大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で、俳優の横浜流星が主人公・蔦屋重三郎を明るくパワフルに演じている。作品として目指す主人公像、そして横浜の演技について、第4回、第6回、第7回の演出を手掛けた深川貴志氏に聞いた。

  • 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』主人公・蔦屋重三郎役の横浜流星

江戸時代中期の吉原を舞台に、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く本作。脚本は、『おんな城主 直虎』(17)以来、8年ぶり2度目の大河ドラマとなる森下佳子氏が手掛ける。

大河ドラマで江戸中期を描くのは今回が初めて。戦国時代や幕末を手掛けた経験はある深川氏にとっても初めての挑戦で、「新しい世界に飛び込んだ感じ」「ワクワクするような時代」だと語る。

「江戸中期は、幕府だと儀礼がしっかりしています。町民文化が花咲いて、街の人たちが生き生きと暮らしている。その裏側では、武士の人たちの給料が上がらないという、今の世の中とのつながりもあります。テレビやYouTube、SNSが楽しみな我々と本や浮世絵が楽しみだったという町民たちの気持ちも今の世とつながります。すごくワクワクするような気持ちをドラマの中でどう表現するかというのにいつも苦心しています」

そして、演出陣の共通認識として、「主人公がスーパーマンではない」ということが大きな軸となっていると明かす。

「何でも解決できる特殊能力がある人ではなく、何も持っていない普通の人が主人公で、吉原で生まれて、吉原の苦しいところを背負って、よくしていこうというのが根底にあるというのが、演出陣が共通認識として持っているところです。そんな中で平蔵さん(中村隼人)に50両を払わせるという、清濁併せ呑む場面もあり、主人公らしからぬ行動かもしれませんが、彼の正義としては正しい。困難にもぶち当たるし、困った時に誰かにすがりついたり、助けてもらうことも多いでしょうし、そういった人間くささを大切にしています」

また、これまでの大河ドラマと比べて「一番いろんな人に会っている人」であり、それができるバイタリティのある人物だと捉えている。

「戦国だと会う人間は限られているかもしれません。吉原は1万人ほどが暮らしていたと言われ、蔦重はその人たちと毎日会うし、市中の人たちとも会い、ひょんなことから田沼様と会ったり、ものすごい人数と会っている。これだけの人と会ってやっていけるバイタリティについては横浜さんとも話していて、自分からどんどん仕掛けていくエネルギッシュな人に周りのみんなも期待するし、そういう部分は大切にしたいですねと。これまでの主人公との違いを、横浜さんが演じることで、見えるのかなと思っています」