3番目に注目されたシーンは20時11分で、注目度82.7%。まひろが、夫・藤原宣孝、娘・賢子と3人で過ごした最後の夜のシーンだ。

満月の夜、まひろは邸で1人たたずんで、左大臣・藤原道長を深く恨む清少納言のことを考えていた。そこへ「いかがいたした?」と、宣孝の快活な声が月夜に響く。まひろは宣孝の突然の来訪を、背筋を正して迎えた。「為時殿は越前守を再度求めておったが、こたびの除目でそれはかなわなかった」と宣孝が除目の結果を話すと、まひろは「宋人を帰国させられなかったゆえでございますか?」と尋ねた。「宋人は我々とは違う考えを持っております。表の顔と裏の顔があり扱いは難しゅうございました。父も精いっぱいやっておりましたけれど…」2人は向かい合って座ると、まひろは自身の越前での経験も踏まえて意見を述べた。

「案ずることはない。次の官職が決まるまで為時殿はわしが面倒を見るゆえ、好きな学問をしながらのんびりと越前の疲れを癒やしていただこう」と、またしても職を失った父を不安に思ったまひろを、宣孝は力強くはげました。「わしにとっても義父上であるゆえ。ハハハハ!」と、宣孝はいつものように豪快に笑う。「頼もしい婿様にございます。昔のように貧しくなれば、従者や下女にいとまを出さねばならないところでした」と弱気なまひろに、「そのようにしおらしい顔をするな。わしはお前に惚れ切っておるゆえ、どこにも行かぬ」と、宣孝は断言すると、まひろにようやく笑顔が戻った。

2人が笑い合っていると、目を覚ました賢子が無邪気に走ってきた。「何だまだ起きておったのか」と、元気な娘の姿を見て宣孝はうれしそうだ。そして「賢子父と月を見よう。なっ」と、にこやかに賢子を縁側に連れ出した。「よし、ここに座ろう。ああ月がきれいじゃのう…」家族3人並んで座り、満月を見上げると、「ハハハハ。この明るさでは賢子も目がさめてしまうわな。フフフ」と宣孝は豪放磊落(らいらく)に笑った。

だが、親子3人がともに過ごした穏やかで幸せな時間は、この夜が最後となった。翌朝、国司を務める山城国府に出かけた宣孝は、それきり戻ってこなかった。

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“退場前の伏線”として警戒される

ここは、前々回からフラグが立ち続けている宣孝に、いよいよ死が近づいていると察した視聴者の視線が集まったのではないか。

序盤から登場し、中盤では大いに存在感を発揮した宣孝だが、1001年に没する事実は多くの視聴者が知るところであり、近くXデーが来ることは覚悟していた。『光る君へ』では、重要な登場キャラクターがあっさりと退場するパターンが多いため、このシーンは退場前の伏線として警戒され、注目度は非常に高かったと考えられる。

SNSでは、「まひろと宣孝様の夫婦愛良かった」「色々あったけど夫婦の危機を乗り越えられたのは宣孝様のおおらかで包み込む愛があったから」「夫婦生活で一番幸せなときが…」「不実と言いながら誠実な夫婦だな」といった、紆余曲折を経て穏やかな関係を築いた2人を微笑ましく思うコメントが多くアップされた。今回の冒頭での変顔を含めて、実の子ではない賢子を心の底から愛でる宣孝の姿は、たくさんの視聴者の目に焼きついたのではないか。