JR大阪駅を経由する列車のうち、特急「はるか」「くろしお」とおおさか東線の列車が使用する大阪駅(うめきたエリア)。地下ホームの供用開始から数カ月が経ち、少しずつ日常になじみつつある。先日、特急「はるか」で新ホームに初めて降り立った。

  • 大阪駅(うめきたエリア)へ向かう特急「はるか」(筆者撮影)

JR西日本のプレスリリースを見ると、3月18日から大阪駅(うめきたエリア)の地下ホームを供用開始することにより、大阪駅の拠点性がさらに高まると記されている。実際にその様子を確認してみようと考え、飛行機で関西国際空港へ向かった。

筆者はかつて首都圏に在住していたが、大阪に行く際、新幹線以外の交通機関を利用したことがなかった。関西国際空港の利用も、もちろん初めてである。鉄道における玄関口となる関西空港駅は、中国・香港・韓国などから来たと思われる旅行客で混雑していた。中国や香港では、6月22日から「端午節」と呼ばれる連休があったため、それも影響していたかもしれない。

乗車券と特急券を購入し、関西空港駅16時44分発の「はるか40号」に乗車する。筆者が確保した席は3号車の指定席。自由席は満員の様子で、3号車もほぼ満席だった。到着時間だけを考えれば、1本前の「はるか38号」(関西空港駅16時14分発)にも乗車できたが、「みどりの窓口」で確認したところ、指定席は満席で、グリーン車のみ空いている状況だった。ホームに降りてみると、「自由席は満席で座れません」というアナウンスが流れていたため、乗車を断念した。

16時38分、「はるか40号」が入線してきた。281系6両編成で、人気キャラクターのラッピングを施した「ハローキティはるか」の姿となって久しい。271系の増結も期待したが、現在、9両編成での運転は朝の2往復のみ。ほとんどの列車が6両編成で運転されている。

  • 特急「はるか」の車両281系。現在はラッピングされ、「ハローキティはるか」として活躍中(筆者撮影)

  • 車内にもハローキティの装飾が施されている(報道公開にて編集部撮影)

「はるか40号」は定刻通りに関西空港駅を発車。列車は快調に加速し、110km/h前後で全長3,750mの空港連絡橋を走る。一度減速し、日根野駅から阪和線へ。カーブとポイントを越えると再びギアを上げ、特急列車らしいスピードで走行した。阪和線沿線では早苗が植っており、古墳をはじめ史跡が多い。歴史の深い地域を進み、大阪市に入ると、「あべのハルカス」が少しずつ近づいてくる。17時18分、天王寺駅に到着した。

天王寺駅からは大阪環状線に入る。周りの景色は一変し、都会的な景観の中を行く。西九条駅を通過すると梅田貨物線に入線。福島駅が近づくと、列車は大阪環状線の本線から離れ、降下し始めた。府道41号線と交差する踏切を渡り、下り勾配を走って地下へ。17時31分、大阪駅(うめきたエリア)の24番のりばに到着した。

大阪駅(うめきたエリア)の地下ホームは色の統一感があり、洗練された印象を利用者に与える。21番のりばに「フルスクリーンホームドア」が設置され、次に到着する列車の号車案内など、多くの情報を液晶パネルに映し出していた。改札口は2カ所あり、ホームから上がってすぐの地下1階にうめきた地下口、連絡通路を歩いた先の地上1階に西口を設置した。西口方面に向かうと、11番のりばを除くすべての地上ホームへ、階段やエスカレーターで乗り換えられるようになっている。

  • 大阪駅(うめきたエリア)の地下ホーム(編集部撮影)

  • 大阪駅(うめきたエリア)の改札口(うめきた地下口)。自動改札機の隣に顔認証改札機を設置した(編集部撮影)

筆者は地下ホームから階段を上がり、うめきた地下口へ歩く。自動改札機の隣に顔認証を使用した改札機もあったが、利用している人は少ない印象だった。地上に向かうエスカレーターに乗ると、大阪駅(うめきたエリア)で合流したと思われるスーツ姿の人たちが、「新大阪で待ち合わせのほうがわかりやすかったなあ」と話している。大阪駅を利用する人たちも、地上ホームから離れた地下ホームの利用方法について、日常に溶け込みつつも慣れていない状況なのだろうと感じた。

後日、大阪環状線の福島駅付近にある踏切で、多くの列車が踏切を通過する様子を観察できた。旅客列車だけでなく貨物列車も行き交い、ここが梅田貨物線であることを再認識させられる。鉄道ファンにとって、地下の新ホームを通過する貨物列車を見られるところも、大阪駅(うめきたエリア)の魅力のひとつといえるだろう。

  • 283系「オーシャンアロー」車両の特急「くろしお」(筆者撮影)

  • おおさか東線の列車も大阪駅(うめきたエリア)を使用する。写真は試運転車両(筆者撮影)

数日後、各所での取材等を終え、再び大阪駅(うめきたエリア)から関西空港駅へ向かった。この日は大阪駅の御堂筋北口からうめきた地下口まで歩き、どれくらい時間がかかるか計測してみた。

まずは「ルクア大阪」1階の連絡通路を歩き、中央口方面へ。エスカレーターを降り、「グランフロント大阪」に向けて進む。案内表示を見て歩くと、迷う心配はほとんどない。梅田エリアの地質も影響してか、地下街には少し起伏がある。うめきた地下口に着いたところでストップウォッチを止め、確認すると4分39秒だった。

もっと時間がかかるのではないかと予想していたが、大阪駅を日常的に利用するわけではない筆者でも5分以内で到達できた。大阪駅(うめきたエリア)が地元の日常に浸透するまでもう少し時間がかかるかもしれないが、JR西日本が語る「拠点性」の片鱗を感じることはできたと思う。うめきたエリアと中央口など他の出口への往来でショッピングエリアを通るため、経済的メリットも大きいだろう。

その後、フルスクリーンホームドアを設置した21番のりばから「はるか31号」に乗車した。6両編成の列車が停車すると、ホームドアがLCDごと開いた。往路と比べて車内は混雑しておらず、かなり空いている。14時3分に大阪駅(うめきたエリア)を発車し、定刻通り14時50分に関西空港駅に到着。関西国際空港の搭乗口へと向かった。

  • フルスクリーンホームドアを設置した21番のりばに停車する特急「はるか」(編集部撮影)

  • 特急「はるか」が大阪駅(うめきたエリア)の地下部分を抜け、大阪環状線へ(筆者撮影)

大阪駅(うめきたエリア)の地下ホームは初めて利用したが、当初の想像よりも利用しやすく、快適なホームだった。乗換えに関してはコツが必要かもしれないが、一度慣れてしまえば便利な存在になるだろう。ただ、大阪駅(うめきたエリア)を使用する列車の性格上、このホームを初めて利用する人はつねに多いと思われ、位置関係の把握が苦手な人にとって混乱を招きやすいリスクもある。案内表示を含め、さらなる工夫が期待できそうだと感じた。今後の動きにも注目していきたい。