遊女など、さまざまな階層の人々が狂歌に熱中した。

恋川春町を演じる岡山天音はユマニテに所属する東京都出身の30歳。大河ドラマは『べらぼう』が初出演だ。特技は絵を描くことで、趣味はダンス。洋服のリメイクや家の改造など、クリエイティブな一面も持っている。絵に関しては10代の頃からの親交のある、菅田将暉の楽曲「美しい生き物」のジャケットイラストを手掛けたことでも知られている。春町にぴったりなキャスティングだ。