2番目に注目されたのは20時27分で、注目度72.9%。蔦重が鱗形屋で偽板作りの証拠を探すシーンだ。
須原屋市兵衛(里見浩太朗)から大坂の版元・柏原屋が出版した『増補早引節用集』の偽板が江戸に出回っていると知らされた蔦重には、偽板を作っている「丸屋源六」なる人物に心当たりがあった。外ならぬ鱗形屋孫兵衛である。
鱗形屋は1772(明和9)年に起きた「明和の大火」で蔵が焼け、本を作るための板木、摺り出し、紙や墨、糸など、道具の大半を失っていた。さらに店や蔵の建て替えまでおこなって、摺り損じを紙屑買いにも出さず、自前の厠紙にするほどの深刻な資金難に陥っていたのである。蔦重は鱗形屋では夜中にこそこそと何かを摺っており、その摺り損じもたくさんあったことを思い返すと、偽版作りの犯人は間違いなく孫兵衛だと疑惑を深めた。
翌朝、蔦重はその疑惑を確信に変えるため、証拠を探しに鱗形屋を訪れた。腹痛を装い、厠へ駆け込み厠紙を調べると、すぐに「丸屋源六」と記された1枚を見つけ出した。「やっちまってたか…」蔦重は複雑な思いでその1枚を懐に収めた。
「人に接するときの態度は大事だね」
このシーンは、鱗形屋が怪しいとにらんだ蔦重がどのように立ち回るかに、視聴者の関心が集まったと考えられる。
須原屋から偽板が出回っているという話を聞いた蔦重は、孫兵衛が犯人ではないかと目星をつけた。孫兵衛が、『一目千本』や『雛形若菜初模様』のような元手がかからない入銀物の発行を求めていたこと。孫兵衛の次男・万次郎(野林万稔)が、父から物之本が地本より儲かると言い聞かせられていたこと。番頭・藤八(徳井優)が、摺り損じを厠紙にしていたことなど、思い返せば怪しい伏線がテンコ盛りだが、これらを見逃さなかった蔦重はやはり優れた洞察力を持っているようだ。
SNSでは、「鱗形屋さんが『青本作りは運命だ』って言ってた時の蔦重は本当に嬉しそうだったのに…」「もし、鱗形屋が蔦重を大事にしていたら、平蔵が言っていたように蔦重は忠告していたんだろうなぁ。人に接するときの態度は大事だね」「前回クズに見えた鱗の旦那が意外といいヤツと思ったらやっぱり狡猾で。結局人は善悪両面持ってるんだな」と、蔦重と孫兵衛の人間関係に言及するコメントが多く寄せられた。
鱗形屋の2人の息子である鱗形屋長兵衛(三浦りょう太 ※りょう=けものへんに寮のうかんむりなし)と鱗形屋万次郎が今回、初登場を果たしたが、史実では名前までは明らかになっていない。万次郎は西村屋に婿養子として入り西村屋の2代目となる。その後、父の出版物の版権を苦労しつつも買い戻した。
鱗形屋長兵衛を演じる三浦りょう太は、トップコート所属で東京都出身の27歳。大河ドラマは『べらぼう』が初出演。父はキングカズこと、元サッカー日本代表の三浦知良、母はタレントだけでなくファッションモデルの三浦りさ子、弟はプロ格闘家の三浦孝太。なんとも華々しい家柄だ。
鱗形屋万次郎を演じる野林万稔はオスカープロモーション所属で東京都出身の11歳で、『べらぼう』がドラマ初出演。これからの活躍に期待だ。片岡愛之助は大河ドラマでは不遇な役回りが多いが、『べらぼう』は今回で退場となってしまうのだろうか。今後の展開に注目だ。