政界を追い出された星野茉莉(黒木華)が、市井に生きる政治素人のスナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)をスカウトし、東京都知事選に挑む姿を描く、カンテレ・フジテレビ系ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜22:00~ ※FOD・TVerなどで見逃し配信)の第5話が、18日に放送された。

今回は、この物語の背景に隠された名作へのオマージュ、ギリシア悲劇や、『ワンピース』、『七人の侍』について考えたい。

  • (左から)野呂佳代、野呂佳代 (C)カンテレ

    (左から)野呂佳代、野呂佳代 (C)カンテレ

【第5話あらすじ】蛍の加入で“アベンジャーズ”結成

選挙を知り尽くす元幹事長秘書・五十嵐(岩谷健司)が参謀に加わり、勢いづく「チームあかり」。そんな折、流星(松下洸平)のもとに民政党幹事長の鷹臣(坂東彌十郎)が自ら出向き、出馬を打診したと報じられた。これにより、党公認の最有力と目される流星に注目が集まり、出馬を期待する声が高まる。

数日後、いよいよ都知事選の日程が決定。その発表に合わせるかのように、流星が正式に出馬を表明した。流星は有権者の心をつかみ支持を拡大、さらには連立与党の推薦も取り付け、着々と票の上積みを図る。

そこで五十嵐が提案したのは、民政党への宣戦布告ともいえる奇策だった。茉莉とあかりは、作戦に欠かせない元西多摩市長の雲井蛍(シシド・カフカ)を仲間に迎えるべく、さっそく説得に向かう。

「ぶっ飛ばす!」が口癖だった蛍は今や、ベーカリーで平凡な幸せの中、生活していた。かつて蛍は、政治家として絶大な人気を誇っていたが、市長から引きずり降ろされた過去がある。その背後には、やはり幹事長・鷹臣の影が。

蛍の背後には五十嵐がついていたが、鷹臣の鶴の一声で、五十嵐は渋々、直前で身を引かされる。そして破れた。幹事長・鷹臣との汚い手法に──。乗り気のしない蛍に、あかりは最後、一言こう言った。「ぶっ飛ばせ蛍が大好きだった。こういう人が(世の)理不尽をふっ飛ばしてくれるんだって」と。

今の生活を守りたい蛍。だが、これを蛍の子供が見ていた。蛍の子は、台風の中、飛び出す。そして「ぶっ飛ばせ!」と天候に向かって手を突き上げる。これを見て蛍は決心する。幹事長・鷹臣にリベンジすることを。「ぶっ飛ばす」ことを。そして、茉莉の仲間になるのであった。

  • (左から)坂東彌十郎、松下洸平 (C)カンテレ

    (左から)坂東彌十郎、松下洸平 (C)カンテレ

「悪のノウハウ」は鷹臣に通用するか

流星が出馬した現状では、あかりの勝率はほぼゼロだ。鷹臣の作戦上での実質的な票の数字はもちろん、流星には物語がある。流星の幼少期、父のDVによって母は家を出た。不幸のどん底で、流星はまだ若き鷹臣の選挙演説に出くわす。そこで幼い流星は叫ぶ。「助けて」と。

鷹臣は流星を自身の家に住まわせたばかりか、流星の父を更生させた。流星にとって、鷹臣はどう恩を返そうとしても返しきれないほどの救世主だったのだ。その鷹臣が流星を推薦した。一時は出馬を断っていた流星だが、恩人の頼みとあって出馬表明した。…そういうシナリオだ。

現実世界でも、選挙は実質、人気投票になっていると揶揄(やゆ)される。実力、政策実行力、政治家としての力よりも、そういった"物語"に人は弱い。だがそれも仕方がないことだ。政治に関わっていない民衆にとって、その人物が、真に政治家の器であるかどうかなど、分からない。マニフェストを実行できるだけの力や背景があるかどうかなんて、見極められない。

伏魔殿と呼ばれる永田町で長く政治に関わってきた幹事長・鷹臣は、そのこともよく知っている。そして本作では、これをデフォルメして、鷹臣を「民衆を愚かだと考え、勝つためにはどんな汚いことでもやる悪徳政治家」という役割を与えている。つまり、茉莉とあかりにとってのラスボスは、鷹臣だ。この図式を、第5話ではより明確に描いた。

ここで面白いのが、その鷹臣に立ち向かう茉莉が、元「悪徳政治家」側だったこと。鷹臣の娘であり、小さい頃から父の背中を見て、秘書としてその手腕、やり口を見てきた。手も染めてきた。つまり、茉莉にも「目的のためには、どんな手を使ってでも勝つ」という「悪のノウハウ」がある。「悪 vs 悪」という図式が浮かび上がってきたのだ。