2番目に注目されたのは20時34分で、注目度82.8%。道長の嫡妻・源倫子(黒木華)と妾妻・源明子(瀧内公美)の戦いのシーンだ。

女院・藤原詮子の40歳を祝う「四十の賀」が左大臣・藤原道長(柄本佑)の主催で華やかに行われた。「今日の童舞は、道長の北の方の長男・田鶴君(三浦綺羅)と高松殿の長男・巌君(渡邉斗翔)が舞うそうだ」情報通の藤原斉信(はんにゃ・金田哲)は、本日の式次第の内容をしたり顔で同僚の四納言たちに披露する。「道長らしくないな」と、藤原公任(町田啓太さ)がつぶやくと、源俊賢(本田大輔)は「帝のご所望だと妹・明子が申しておりました」と答える。

壇上では、赤い衣装に身を包んだ田鶴が構える。「見事なものだな」倫子の隣に座する道長は、田鶴の舞を称賛した。夫のわが子に対する賛辞に倫子はご満悦である。

雅楽が鳴り響く中、続いて巌君の舞が始まると場の雰囲気が一変した。巌君の舞は、その場にいるものすべてを魅了しているのだ。巌君の凛々しい姿を眺めるもうひとりの妻・明子の表情は、不敵ともいえるほど自信に満ちあふれている。この状況を想定していたのだ。巌君の舞に魅了されたものの中には、一条天皇もいた。一条天皇は年若い巌君の舞を食い入るように見つめている。一条天皇は、ふと自分に向けられた視線を感じた。隣の母を見ると目が合った。「見事なものであったな」堅物で知られる藤原実資(ロバート・秋山竜二)ですら、巌君の舞に賛辞の言葉を惜しまなかった。

明子が倫子へ送った視線には、勝者の余裕がにじんでいる。倫子はそれには気づかないふりをして、やわらかい視線を返した。微笑み合う2人の妻だが、水面下では激しくぶつかり合っている。一条天皇は藤原顕光(宮川一朗太)を呼び、顕光はお上の意を受け取ると、「お上よりただいま仰せがございました。巌君の舞の師に従五位下の位を授ける」と、みなに声高らかに告げた。道長と倫子は驚き、明子の方を見た。巌君の師は、思いがけず与えられた名誉と官位に、ひたすらに恐れ入っている。ある種の異様な光景に田鶴が泣き出し、倫子がなぐさめるが、道長は「田鶴、女院様のめでたき場であるぞ。泣くのはやめよ」強くいさめた。そして、一条天皇と詮子の方を向き、「せっかくの興に水を差してしまいました。お許しあれ」と一言詫びた。

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バチバチの争いを表情としぐさだけで表現する2人に称賛の声

このシーンは、道長の2人の妻の激しい戦いに、視聴者の注目が集まったと考えられる。

2人の妻の父はともに左大臣を務めた実力者だったが、明子の父である源高明は、「安和の変」で事実上の罪人とされ、明子が道長と結婚したときにはすでに亡くなっていたため、明子は常に倫子の下風に立たされていた。高貴な血筋に生まれた明子にとっては大変な屈辱であったことだろう。

無言でバチバチに繰り広げられる争いを、表情やしぐさだけで表現する2人の演技に、ネット上では「息子が舞う姿に火花を散らす倫子さんに明子さん」「倫子様と明子様の無言の闘い怖い」「緊張感が半端ない」といった称賛の声が多くあがり、大いに盛り上がった。たいまつの火がバチバチと音を立てる演出も印象に残った。

のちに藤原頼通となる田鶴は、史上最年少で摂政となった後、関白を務め、10円玉で有名な平等院鳳凰堂を建立した。のちの藤原頼宗となる巌君は、官職こそ右大臣どまりで頼通には及ばないが、歌人として目覚ましく活躍する。頼通はこの日の屈辱を忘れず、頼宗の出世を阻んだのかもしれない。

田鶴を演じる三浦綺羅は、サンミュージックブレーンに所属する神奈川県出身の11歳。2023年の大河ドラマ『どうする家康』での織田信長の少年時代に続き2度目の出演となり、ドラマ・映画・CMなど幅広いジャンルで活躍している超売れっ子だ。巌君を演じる渡邉斗翔は、クラージュキッズに所属する11歳で、すでに多数のドラマに出演しているこちらも超売れっ子。2022年の秋ドラマ『新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~』では、織田信長の幼少期を演じており、三浦と渡邉は現世でもライバルのよう。ここでも縁を感じる。