テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、9日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第6話「鱗剥がれた『節用集』」の視聴者分析をまとめた。

  • 『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』主人公・蔦屋重三郎役の横浜流星 (C)NHK

    『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』主人公・蔦屋重三郎役の横浜流星 (C)NHK

「うまくやるってなぁ…堪えるもんっすね」

最も注目されたのは20時41~42分で、注目度78.1%。蔦重(横浜流星)と長谷川平蔵宣以(中村隼人)がサシで語り合うシーンだ。

「うまくやるってなぁ…堪えるもんっすね」誰もいなくなった鱗形屋の軒先で、蔦重は複雑な胸の内を平蔵に明かした。鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)が大坂の本屋・柏原屋(川畑泰史)の偽板を作っていたことが露見し、孫兵衛は捕縛されてしまったのだ。偽板には小島松平家も関与していたが、発覚を恐れた家老が勘定奉行・松本秀持(吉沢悠)に賄賂を渡してとかげのしっぽ切りをはかったため、孫兵衛はすべての罪を着せられる格好となった。

蔦重は独自に調べ、孫兵衛の悪事を確信していたが止めることはしなかった。鱗形屋がいなくなれば、自分が後釜に座れると心のどこかで思っていたからだ。「願ったり叶ったりじゃねえか」平蔵の言葉に、性根がまっすぐな蔦重は抵抗を感じている。

そんな蔦重に平蔵は武家社会の陰湿な出世争いを例に出し、出し抜くこと、追い抜くことは気にすることではないと諭した。そして、「濡れ手に粟餅」と名付けた餅を蔦重に渡し、ありがたく頂いておけと言い残して去っていった。蔦重は平蔵の言葉を胸に「鱗の旦那! 濡れ手に粟餅、ありがたく頂きやす!」と、餅を思い切り頬張った。

  • 『べらぼう』第6話の毎分注視データ

運を天にまかせることにした蔦重

注目された理由は、偽版騒動の落着に視聴者の注目が集まったと考えられる。

蔦重は鱗形屋が「丸屋源六」である証拠を握ったが、鱗形屋をいさめることも、役人へ訴え出ることもせず、運を天にまかせることにした。鱗形屋が西村屋与八(西村まさ彦)と自分を都合よく利用しようと共謀する会話を聞き、一度は須原屋市兵衛を通じて役人へ訴え出ようとしたが思いとどまった。蔦重の江戸っ子としての矜持が告げ口という行為をよしとしなかったのだろう。

SNSでは、「蔦重はこれからも成功を手にしながらも、色々な後ろめたさや罪悪感を背負っていくんだろうな」「常に『なんでですかねぇ』と考えることが蔦重のアイディアの源なんだな」「後ろ暗いところがなければ、鱗形屋と蔦重うまくいっていたのにざんねんだな」「蔦重と平蔵くんが仲良しなの最高! ずっと仲良くしてほしい!」と、蔦重の複雑な胸中に共感するコメントが多く集まった。

青本のアイデア出しで大いに盛り上がっていた蔦重と孫兵衛は、出版に対する情熱を通して意気投合しているように見えたが、このような結果となってしまい残念。また、「明和の大火」がなければ、2人の関係も違っていたかも知れない。

今回2人が制作を進めていた青本というのは、草双紙の一種で主に婦女子の間で流行した。表紙が萌黄色であることから青本と呼ばれた。浄瑠璃や歌舞伎の概要を絵入りで解説し、子どもでも楽しめるように配慮されていたが大人たちには不評だったようだ。再登場したカモ平こと長谷川平蔵宣以だが、今までのコメディリリーフではなく、有能な幕府の役人として手柄を上げた。

SNSでも多くの反応があり、「今回の平蔵、かっこよかった!濡れ手に粟餅のシーンでは中村吉右衛門さんの鬼平を連想しました」「われらが平蔵ちゃん、なんかキリっとしてる」「仕事中はステキだったのに、最後の今いいこと言ったなって顔してるの笑える」と、カモ平のファンは増加傾向にあるようだ。今回にしても50両の入銀の件にしても、間接的に蔦重はカモ平にものすごく助けられている。

平蔵の現在の役職である御書院番士は、1605(慶長10)年に設立された徳川将軍直轄のいわば親衛隊。小姓組と並んで御両番と呼ばれていた。本人は性に合わないとぼやいていたが、幕府の軍事部門の職制であり、番士には幕府内での出世への道筋が開かれるという、まさにエリートコースだった。